複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.163 )
日時: 2013/05/07 23:06
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 那羅ちゃんは極度な男性恐怖症だ。理由は、(勝手に調べたことだけど)実の兄からの暴力だった。

 10歳のときに両親が離婚し、母親に姉、兄と共に引き取られる。それからというものの、那羅ちゃんは母親の愚痴の吐け口にされたり八つ当たりの対象にされたりしていた。兄たちは部活等でなかなか家にいなかったのだ。

 そのうち、兄が母親に便乗して那羅ちゃんをストレス発散に使うようになったらしい。ついには暴力を振るうようになり、当時まだ幼い那羅ちゃんは必死に耐えるしか手段がなかった。それらのことがきっかけで、那羅ちゃんの体が異常反応を起こし成長をストップさせてしまった。だから彼女の体も心も、成長が止まったときと全く変わらない。

 兄からの暴力は日に日にヒートアップし、それと比例して那羅ちゃんの兄へ対する恐怖心も大きくなっていった。そして、最早兄を兄と思えなくなった那羅ちゃんは、ただ兄を男と思うようになる。

当然、兄へ対する恐怖心は、男へ対する恐怖心となるため、彼女は違う男の人にも拒絶するようになった。それが、彼女の男性恐怖症の発端だった。

 その後の那羅ちゃんとお兄さんについてのことだが、どういう経緯かは未だ不明だがお兄さんは何故か警察に捕まえられた。警察には僕もあまり手を出せないのでまだ調べることができないでいるが、そのうち判明するだろう。母親も得に那羅ちゃんに依存していたわけではないので、那羅ちゃんはすぐに警察の保護対象とされた。まぁ、そこを僕が拾ったわけだが。

 兄の呪縛から解き放たれたそのときから、那羅ちゃんは男の人に触ったことがなかった。当然僕だって触ったことはない。

 そんな状態だった那羅ちゃんが初めて触れたのが狛くんだ。

 狛くんは独特の容姿のため、一目見ただけでは男とは絶対分からない。それは那羅ちゃんも同じだったらしく、彼女は最初狛くんを女の子だと思って接してきた。

 最初に話しかけたのは狛くんだ。2人とも人見知りだったし、何かと親近感が沸いたのかもしれない。優しい狛くんが何もかもに怯えていた那羅ちゃんに手を差し伸べることは分かりきっていた。そして狛くんを女の子だと思った那羅ちゃんは、あたふたしながらもその手を握った。

