複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.194 )
日時: 2013/06/09 14:00
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

いえいえ、チェシャ那羅ちゃんのこと好きですよw

ありがとうございます


では、話しは変わりまして、本編を続けさせていただきますねw







***

 放課後。

 梨緒は姫路にどこか付き合わされているようで、少し待っててと言われた。昇降口で待ってるのも何だと思って、俺は校内をただうろうろしていた。

 学校に何か手がかりでも落ちてないかなー・・・と思いつつ、今日一日見ていた先生たちについて考えてみる。

 それなりに嫌われている先生もいるし、あまりよく思われていない先生も多々いる。昼休みの天内に怒られていた先生を筆頭に、この学校はロクでもない教師ばかりのようだ。

 まぁ、俺が通っていた学校より授業のレベルは高い。勉学方面ではそんなに問題ないようので、人間的に駄目な奴が多いということだろう。

 機嫌が悪い奴もいたし、妙に怒ってる先生も結構いた。でも、周り(主に姫路たち)に聞く限り、それらは通常のことらしいので、あまり当てにはならないようだ。

 今のところ、収穫なし、といったところか。他の奴らはどうしているか分からないが、俺はそれしか言えない。

 何だか自分が惨めになってきて、情けなくなってくる。

 早くしないと、社井は暗いところが苦手なのに。

 いや、でも監禁場所が暗いとも限らない。そこは神に祈るしかない。

 考えてみると、犯人は4人もの高校生をどこに監禁しているんだろうか。いや、私立の教師という仕事は給料が高いんだろうか。

 金を持ってる家じゃないと、そんなに広さはないはずだ。教師で金持ちの奴、とすれば絞り込めるだろうか。

 俺が情報通ならよかったものの、そうでないため全く分からない。姫路に聞けば一発だろうけど、今日一日でかなり怪しまれている感がある。アウトロウの動きは小さくしたいし、それは避けたほうがいいのだろう。

 学校が終わってしまった今、完全に行き止まり。

 あー・・・俺って本当に何もできねぇ奴だな。もう、自分で自分が嫌になってくる。

 駄目だ。こんなに気を詰めたら返って失敗してしまう。

 1度頭を冷やして、それからゆっくりまた考え直そう。何か閃くこともあるかもしれない。

 そう思った俺はまだそれほど時間が経ってないことを確認し、丁度良く横にあった階段を上がる。方向転換も交えながら上に上ってけば、そのうち目の前に1枚の扉が現れた。

 試しに手をかけてみたが、やっぱり鍵が掛かってて開かない。面倒くさいな、と溜息をついてから、俺は迷うことなく鉄の扉を蹴破った。

 ちょっと鍵のところが壊れたみたいだけど・・・まぁいっか。

 屋上に出れば、相変わらずの梅雨の空気が纏わり着いてくると同時に、心地よい風が吹き抜けていく。とりあえず、ここに来た甲斐はあったようだ。

 邪魔な荷物をその場に置き、腕を上にあげて手を組んで体を伸ばす。何だか疲れてたんだな、と実感した瞬間だった。

 さて、梨緒から連絡が来るまでここで一先ず待とうかな。考えるのはそれからだ。

 ・・・と思っていたときだった。

「・・・?」

 突然視界が見えなくなった。真っ暗になったのかと思ったが、ここは外だ。そんなのありえない。

 一体何が起こったんだろう、と慌てていたが落ち着いていくうちに、誰かに目を塞がれていくことに気付く。動こうとすれば、俺の目を塞ぐその手に力が入った。下手に動くと目が痛くなるので、とりあえず抵抗せずそのままにする。

「だーれだ?」

 くすぐったくなるくらい耳の近くでそう囁かれ、思わず声が出そうになるのを必死に堪える。

 すぐに振りほどこうと、目を覆う腕を手で掴む。

 だけど、力が入んなかった。

 たった一言。「だーれだ」と言われただけで、何だかこいつが怖いと思ってしまった。冷や汗が半端ないほど溢れている。

 誰だか分からないことへの恐怖心もあるだろう。が、それ以上の何かがある。

 こいつを敵に回しちゃいけないと、体の中で警報が鳴ってるみたいに思考が駆け回る。

 何なんだ・・・?と疑問を抱くものの、声を発することすらままならない。

 そして、はっきり言おう。俺はこの声の持ち主に心当たりが1つもなかった。

 声質から女ということが分かった。が、こんなに妖艶な声は知らない。

 梨緒と姫路は今ここにいるわけがないし、杵島はこんなことするキャラじゃない。璃月は今日は休みのはずだ。天内は、昼休みの都合上こんな接し方はしないだろう。

 ここでの俺の女の知り合いはそれくらいしかいない。よって、こいつは俺の知らないやつだ。

 初対面のやつにいきなり目隠しするだろうか?もしかしたら、相手は俺を知っているのかもしれない。・・・まぁここ2日間で名前が知れ渡った自覚はあるけれど。

「知らなくて当然。だって話すのは初めてだもの」

 くすくすと笑う彼女の声にはやっぱり聞き覚えがなかった。

 誰だ・・・?一体俺に何の用がある?

「ガールフレンドを待っているの?羨ましいわ、そういうの少し憧れているのよね」

 友達と話すみたいに、俺に普通に話しかけてくる。そういう状況じゃないだろうに。

 俺は何をどう返答していいか分からず、そのまま黙ってしまった。そもそも、確かに人を待っているのは事実だが、ガールフレンドではない。突っ込みを入れていいのだろうか、少し迷う。

 案外冷静でいれている自分に、ここ数日で結構慣れたんだということに嫌でも気付かされる。

「そんな健気なあなたに、1つご褒美をあげようかしら」

 ・・・ご褒美?

 場違いな言葉に、俺は怪訝な表情を浮かべた。

 むしろ、高校生が「ご褒美」という言葉に心を躍らせるわけがない。子供に言えば、それは確かに「わぁい、やった!」と喜ばれるものだろうが、高校生にもなって言われても、逆に不安を掻き立てる他ない。

 妖艶な声ならもっと不気味だ。変に「ご褒美」という言葉が似合っていて、ますます相手を警戒した。

 だが、彼女が言った「ご褒美」は俺の予想とは大きくかけ離れているものだった。


「社井・・・狛くん、だっけ?昨夜は苦しそうだったわよ、すぐに気を失ってしまったけれど」


 その言葉に、俺は思考より先に体が動いた。