複雑・ファジー小説

OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.199 )
日時: 2013/06/22 13:32
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

「え」

 相変わらず空気を読まない梨緒の受け答えに、俺は一瞬戸惑ってしまう。


「泣いて泣いて・・・涙が枯れない程度に泣いて、泣き疲れて、」


 ・・・泣く?

 梨緒が?

 ただでさえ、俺の言葉に嬉し涙を零してくれた梨緒が、


 今度は俺がいなくなったことに悲しんで涙まで流してくれるというのか?


「真夜が残した世界を、一生懸命生きていくわ」


 死んだら私も死ぬ。それは俺を求めてくれる言葉と同時に、プレッシャーでしかなかった。

 そのプレッシャーに耐え切れずに、あんなことをしてしまったくらいだ。

 俺がずっと待ち望んでいた言葉は、聞きたかった言葉は、

 今、梨緒が言ったやつじゃないのか?

「真夜が死んだら灰になって、土に還る。その土で育った木は、きっと私を雨から守ってくれるわ。だって真夜だもの」

 目に見えなくても。

 声が聞けなくても。

 手で触れ合えなくても。

 温もりを感じられなくても。


 それでも、一緒にいてくれる。


「だから、私は真夜が死んでも真夜と一緒にいるわ」

 そう言った梨緒は日に当てられてきらきらしてるように見えた。

 優しくて、暖かくて、心地よい。このまま時が止まってしまえばいいと、本気で思える。

 こんなに優しく想われるのは、初めてで、切なくて、苦しくて、・・・甘くて。

 つい、溺れてしまいそうになる。

「・・・いいでしょ?」

 不安げに目を伏せる仕草さえ可愛く思う。

 どうして梨緒がここまで想ってくれるのかは分からない。だけど、そのことに自分が助かっているという事は分かる。

 もしも、梨緒みたいなのが傍にいてくれているんだとしたら。

 檻の中でもいいのかもしれない、なんて。

 そんな馬鹿げたことを思ってしまったから。

「真夜、どうしたの?」

 気付けば俺は梨緒のほうへ倒れこんでいて。

 梨緒のか細い体を腕の中に収めていた。

 暑い気もしたけれど、何となく梨緒の体は冷たくて気持ちよかった。

「何でもない。でも、今だけ。少しでいいから、・・・このまま」

 数日前のあの日を思い出したのは、多分俺だけじゃないはず。

 だから梨緒も、何も言わずに俺の背中に手を回してくれたのだろう。

 今だけ、少し、すがっていたい。

 いつかケリをつけに行かないといけなくなるから、せめてそれまで。

 それまで、俺は梨緒を離してはいけない。・・・いや、

 離したくない。


 今度こそ、俺の意思で。


***

「那羅ちゃん、大丈夫かなぁ・・・」

「大丈夫じゃないと思うけどな」

 俺の独り言に、空悟がすかさず返事をくれた。

 僕らは今学校の帰り道。これといった情報も仕入れられずに帰宅する途中だ。

 狛くんが拉致されたのが昨夜。

 ・・・僕が、ちゃんと狛くんの傍にいれば。

 そんな後悔を、昨日からずっと繰り返している。しても無駄だって分かっていても、つい思ってしまうのが人間の性だ。

 悔やむより動くほうが先。とか言いつつ、まだあまり有力な情報は仕入れていない。

 それなりに情報は集まるけど、生徒の教師への反感の言葉なんて世間話とそう変わらない。どれが自分の欲しい情報なのか見極めるのは、結構難しい。

「狛くん・・・早く助けないと」

 焦る。

 彼の暗所恐怖症の症状の悪化具合は、一緒に過ごしてきて理解しているつもり。

 狛くんの体調と、それに加えて那羅ちゃんの精神状態を考えると、真さんが言ったとおり3日が限度。そのうち1日目は何の収穫もなし。

