複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【コメントその他もろもろ大歓迎っ!w】 ( No.170 )
日時: 2013/05/22 16:51
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 今のところ、手がかりと言っていい手がかりは、理人が拾ってきたパンしかない。硬い・・・フランスパンみたいなパンだった。

 携帯とかだったらまだしも、パンではそこから犯人を割り出すのは困難だ。あとは俺たちの観察力しか頼る術がない。

 一通り席を見渡して、やっぱり空いている席はないか・・・と落胆したあと、後ろに梨緒がいることを確認してから今買ったパンを持ってその場を離れた。席に座るんだったら、やっぱりもっと早く来ればよかったな・・・と思いつつ、仕方ないと潔く諦める。

「どこで食いたい?できるだけ近くで」

 こいつに「近くで」という言葉は通用するのかな、と心配になったが、その心配は必要なかったようだ。

「外」

「外・・・ねぇ」

 高嶺高校は敷地が広い。一度に「外」と言っても、選択肢はいろいろある。

 でも、昼飯を校庭で食べるなんて邪道は絶対にしたくない。その他も・・・階段とか渡り廊下とかだし・・・。

 中庭に確かベンチがあったな。上履きでも入れるみたいだったし、何より近い。俺は別にどこでもよかったので、一先ず中庭へと向かう。

 まぁ・・・中庭・・・と言っていいかは分からない。実際校舎の中に土地が抜けているわけでもないし。校庭とは離れた場所にあり、それなりに設備が整っている。多分学校建設時にこの変な造りの学校にしてしまったため不自然に空いてしまった敷地を埋めたのだろう。これまた広さは充分で学年を問わず入り混じっている。結構と木があったり花が咲いていたりと、女子とかそこらのカップルに人気があるところだ。穴場・・・とかスポット的な場所だ。

 梨緒が俺の行き先に気付いているのかは定かではないが、とりあえず着いてきているのでよしとしよう。

 距離もそんな遠くなかったので、俺らはすぐに辿り着いた。

 梅雨の割りに様々な種類の花が咲いていて、何でか私立、ということを強調された気分になる。こういう風景は絶対他の学校にはないのだろう、まぁ俺のとこにもなかったし。

 先約がいるものの、ベンチが運よく空いていた。

 普通に歩いて行きベンチに座ると、当然の如く密着するほど近くに梨緒が座ってくる。もういい、慣れた。突っ込む気も失せた。

 無言で今買ってきたパンを食べ始める。高嶺高校は意外と時間にルーズで、昼休みもかなり長い間取ってくれる。まぁ、授業の準備とか部活の練習とか、普通にできることでもこの高校はとにかく広さがありすぎる。移動時間だけでも数分かかってしまうほどだ。それらを考慮すると、この時間感覚はある意味正当なのかもしれない。

 特に話すこともなく俺らはただもくもくとパンを食い続ける。梨緒は随分とペースが遅いが、・・・どうにかなるだろう。

 あまりこうしてのんびりもしていられない。引きこもってしまった璃月のためにも、拉致された3人の生徒たちのためにも、暗所恐怖症の社井のためにも、できるだけ早く手がかりを入手して、助け出さないといけない。

 ・・・こんなことを言っていると、正義のヒーローのような台詞だが、決して俺はそういうつもりはない。

 むしろ、今まで俺は人を傷つける側だった。俺が助けた奴なんて、生まれて16年の中で誰1人存在しない。

 前にも言ったかもしれないが、結局俺はただここにいる口実が欲しいだけだ。アウトロウにいれば俺を必要としてくれる梨緒と一緒にいれる。アウトロウにいるためには周辺の問題を解決しなければならない。治安を維持しなければならない。だから。きっと。

 それか、ただ「やらないといけないこと」が欲しいのかもしれない。もしあの時、梨緒に話しかけられなかったら俺はあのままあそこに立ち止まったまま雨に濡れていたことだろう。

 どこにも行く当てがなく、することもなく、頼る人もいなく、何をしたらいいのか分からない。するべきことを全て放棄して逃げてきてしまった俺への見返りだ。

 もしアウトロウから外されたら、あの家に住めなくなったら、梨緒に見捨てられたら、俺にはすることがなくなる。

 そしてそのまま腐るように、俺はどんどん世界から見放されていく。

 ・・・そんなの嫌だ。それは避けたい。まだ俺にはそう思うことができた。

 だから、周りから必要とされるために、今の俺にできることを、やるべきことを、やる。

 周りのため、とか言っているけど、結局俺は自分のためにしか動けない奴だった。

 自分が必要とされるために周りを利用している、卑怯者でしかないんだ。

 そんなの分かってる、けど、やめることはできない。それが俺という人間だから。

 とかって物思いにふけっていると、ふと視界に入った人物を見つけた。

 咲き誇る花壇の中。黒髪のショートカットに水色のヘアピンを止めているおとなしそうな女の子。彼女の手に持つジョウロからは綺麗な曲線を描いて水が滴っている。

 昨日急いでいる中で図書室で知り合った、確か・・・

「天内・・・・・小夜」

 思っていたことがつい言葉に出てしまい、隣にいた梨緒が不審げにこちらを見る。自分の名前はよく聞こえるもので、すぐそこにいた天内自身にも聞こえてしまったらしい。

「あ、矢吹真夜さん。こんにちは、昨日ぶりです」

 律儀にペコリと会釈しながら、天内は笑顔を浮かべた。





























更新が1週間も遅れとに申し訳ございませんでした!