複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【んーと、いろいろ受付中?w】 ( No.140 )
日時: 2013/04/18 21:05
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

更新が随分遅れてしまってごめんなさいっ!!

こういう捜索系は書いたことがなくて苦手でして・・・。
もっと臨場感とか出したかったんですけど・・・ごめんなさい、この機会に練習します。

よろしければ、アドバイスなどくださいっ^^


では、つづきを。















 別に5分くらいいいじゃないか、と思うのだが、そういうわけにもいかないらしい。

 普通に時間を潰していたから、まるで遊びの約束に遅れてきた友達を待っているかのようだったが、俺らはこれから学校に忍び込もうとしているのだ。そう思うと、俺は今更になって緊張してきた。

 生徒行方不明事件の第三被害者如月美羽が金曜日の放課後にプールの女子更衣室にいた痕跡、または他のものの何か。もしかしたら空振りに終わるかもしれないが、逆を言えばヒットするかもしれないという可能性もある。どっちにしろ、油断は禁物となるだろう。

 実行犯が理人と社井で、空悟が見張り役、そして俺がおとり役の役割だ。

 全員フードつきの服を着ていて、学校に入ったら深く被るらしい。未だにどこから入るのかさえ分かっていない俺は、みんなの言うことを鵜呑みにするしかなかった。

 公園を出て、学校へと向かう一行。

 空悟と理人は今から学校へ忍び込む奴らとは思えないほど普通に会話していた。何度かやってれば慣れるもんなのかな。

 一方、社井はというと、先ほどからどこかそわそわしていた。

 その理由に俺は思い当たる節がある。

 多分、璃月のことだ。

 俺らが家を出るとき、璃月は社井に抱きついて全く離れようとしなかった。今日初めて知ったことだが、璃月はアウトロウの活動意外では毎日9時・・・遅いときは10時に絶対に眠るらしい。高校生とは思えないほど早いが、それより驚くことに毎晩社井に寝かしつけられているという。

 家を出ようとしたのが8時半前。つまり、今日は璃月は1人で寝なければいけないことになる。

 そんなの普通じゃねぇか、と言いたくなるが、今までの璃月の行動を見ていたらそれも言えなくなってしまう。

 何とか社井が璃月を説得し、外に出ることはできたのだが、社井も璃月のことが心配らしい。

「おい、大丈夫か?」

 見るに見かねて社井に声をかけると、社井は困ったように笑いながら俺を見上げてきた。

「すみません・・・心配をかけてしまって。大丈夫です」

「璃月のことか?」

「まぁ・・・はい、那羅ちゃんのことも心配です。ちゃんと寝れているか・・・明日学校なのに」

 ・・・那羅ちゃんのこと、も?

 ずっとそれで悩んでいると思っていた俺は、他にも理由があることに少し驚く。

「他に何かあんの?」

「えっと・・・恥ずかしいんですけど、僕、ちょっと暗いところが苦手でして」

 視線をずらし頬を赤く染めながら自嘲気味に笑う社井は、どこからどう見ても女にしか見えなくて多少複雑な気持ちになる。

 こいつは男だ、と自分に言い聞かせ、深呼吸。

「暗所恐怖症、ってやつ?」

「はい、そんな感じです」

「それ大丈夫なのか?更衣室、きっと電気ついてねぇぞ?」

 電気なんかつけてしまったら一発で警備員に気付かれてしまうからな。

 というか、俺が寝るときまで社井の部屋の電気がついているのって、そういうことだったのか。もしかしたら、あれは起きているわけではなくきちんと寝ていたのかもしれない。俺より遅くまで起きているのか、といつも気になっていた。

「そうなんですよね・・・15分で終わりますかね?」

「さぁ・・・場合によるからなぁ」

「ですよね」

 苦悶の表情が浮かんでいた。変わってやりたい気もするが、こいつを警備員の前に出させるほうが危ないと思う。

 如月美羽の知り合いである理人は実行犯であったほうがいいだろうし、自分から申し出た空悟に頼むわけにもいかない。さて、どうするかな・・・。

 にしても、今だって夜で暗いわけなんだが・・・夜の暗さは大丈夫ということだろうか。暗所恐怖症についてはよく分からない。

「あのさ、小さい灯りか何かがあったら平気なの?」

「え?あぁ、はい、多分・・・ずっと、となると無理でしょうけど、時間は稼げるかと・・・」

「社井、火って大丈夫?」

「火?」

「あぁ。今俺灯りっていうとライターくらいしか持ってなくてさ」

「いえ、そんな矢吹さんに申し訳ないですから」

「別に、今回はライターなんて使わねぇだろ?平気だって。貸してやるから、暗くなって辛そうになったらつけろよ」

「でも・・・」

「いーから。持ってけって」

「・・・ありがとうございます」

 半ば無理矢理に社井にライターを持たせた。梨緒と違って社井はきっとドジしねぇだろうし、ライターを持たせても大丈夫だろう。

 昔、1回だけ使ったことがあるそのライターは、携帯と一緒にポケットに入っていた代物だった。先ほど着替えた際にポケットから落っこちてきた。

 タバコとかは吸わないから、持っていても仕方ないのでどうしようかと思っていた矢先にこれだ。こう思うと、持ってるといいものって案外ありそうだな。

 丁寧に俺にお礼をした社井は、ズボンにライターを仕舞う。さっきよりは顔色もよくなった気がする。余程怖かったのだろう。

 そうこうしている間にだんだん高嶺高校に近づいてくる。多分あと2,3分で9時になることだろう。さっき見たときより大分車の数も減って、学校自体電気が消えつつあった。

 夜の学校、というのは何かとそそるものがあるが、いざとなると多少冷や汗をかく。しかもプールだなんてありきたりな。

 体育館、プール、校庭は校舎とは違って1つしかない。というかそれが普通だ。校舎の南側に校庭があり、北側に体育館、さらに向こうにプールがある。校舎、体育館、プールは渡り廊下で繋がっているらしい。

 そして、ついさっき知ったことだったが、高嶺高校の校庭の一角には林のように木が多い茂っているところがある。ビオトロープと呼ばれるところで、理科の実験を行ったり、学生たちが昼食をとったりするところらしい。そこは学校を囲う外壁が途切れ、一般人でも利用するところができる。外側へと近づくとだんだん小道が増えてきたり椅子が設置されていたりして、一種の公園とも言えるだろう。

 俺らはそんなビオトロープの近くに来ていた。確かにここならまだ学校に忍び込んだことにはならない。見つかっても何とでも言い逃れができるはずだ。

「とりあえず、9時を完全に回るまで待とう。警備員が散らばってくれたほうがいい」

 空悟は俺らにそう声をかけて普通に椅子に座った。9時といえど、誰が通るか分からない。仮にも一般人を装うつもりらしい。理人と社井は少し離れた椅子に座って喋っていた。確かに4人で固まっているより目立たないかもしれない。

「ここからプールって逆方向だぞ?」

「あぁ、でも仕方ないんだ。あんな高い外壁越えたら返って目立つからな」

 確かに見つかる可能性が高いほうより、少し遠回りをしたほうがいいかもしれない。

 でも・・・

「遠回りをしてたら見つかる可能性も大きくなんじゃねぇの?」

「・・・あぁ、そうか。真夜はまだ初めてなんだったな、つい」

 どういう意味の「つい」なんだろう・・・と不思議に思ったが、何となく聞かないでおいた。