 焦るのも当然だ。

「・・・考えてみると、今社井って危ない状態なんじゃないのか?」

「え?何言ってんの、当たり前でしょ」

「いや、身体のほうもそうだけど、状況的に・・・って、何て言えばいいんだろう。立場的に・・・さ」

「?」

 今まで神妙な顔つきだとは思っていたけど、突然何を言い出すんだ。

 隣を歩く空悟は少しの間言葉を考えていたようだけど、1分も経たないうちに説明したほうが早いと思い直したらしく目線を俺のほうに向けてきた。

「いいか?今回の被害者は社井を抜いて3人。2人ならともかく、3人中3人となると、犯人の狙いは女子生徒の可能性が高い」

 それは少し前にみんなで辿り着いた結論だった。

「そこに、想定外の事態で社井を拉致してしまう。最初は女だと思ってはいても、運んだんなら嫌でも男だと分かるはずだ。女を狙った犯行ばかりしてきた奴が、突然男に手を出してしまったら、・・・どうする?」

 例えば、僕が可愛い女の子たちばっかり集めてカラオケにでも行くことにしよう。

 そんな中に、突然男の子が飛び入り参加してきたら。

 ・・・言い方は悪くなってしまうが、僕だったら確実に

「追い出す」

 今の社井くんの状況は、この飛び入り参加の男の子と同じなのではないだろうか。

「だろ。でも、人質のアクセサリーをわざわざリスクを冒してまで回収しにくるような慎重な奴だ。一度行方不明にさせた生徒を元に戻すなんて大胆なんてことしない」

 訳があって飛び入りの男の子を追い返せないと。

 うん・・・まぁ、少し気になるというか、何というか変な空気にはなるだろう。もし、そんな状況に陥ったとしたら・・・?

「僕だったら・・・女の子の数増やすかな・・・」

 その飛び入り男の子がいても女の子が増えれば別に構ってる必要なくなるし・・・。

 でも、もし、犯人と僕が同じ考えだとしたら・・・?

 狛くんという男の子を見なくて済むように、女の子を増やすんだとしたら・・・。

「もし起こるとしたら、次の犯行はこの3日以内なんじゃないか?」

 空悟に言われて、改めて気付く。

 1人目の黒宮綾。2人目の渡辺香織。3人目の如月美羽。そして想定外の4人目、社井狛。

 これ以上被害者を増やすわけにはいかない。

 しかもこの予想が正しいのなら、次は必ず女の子だ。

「・・・そんなの許さない」

 だって女の子は強くて強くて、弱いんだ。

 強さを持っているのかもしれない。だけどそれでも弱いんだ。

 その弱さを守るのが、男の存在意義だろう?

「空悟。もう1回教師たちについて調べてみないか」

「お前ならそういうと思ったよ」

 肩を竦めて足を止める空悟に、素直に感謝する。もしかしたら空悟は最初からその気だったのかもしれない。

「悪い」

 とりあえず謝りながら俺と空悟は来た道を逆戻りする。

 まずは社井くん以外の3人の教師の共通点が必要だ。担任という可能性は低いから、教科担任を調べてみる必要がある。

 調べる要素を確定しながら少し歩いていたら、反対側から歩いてくる美男美女カップルがいた。

 誰だろう?と思って視線を向けていると、それはカップルではなく双子の姉弟ということが分かる。















更新が遅れてしまい、本当に申し訳なく思います!

中々思い通りに行かなくて・・・何度も書き直してしまいませいた。結果的にこんな意味わかんないものになってしまったのですが、どうかご了承くださいなのです

もうすぐ定期テストがあるので、また次の更新は遅れてしまうかもです、すいません。

こんな馬鹿なチェシャにコメントアドバイスイラストなどなどを恵んでくださいっ! 凄くうれしいのでっ!頑張りますってなるので!

お願いします・・・いや、ごめんなさい、ありがとうございますです、本当もう・・・馬鹿ですいません。

どうか飽きずに呆れずにお願いしますですw