複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【んーと、いろいろ受付中?w】 ( No.134 )
日時: 2013/04/09 14:26
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 引き受けるとは言っても、内容を理解しているわけではない。私立高校の警備員の注意を引くっつったって、どうすりゃいいんだか分からない。

 俺の問いに、理人は一瞬放心したようだが、すぐに俺の言葉を理解してくれたらしく、笑いながら答えてくれた。

「はははっ、そうだよな、ごめんごめん。説明するよ」

 理人は空悟越しに俺を見据えながらこれまた饒舌に話してくれた。

「言葉で言うのは簡単なんだよ。一番いいのは、プールの更衣室に警備員を近づけないことだね。僕がよくやる手としては、わざと少し離れたところで大きな音を立ててみたり、だね。まぁ、頭殴って気絶させてもいいんだけど。で、最悪な場合はその警備員が更衣室に来てしまうことだ。そのときはもう好きにやってもらって構わないから。あぁ、顔は見られないように気をつけてね」

 あぁ、一応顔は隠すんだ。

 というか・・・何と言うかアバウトなんだな。好きにやってもらって構わない、って大丈夫なのかそんなんで。

 まぁ何とかなるか。とか思ってしまう辺り、俺もかなり適当だな。前からだけど。

「もっと条件をつけるとすると、自然にプールから遠ざけてもらえると嬉しいんだ」

「何で?」

「今まで僕らはほとんど警備員に見つかった事は無いんだ。そんなことになったらいろいろ面倒だろ?翌日先生たちが騒ぎ出してしまうからね」

 だから少し離れたところで大きな音を立てるのか。風とかのせいにすれば変に捜索されないだろうし。

 そうなるとちょっと難しいな・・・俺は頭脳戦ではなく直接対決!って感じだからな。まぁ、仕方ないか。

「じゃあ、大丈夫そうだね。他に聞きたいことがある人はいる?」

 理人の問いかけに答える人は誰もいなくて、互いに目を合わせるだけだった。

「んじゃ解散ってことで。僕は宿題やんなきゃいけないから部屋行くね」

 今度こそ俺らも解散になって、んじゃ後でな、と空悟も席を外していった。

 さて、どうするかなと息を吐きながら椅子に背を預けた。

「那羅ちゃん、起きてください」

 目の前では社井が自分の膝で寝る璃月を起こしている光景が広がっていた。さっきも言ったことだが、本当にこれが1歳差だとは思えない。

 璃月はどうやら寝ていたらしく、小さく「ん・・・」と唸る声がした。仮にも高校生なのに全く色気を感じないのは何でだろう。

 椅子に座りなおした璃月は社井に直面していて、まだ眠いのか目を擦っている。どこからどう見ても社井の年の離れた妹にしか見えない。

「新しい本を買ったんです、お部屋に行きませんか?」

 笑顔で話しかけた社井に反応する行動は見せない。声は届いているのか?

 数秒経ってから、璃月はその小さい手を前に伸ばし社井の袖を少しつまんだ。

「だっこ・・・」

 ほら!どう見ても高校1年生には見えないだろっ!!と、俺は透明人間に意見の同意を促してみるが、いかに挙動不審なのかは把握しているのでとりあえず何も思っていないフリをする。

 璃月の雨に社井はすぐに対応して、椅子から立ち上がるとひょいと璃月を抱えて見せた。社井の細く白い腕にも担げるほどだ。かなり軽いのだろう。抱えられた璃月はすぐに社井の首に腕を絡める。

 そのことに体勢に居心地の悪さを感じたらしい社井は少し彼女の体制を動かして、抱っこ、というよりお姫様抱っこの体勢を取った。確かに俺の経験からしても抱っこよりお姫様抱っこのほうが楽だと思う。

 そのときやっと璃月の目が冴えたらしく、璃月は頬を赤らめながらめちゃくちゃ近くにある社井の耳に何かを話していた。首を傾げて聞いていた社井は、璃月の言葉を聞くと驚いたような表情を見せたあと、嬉しがっているように見えた。

 何だろう?と考えていると、社井の目と目が合った。

「那羅ちゃんが、矢吹くんにお礼を言いたいそうです」

「え?」

 突然の言葉に俺もつい声を漏らす。お礼、って何の?

 と思って璃月を見ると、璃月は一層顔を赤くして社井に絡み付いていた。・・・暑くないんだろうか。

「ほら、那羅ちゃん、早く」

「むー・・・」

 何で言ってくれないの、とか言いそうな顔で社井を睨んだあと、目を伏せ、ちらちらと俺を見ながら璃月はか細く声を出した。

「こないだの、ごほん・・・おもしろかった・・・・。・・・・・・・・あり、がとう」

 ・・・あぁ。

 俺はこの間、社井に頼まれて璃月の本を買ってきたことがあった。

 あの時は梨緒がいなくなってたから適当に選んでしまったんだけど、璃月には気に入ってもらえたようだ。

 たったそれだけを伝えるためにこんなに頑張ってくれるなんて、社井がつい甘くなるのも分かる気がする。だからと言って俺は社井のようにはならないけど。

「別に大したことじゃねぇし。気に入ってもらえたんだったらよかったよ」

 むしろここ数日話しかけてこなかった奴にやっと話しかけてもらってそっちのほうが嬉しい。

 返事に満足したのか満面な笑みを社井に向けて足をばたつかせている璃月に社井は「暴れない暴れない」と落とさないように頑張っている。
「では、失礼しますね」

 と一応ここは家の中なんだが、と言いたくなるようなほど丁寧にお礼をした社井は璃月を抱えたまま自室がある2階へと上がっていった。

 あー・・・やることねぇな・・・。

 相変わらず梨緒はコップの中の氷を見つめていた。さっきより大分小さくなったようだ。

 ここにいても仕方ない。とりあえず着替えようかな・・・これ結構堅苦しいし。

 そう思い、立ち上がるとやっと梨緒が顔をあげた。

 俺の目を捉えると首を傾げる。どこ行くの、という意味だろうけど、誰かこいつに言葉というものを教えてやってくれ。

「着替えてくるけど」

 意図を察して答えてしまうのはやっぱり甘いからかな・・・とか思ってしまう。

 すると、梨緒も立ち上がりすたすたと歩いて自分の荷物が置いてあるところまで行った。今まで夢中だった氷には振り返りもしないで。本当にこいつは何がしたかったんだろう。

 自分の荷物と一緒に俺の荷物も取ってくれた。咄嗟にありがとうと言ってしまう。そのまま梨緒は2階へと上ってゆく。

 何が何だか分からなくて、俺が呆然と立ち止まっていると、梨緒は振り返って

「上、行くんでしょ?」

 とか言っている。

 いや、そりゃ行きますよ!?行くよ!?でも何でお前もついてくるの!?

 ・・・別に嫌なわけじゃないけどさ。

 お前の行動全部伝わるわけじゃないっつーの。

 本当、何考えてんだかなぁ・・・。

「あぁ」

 何となくこちらの考えを見破られるのが嫌で、俺はただ普通に梨緒を追い越して階段を上っていった。























えっと、少しだけ番外編と組み合わせてみました。

とか言ってるけど、実際ただ単に真夜と那羅ちゃんの接点がそれしかなかっただけです、ごめんなさい。w

那羅ちゃんの可愛さが伝わっているのかかなり不安なのですが・・・大丈夫でしょうか?



文字数が余ってしまいました・・・。と、そこでお1つ。

・・・と、文字数制限に引っかかりそうなのでもう1つスレを立てましょうかね