複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.146 )
日時: 2013/04/22 00:06
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 もし、既に理人たちが犯人の今日の目当てのものを見つけてしまっていたら。3人もの女生徒を拉致または監禁しているのだ、口封じのために理人たちに危害を加える可能性がある。

 ただでさえ社井は苦手な状況に疲れているというのに、あまりに酷過ぎるのではないだろうか。

 壁を通してだんだん足音が近づいてくる感覚がある。挟んでいるのは壁1枚。まず理人たちに辿り着かれる前に俺に気付かれるかもしれない。

 やばい。待て。どうする。もうそろそろ本当の警備員も来るはずだ。今この場から動くのは避けたい。だが、この懐中電灯の持ち主も、止めないといけない。

 俺の役職は足止め。プールの更衣室にアウトロウ以外の人物を近づけないこと。

 それは警備員だけに限らないはずだ。

 でも・・・。

 こうしている間も足音は消えない。どんどん大きくなっていく。

 見たほうが、いい。もし本当に犯人なのだとしたら、顔を見たほうが絶対にいい。というか、それが最高の手段だ。

 だがそれではこちらの表情も見えてしまう、そしたらまた面倒なことになりそうだ。

 俺らの推測が本当に正しいのだとしたら、これは高嶺高校の教員という可能性が高い。教員と生徒では、あまりに立場に差がありすぎる。

 どうする・・・?

 ・・・コツ、コツと。

 足音が、二重になった。

 壁の外から聞こえてくるものと、

 ドアの外から聞こえてくるもの。


 警備員が来てしまった。


 タイミングが悪すぎるだろっ!と突っ込みたくなる衝動に駆られながら、俺はどんどん嫌な汗をかいていく。

 鼓動が早い。呼吸が荒い。

 外の奴のことは一先ず置いといて、警備員はこの機会を逃したら後はない。

 ちっ・・・もう、なるようになれっ!!

 とりあえず俺は、最優先として警備員を選んだ。もうこうなったら窓は開けられない。だけど、別に風がないと竹刀が倒れないわけでもないのだから、どうにかなるはず。

 俺は一番端のロッカーを開けて、運よく空だったことを確認すると音を立てないように配慮しながらそこに身を潜めさせた。

 そして、2つ聞こえてくる足音のうち、室内で響いている足音だけを拾う。

 足音が、だんだん近づいてきて、

 今、倉庫の前を通り過ぎる。

 そして俺は、竹刀を横に押し倒した。

 4本の竹刀のカランカランッという竹特有の音がその場に響く。すかさず俺はロッカーを閉め、外の様子を伺った。

 当然のことながら、竹刀の倒れた音は外にも聞こえ、すぐ近くにいた警備員は一目散に倉庫のドアを開けた。

「何だ・・・?」

 という声がしたかと思ったかと思うと、

 倒れてきた竹刀にぶつかってバランスを崩されたホワイトボードが倒れる。

 警備員の短い悲鳴と共に、バタンッ!という竹刀よりも大きな音が響き何も音をしなくなった。

 ふと、外にいた奴の足音もどんどん遠ざかってゆく。今行っていた方向とは反対方向だ。ホワイトボードの倒れた音が、窓の外まで聞こえていたのかもしれない。

 俺はロッカーの隙間から外を見て、警備員がホワイトボードの下敷きになっていることを確認する。

 数秒経っても動く気配はないので、一先ず安心しロッカーの中から出た。

 一応、起きたらまずいので、ついさっき自分が倒した竹刀を拾い上げ、勢いよく振りかぶって警備員の頭をぶっ叩く。気絶している警備員が危険を回避できるわけもなく、かなり気持ちのいい音を出しながら警備員は二度目の衝撃を受けた。これである程度の時間は大丈夫だろう。無抵抗の奴をぶっ叩くことに関しては、躊躇いも何もなかった。

 外の足音ももういなくなった。とりあえず俺は窓を開けて、状況を作り出す。

 さて、これで俺の任務は終了か?

 と思ったが、俺はさっきまで渡り廊下にいた奴のことが気になる。そっちのほうも調べておいたほうがよさそうだ。

 いちいち体育館の中を通って外に行くのは面倒だったので、俺はそのまま開けた窓から身を乗り出し飛び降りた。

 向かって左に行けばプールだが、さっきの奴が行ったのは右だろう。
 少し怖い気もするが、ここで怖気づくのは男の恥だ。そう思い、俺は慎重に道を進んでいく。

 ここは一体どこに繋がっているんだろう・・・?こんなことになるんなら、地図をちゃんと記憶しとおけばよかった。などと後悔しても後の祭りなわけで。

 足音の間隔は早かった。つまり、向こうは走っていたということになる。ならば、歩いている俺が追いつけるわけもないか。

 などと考えながら、俺はひたすらに渡り廊下を進む。

 でも、渡り廊下がそんなに長いわけもなく。

 すぐに渡り廊下は終わりを告げ、俺は開けた場所に出た。

 校舎にも繋がっているようだが、別にここから靴を履いて校庭へと出てもいい、みたいな場所だった。

 あいつは、一体どこに行ったんだろう・・・?

 と思っていたら、俺はもう1つの道を見つけた。

 道、というよりただの隙間、と行ったほうがいいかもしれないが、その隙間はもう少し奥へと繋がっている。

 他の警備員がいる校庭や校舎に行くより、多分こういった場所のほうが分かりにくいはずだ。

 入っていい場所なんだろうか、と思いつつ俺はそのまま進む。

 道ではなくただの地面と言った方が正しいところを歩くと、先ほどの隙間と同じような隙間を見つける。

 そこは、教員用の自転車置き場だった。生徒用の自転車置き場は他にあるが、よくよく考えればそこに近い場所に思える。

 ある意味抜け道、とでも言うべきだろうか。近道をする際に丁度いいかもしれない。

 何で、自転車置き場なんか・・・?と考えているとき、俺は決定的なものを見つけてしまう。

 全員が帰ったはずの学校。当然、自転車通学の教員、生徒だっていないはず。

 でも。

 自転車置き場の門が、

 開いていた。

 それはつまり、


 今この学校内に、俺たちと警備員以外の人がいることを意味している。


***

 空悟と真夜と分かれ、僕と狛くんは今は一般生徒は立ち入り禁止のプールへと足を踏み入れた。

 プールに入るのは単純計算でも1年振りで、何だか慣れない感じ。

 普通の学校のプールよりは大きいはずのこの更衣室を2人で全部探すのは少し手間がかかる。しかも、狛くんはさっきからもう、本当見るに見かねるくらい震えてるわけだし。

 いつもなら狛くんには外で見張り役とかをやってもらっているんだけど、今回ばかりはつい頼んでしまった。

 かなりの罪悪感を感じながらも、助けてあげられないことに自分が情けなく思ってくる。今僕が狛くんに出来ることは、できるだけ早く目的を果たしてこの場から去ることだろう。

 というわけで、即刻僕たちは作業を開始する。

「えっと、僕はロッカーのほうを見てくから、狛くんは個室のほうを見てくれる?あと、もう無理そうだったら言ってくれていいからね?」

「あ、はい・・・。えっと・・・火、つけても大丈夫でしょうか・・・?」

 そんな真っ青な顔で言われたら、断るに断れないじゃないか。

 別に、ライターの火くらいなら外にも漏れないだろうし、大丈夫かな。

 狛くんポケットからライターを取り出し、不慣れな手つきで火を灯した。何だかミスマッチな組み合わせに、つい苦笑してしまう。






















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