複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.169 )
日時: 2013/05/15 21:55
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

わぁー!! 更新遅れてしまってごめんなさいっ・・・

はい! ご支援ありがとうございますです!更新します!













「んで?何でそれが俺に関係あんの?」

「あなたがいれば、その犯人を取り押さえることができるの」

「はぁ?何で」

 他所の高校の事件の犯人が、俺に何で関係してんだよ。馬鹿か。


「その人、あなたのお父さんなのよ」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

「詳しいことはあまり言えないけど・・・もし協力してくれるなら、あなたをお父さんに会わせてあげるわ。どう?」

 待て。子供を捨てるんだからろくな大人じゃないんだろうなとは思っていたけど、そんなことを起こすほどロクでもねぇやつだったのか?

 ふざけんなよ・・・そんなこと言われてすぐに理解できるわけないだろ。

「まぁ・・・お父さん、って言っていいのか分からないけれど。あの人にとってあなたは紛れもない子供でしょうけど、あなたにとって父親かって聞かれると・・・答えづらいわね」

 は?それどういうことだよ?意味分かんねぇ。

 俺にとって父親じゃないのに、その人にとって俺が子供?

 矛盾しすぎだろ、ふざけてんのか?

「とにかく、もう被害者は4人も出てるわ。あなたが協力してくれればすぐに収まる」

 いきなり父親に会える・・・とか言われても困る。

 そもそも俺は生き別れた父親に会いたいと思っているのか。それすら曖昧だというのに。

 でもその拉致された子たちは可哀相だな・・・どんな理由で俺の父親らしき人がそういうことをしてしまったのかはあまり分からないけど・・・。

 つーか。俺はこんなに簡単にこいつを信じていいのか?

 黒宮・・・綾、って言ったっけか。こいつが言っていることが全て正しいとも限らないじゃないか。

 それ以前に、何でそいつが俺の父親って言い切れるんだ。本人である俺が分かっていないのに。ありえないじゃないか。

「・・・すぐに返事をしてくれとは言わないわ。とりあえず、はい。これ私の連絡先」

 手渡されたのは2つに折られた小さな紙切れだ。

 随分、用意周到だな。まるで最初から俺が他者を信じることを躊躇することを知っていたみたいだ。

「あなたの連絡先は聞かないようにするわ。・・・そうね、答えは3日以内にお願い。じゃあ、私はこれで」

 彼女はにっこりと笑い、俺と逆の方向に足を伸ばし歩き始めた。

 振り返った瞬間に広がった彼女の黒髪が綺麗で、後ろのうるさい街という背景ごと描きたい衝動に駆られた。

 この瞬間を、俺は忘れることはないだろう。空の暗さも、通り過ぎる人の影も、卑猥なライトの色も・・・全部。写真を撮ったように。

 俺とは正反対な奴だ。綺麗で・・・でも、純粋とは言えないな。白すぎて・・・黒い・・・俺も矛盾してるな。でも、そんな感じだ。

「あ、最後に」

 そう言いながら振り返った彼女に、俺は少し驚いてしまう。

 何なんだよ。・・・まぁ、今起こっていた事態に足が竦んでこの場を立ち去れなかったのは俺だけど。


「女の子が“俺”っていうのは、やめたほうがいいと思うよ」


 ・・・本当にこいつは何なんだ?