 口下手な那羅ちゃんが、狛くんを女の子だと思っているということを本人に告げるには、かなりの時間がかかった。そして、それを言うまでに、2人は近づきすぎていた。

 それこそ、もう離れることなんて無理なほどに。

 もうその頃には那羅ちゃんは狛くんに慣れ過ぎていた。それこそもう既にアウトロウにいた女の子の梨緒ちゃんとか灯ちゃんとかより、ずっと狛くんに懐いていた。

 だから、狛くんを男だと知った後でも、狛くんにだけは普通に触ることができた。

 狛くんは那羅ちゃんが唯一恐怖を感じることなく触れる異性だった。

 ここで、人間の本能というものが働く。

 人間は元々異性を欲するようにできている。それが当たり前で、免れない事実だ。一部を除いては、必ず同姓よりも異性を好む。

 よって、那羅ちゃんは何より狛くんを欲するようになった。

 たった唯一触れることができる狛くんにだけ。

 異性の中でも特別な存在が、同姓を踏まえた上でも特別になった。

 そんな存在が、いつも一緒にいてくれる状況にあったとしたら。



 溺れてしまうに決まってる。


 離れたくないとすがってしまうに決まっている。


 だから彼女は、狛くんがいない環境を受け入れられないのだ。

「こまにぃ・・・・・こまにぃ・・・・・っ、どこ・・・どこにいるの・・・・こまにぃっ・・・・」

 だから彼女は、狛くんがいないことにこんなに拒否反応を起こしてしまうのだ。

 彼女にとって狛くんは、人生のなかでたった1人の特別な人で決して離れてはいけない人だから。

 頭を抱えてよろける那羅ちゃんは、目に溜めきれなくなった涙をぽたぽたと床に零していた。

「いや・・・・・いやだ・・・・いやだ、いやだいやだいやだっ!!」

 どんどん狂い始める那羅ちゃんを見て、みんなの反応はそれぞれだ。

 真夜くんは驚き口を開いているが、理人くんと空悟くんは物言いたげに顔をしかめていた。ちなみに梨緒ちゃんと灯ちゃんは今も無表情を貫いている。灯ちゃんに関しては、全く興味がないといったほうが正しいだろうか。

 そのうち、唇を噛み締めていた理人くんが、あまり那羅ちゃんを刺激しないように、ゆっくりと音を立てずに立ち上がり彼女に近づく。狂った那羅ちゃんが理人くんに近づかれていることに気付くわけもなく、静かに那羅ちゃんの背後に回った理人くんがたった一発彼女の首元を叩く。

 かくん、と折れた那羅ちゃんを、理人くんが抱きかかえるかのようにして支えた。もしこれで彼女が気絶していなかったら、それこそ発狂していたに違いない。

 確かに狂った那羅ちゃんを宥めるのは、狛くん以外には無理だ。その対処策がいない場合、無闇に狂ったまま放置しておくと那羅ちゃんは人を殺しかねない。度が行き過ぎると彼女は理性を失ってしまうからだ。だとしたら、気絶させてしまうのが一番いい。

 理人くんが那羅ちゃんを抱きとめたのと、この部屋に沈黙が訪れたのはほぼ同時だった。誰も言葉を発することができず・・・いや、何を言ったらいいのか分からないと言ったほうが正確だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、早く社井を助け出そう」

 最初に口を開いたのは空悟くんだった。今まで以上に重く放たれたその言葉に、横に首を振る人などいなかった。

「真夜の話によると、犯人はほぼ学校の教師で間違いない。もう社井も合わせて4人も拉致しているんだ、周りを警戒してもおかしくはない。よく見てれば、挙動不審な行動をしている奴が絶対いるはずだ」

 空悟くんの言うことは正しかった。

 人は何か周りに隠したい秘密が急速にできると、それを隠そうとして何かしらの行動を起こす。こんな短時間に4人も拉致しているとしたら、相手は相当焦っているはずだ。人数が増えれば見つかる可能性も増えるわけだし、周りに警戒心を張っても全くもっておかしくない、むしろそうじゃないとおかしい。

「とりあえず調査は明日からだろう?集中するためにも今日はもう寝たほうがいい」

 もう10時半を回っている。高校生にとって、というかアウトロウのメンバーとして、多分この時間はまだかなり早いほうだとは思うが、学校での調査となるとこちらも気を張らないといけなくなるわけだし当然疲れる。だったら早めに休んでおいたほうがいい。

「僕ももう眠いし・・・みんなもあまり気に病まずに寝よう。ね、分かった?」

 と言いつつ、そんなことができるのは灯ちゃんくらいだろう。特に当事者である真夜くんたちは。

 一方的に「おやすみなさい」と言うも、席から立とうとする人は誰1人としていない。

 でも、だからといって僕ができることはないといっても過言ではない。早々に立ち去るべきだ。そのうち誰からか立ち上がって自室へ向かうだろう。

 早く切り替えて、明日からきちんと調査してくれればいいんだけど。

 那羅ちゃんには・・・とりあえず明日の朝にでも告げ口しておこうかなー・・・。

 全く、面倒事は嫌いなのに。アウトロウの創始者じゃなかったら、絶対こんなことしないな。















































えっと、少しだけこれからの都合上で那羅ちゃんの設定に「姉」というものを付け加えさせて頂きました。