複雑・ファジー小説
- OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.232 )
- 日時: 2013/08/17 23:58
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
更新が遅れてしまい、本当に申し訳なく思います!
いや、ほらあれです。
学生にとって夏休み残り1,2週間というのはあれです。
・・・すいません、宿題が終わってないのです。馬鹿でごめんなさい。許してください。1発ずつ殴っていいのでお願いします。あぁ、でも痛いのは嫌いなのでやっぱりやめてください。我儘でごめんなさい。
というわけで、焦りながらも更新いたいますですっ
ただ何と言うか・・・禍々しい、というか、どす黒いというか・・・。
不安や恐怖を掻き立てるような・・・そんな暗い絵だった。背筋が凍るような、冷や汗をかくような。そんな、おぞましい絵だ。
少女の目線は全くこちらに向かっていて、苦しみにも、哀れみにも、妬みも、恨みも、そういう負の感情を含んでいるとにかく見つめて欲しくないものだった。なのに、どこか優しさや愛しさも混じっているようで不思議な感覚に捕らわれた。
「・・・何これ?」
「さぁ。こういったものは書いた本人にしか本当の趣旨は分かりません」
確かにある種の才能だとは思う。た、これを中年のおっさんが書いていたとしても、はっきり言って気持ち悪い。
ふと気付くと、その絵は少し端が破れていた。
「何で破れてんの?」
「これ、黒宮さん・・・って言って分かりますか?まぁ、3年生の方が、授業中に突然先生の前で破ってしまったんです」
黒宮綾。少なからず、俺はその名前に反応した。今のところ、俺にとってそいつは要注意人物だ。
前に理人に彼女のことを聞いたとき、『この間は美術教師の絵を破いたって聞いた』と言っていたことを思い出した。あいつが破った絵って、これのことだったのか。・・・でも何となく、破りたくなるのも分かる。
「熊谷先生それ以来、こうじゃない、こうじゃないって呟きながら何度も何度もこの絵を書き直すようになって・・・」
・・・“こうじゃない”。
ちぐはぐの少女を書きながら“こうじゃない”と呟いて、書き直す。
1人の少女を完成させるために、何度も想像しながら絵に記す。
俺は思い当たる節があることに気付いて、首を傾げて熊谷の絵を見つめる彼に声をかけた。
「悪い、俺もう帰る。今日はありがとな」
「あ、はい。分かりました、お気をつけて」
突然来て突然帰るなんて失礼な奴だとは思うけど、この際仕方がない。俺は美術室を出て、とりあえず昇降口へ向かった。
まず、空悟たちと落ち合う必要がある。今聞いた話をあいつたに伝えないと。メールは送ったから、大体の状況はあいつらにも伝わってるはずだが、話し合いはメールではできない。
彼・・・蓮井凪には悪いことをしてしまった。今度ちゃんと謝礼をしないといけないと思う。
だが少しだけ気になることもあった。
蓮井凪が今回俺に伝えてくれた情報は、全部で3つ。
昨日の天内小夜が拉致される際の状況。証言。
あとは、パンのこと。そして熊谷の絵のこと。
全て今回の事件に関係し、そして現在において重要な情報ばかりだった。
ここで思うことはただ1つ。
都合がよすぎる。
そもそも文化部が休みの水曜日に美術部の蓮井が先生の手伝いという名目で学校に残っていることから、俺にとって都合がよすぎているのだ。そう思うと、全てが怪しくなってくる。
もしかして俺は蓮井、または誰かの策略に踊らされたのではないだろうか?まぁ、そのおかげで今回の鍵を手に入れたのだから、別に怒ったりはしないのだが・・・何か腑に落ちない。