*翌日*

 社井がいなくなって一晩明けた。

 みんなどこか真剣な眼差しで、それでも周りには気付かれないように学校で過ごしている。

 それは俺も変わらず、珍しく今日は全ての授業を起きて過ごしている。授業なんてまるで聞いていないが、教卓の前の教師だけずっと観察していた。

 今は昼休み。今朝昼飯を買い忘れたので梨緒と一緒に購買へ向かっているところだ。

 ちなみに今日受けた教科は数学と日本史と理科Ⅰ英語。だが、どの先生もあまりピンとこなかった。4人の生徒を拉致しているのだから、少しくらいの動揺が垣間見れておかしくないはず。だが、どの先生もそういった傾向は見られなかった。

 高嶺高校在籍の教師が何人いるか知らないけど、少ない数ではないはずだ。そういう意味では、たった4人で落胆するのはまだ早いかもしれない。

 気になることといえばもう1つ。それは璃月のことだ。

 璃月は今日は欠席。まぁ、まぁ学校の準備も何も全て社井に任せっきりだったらしいので無理もない。昨夜、理人に気絶されたあといつ起きたのかは定かではないが、真曰く部屋に引きこもっているらしい。それほど社井の行方不明はショックだったのだろう。

 そのためにも、早く社井を見つけ出さなくては、と気合が入る。

 だがとりあえず今は休憩だ。早いところ食い物を買って食べてしまおう。話はそれからだ。

 無駄に広い廊下を歩いて、少し離れた購買へと足を伸ばす。ちなみに購買もとい食堂は校庭や体育館と一緒で3学年合同だ。

 普通の高校生なら、休み時間にほとんどと言っていいほど一緒にいる姫路兄妹も気を遣って付き添ってくれるところだが、生憎あの兄妹たちに常識、・・・ではないが、そこらへんの価値観は通用しない。

 自分たちに必要がないもの、または興味の沸かないものには、一切触れないのがあいつらの自己流価値観だ。ちなみに俺と梨緒は後者のほうだと思う。

 相変わらず俺と梨緒の風貌のアンバランス差が際立つのか、すれ違う生徒たちが恐怖と好奇心がいっぱい詰まった視線を向けてくる。

 もうそろそろ慣れてきたな・・・と思いつつ、梨緒はどう思っているんだろう、と不安になる。が、どうせ聞いても無駄なんだろうなと思い直して溜息をつく。

 そのうち購買が見えてくる。多いとも少ないとも言えない人数の生徒たちが群がっており、パンが売り切れになってないか少し心配になった。まぁ、資金が大きく残っているお金持ち高校なので、そんなことはありえないだろう。

 列に並び、そんなに短くない時間が経ってすぐにパンに辿り着く。ついでに後ろにいる梨緒のぶんのパンも取り、そのぶんの金も支払う。あとでこいつに請求すればいいだけだ。何というか、本当に犬か猫かを連れて歩いている気分だった。

 俺に釣りを返すときのあのおばさんの嫌そうな顔を二度と拝まないためにも、朝絶対昼飯を調達しよう。満員電車に乗ったとしても。昨日の姫路たちのようにはならない自信がある。もしあんな気持ち悪い事態になったら、証拠写真を撮った上で相手の指をへし折ってやる。

「ねぇ」

「あ?」

 空いている席を探しているときに、梨緒が後ろから話しかけてきて俺は体を捻るようにして振り返った。

「昨日理人が拾ってきたパンのことだけど」

 ・・・。

 この天然野朗も少しは考えたりするのか、と俺は心底感心した。

 何も考えてなさそうなのに、こいつもそれなりにアウトロウのメンバーなのだ。当然といえば当然かもしれないが、今までが全然そういう風には見えなかったから、少し驚いてしまう。

「あのパン、ここの購買には売ってないのね」

 ・・・。その言葉に俺はさっき購買に売っていた商品を脳裏に思い浮かべる。

 んー・・・確かに売ってなかったような気がする。

 ちゃんと見たわけではないけれど、あんな硬そうなパンはなかった。

 あのパンが購買で売っていないとなると、昼にここで買ったという選択肢と、調理委員さんが捨てたという選択肢が消える。つまり、学校外から持ち込んだパン、ということになる。

「そう・・・だな」

 そんなに大した情報に見えなくても、今はそんな情報さえ惜しい状況だ。

 今は情報が少なすぎる。犯人の手がかりがなさすぎるのだ。これでは調査が全く進まない。