俺の性格が捻くれてるからかもしれないが、そう思えるほど俺はさっき蓮井に流されていた。
そんなことを思いながら、俺は校舎を出た。
***
「悪い、俺もう帰る。今日はありがとな」
「あ、はい。分かりました、お気をつけて」
アウトロウの新メンバー矢吹真夜さんが、美術室を出て行った。
数秒間、矢吹さんが出て行ったドアを見つめたあと、僕は小さく溜息をつく。
机の上に微妙に残った備品を片付けて、僕は多分今までと変わらない様子で美術室の後方のほうへと足を運んだ。
一番隅の机の下を覗き込むような体勢を取りながら、言葉を発しようと口を開く。
「僕の演技はどうでしたか?」
電気が届かないため机の下は少し暗い。そして何より狭い。そんな小さな隙間に身体を埋めていたのは、誰であろう灯ちゃんの姿だった。長い黒髪と折れそうなほど細い体が、より小さくなってその場に入っている。かくれんぼをしている子供みたいだった。
名前を呼ばれて埋めていた顔をあげた彼女は、ギッと僕を睨む。
「下手。絶対怪しまれたわ」
そう言うと、机の下からするりと抜けるように出てきて、きつかったみたいで身体を伸ばす。僕も相当小柄なほうだけど、灯ちゃんはそれより小さい。
「そう言うなら、灯ちゃんが言えばよかったのに・・・」
また睨まれる。
灯ちゃんが言うように、矢吹さんが気付いているのかは分からない。
けれどついさっきまで僕が矢吹さんに流していた情報は、全て灯ちゃんの指示だった。
そもそも昨日のメールも灯ちゃんから言われたからだ。自分ではみんなに天内小夜のことを言えないから、代わりにあいつに連絡しなさい、と。すぐにあいつというのが阿九根さんだということは分かったし、言われる通りにした。そのあと、昨日の犯行現場状況も伝えてほしいと言われ、消しパンのことも僕より灯ちゃんのほうが早く気付いた。このパン凪も持ってるわよね、と尋問されるように。
熊谷先生の絵を見せたことは僕の勝手な行動だけど、今日の僕の動きはほとんど灯ちゃんが指示していたと言っていい。
灯ちゃんはアウトロウのメンバーとはあまり上手く行っていないらしい。まぁ、大体予想はつく。
けれど、アウトロウの仕事はきちんとこなす。
実際、表向きに動いているのは阿九根さんとか・・・葉隠さん、と言ったかな?そういった表に立つ人たちのほうが、アウトロウとしての動きは目立つ。それこそさっきの矢吹さんのように。
でも灯ちゃんは口だけじゃない。ちゃんとやることはやるし、みんなのことも考えている。
大方今回のことも、自分からみんなに言うより、僕という一般生徒からの情報としたほうがみんなが信じやすいと、そう判断したのだろうと僕は思っている。
自己中心的な考えが目立つ言動が多いのは確かだし、本当にそうなのかもしれないけど、灯ちゃんは周りにいつも気を配っている。根は優しい子だから。
なんというか、素直じゃないというか。捻くれているというか。
「それにしても、今回はいつもより積極的だね」
「馬鹿言わないで。これ以上私の時間をとられたくないだけよ」
「・・・夜?」
無言で肯定を促す灯ちゃんに、つい僕は息を呑んだ。
「今まで通り、辻褄あわせよろしくね」
灯ちゃんは毎晩どこかにでかけている。
理人さんには僕の家と言っているようだけど、本当は、僕の家になんて来ていない。
でも、灯ちゃんはどこに出かけているのかを僕に教えてくれない。前聞いたことがあるけど、遠まわしにスルーされたので一切触れないようにしている。
それから灯ちゃんは美術室を歩き回り、美術部員の作品の中から1つ指差して僕のほうに振り向いた。
またか・・・と僕は悟った。でも、だからといって逃げられない。
「凪の、これ?」
「・・・う、ん」
僕の返事を聞いて、不気味に笑った灯ちゃんは躊躇なく僕の作品を手に持ち、
びりびりびりっ、と絵を破った。
