複雑・ファジー小説
- OUTLAW 【参照3000ありがとうございますっ!!】 ( No.248 )
- 日時: 2013/09/01 13:46
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
共通点のない高校生を集めて何がしたいのか・・・俺は全くその趣旨が分からない。高校生なんかに治安を維持させて、何が変わるというのだろうか。いや、今までそれなりにいろいろ解決してきたようだが、そのおかげでこいつらはちゃんと何か変わったのか、まだ俺には全く分からない。
ついでに言うとしたら、そのアウトロウにいるこいつらの気持ちだ。
こいつらは、どういった理由でこんなよく分からない組織に属しているんだろうか。
俺は至って単純な理由が目に見えているし、聞かれてもすぐに答えることができる。
だけど、そもそもこいつらはどうしてこんなところにいるんだ?
みんな普通の高校生で、普通に勉強して普通に遊んで普通に暮らしていたはずなのに、何でこんな異常な状況の中にいるんだろう。
聞きたいとは思うものの、何となく聞ける空気ではないことはすぐに分かる。
本当に何となくだけど、言葉に詰まって違う話題を提供してしまう。
その理由は、分かっている。
多分、見えない壁の存在だ。
アウトロウのメンバーは、一見仲がよさそうに見えるが、実際、全員が全員に距離を取っている。
みんな、何かを背負っている。そしてその重みを、共に分かち合おうとは決してしない。団結しているようで、ばらばらなんだ。
自分も聞かれたくないから、相手にも聞かない。相手に聞いて、自分も言う羽目になるのが怖いから。
その考えを否定する権利は今の俺にはない。だって俺も、そうなのだから。
だから、俺はこいつらを責められない。
こいつらのことを、聞けない。
それがまた、何となく悔しい。
「まぁ、真夜は確実に捕獲班だな」
「え?」
ほかくはん、って?
考え込んでいた頭が、聞いたことのない単語に反応して思考回路をぶち切った。
「学校に忍び込んだときみたいに、今回も何個かの班に分かれるんだよ。7人が一気に訪問したって、相手が気を許すわけないだろう?」
にこやかに説明してくれる理人に感謝しながら、それでも疑問がまた浮かび上がる。
「じゃあ、何で俺が確定されてんの?」
特に集まってみんなで決めた様子はない。俺だけ知らされてないはずがないからだ。
となると、きっとその確実、というのは理人の憶測。だけど、空悟たちが何も言わないところを見ると、案外当たっているのだろう。
ただその理由が、分からない。
すると、理人は身軽に身体を回転させ、前の方向に直る。
別に、こっちを見ててほしかったわけではないが、これだと単に、顔が見れないから考えていることが読み取れない。
「だって真夜、何か隠してるみたいだし・・・ねぇ?」
反射的に俺の足がすくんだ。
何故って、今の理人の声が今までとは全然違う、酷く冷たいものだったから。
あの宿題女とは違う、背筋が凍る何かがこもっていた。
生徒行方不明事件のことで、理人たちに隠していること。
そんなの考えなくても分かる。
・・・皐のことだ。
熊谷の家族関係について・・・。もしかしたら言ったほうが今よりもっと多くの情報が集まったかもしれない。
けれど、皐のことを、皐の知らないところで、皐が知らない人に話すのは、気が引けた。
でもきっと、それは言い訳でしかない。俺が言う勇気がなかっただけだ。
「あぁ、別に怒っているわけじゃないんだ、安心して」
普通の素振りでこちらをちらりと見て笑いかけてきた理人に、逆に不安が募る。
そしてさっきから何も言わない空悟の無言の圧力が、怖い。
「真夜なりの考えがあるだろうし。それにまだ僕たちのことを信用できないのは当然だよ。まだ会ってから1週間も経ってないんだから」
あまり気にしなくていいよ、と言われるものの、だからこそ罪悪感が募る。
人に隠し事をすることが、こんなに苦しいことだなんて。
こうなったらいっそのこと言ってしまったほうが気が楽だ。けど、今俺が言ったところで、誰も聞こうとしないだろう。
俺は、隠し事をしてしまったのだ。どんな理由であれ、その事実は変わらない。
何て言ったらいいのか、分からなくなった。
「さっきの電話相手も関係しているんじゃない?だとしたら、きっと今回の突入に役立つことだろ。だったら真夜は捕獲班決定。ね?」
普段と変わらない笑顔が、酷く胡散臭い。ここまでくると、普段の笑顔までもが嘘のように思えてくる。
罪悪感に押しつぶされそうになるものの、本当に苦しいのは俺じゃなくて理人たち。
だから、俺が傷ついている素振りを見せるのは、間違っている。
自分の過ちを否定するのはおかしい。受け入れるべきだ。
とすると、あえて触れないのが一番いいだろう。
「・・・その、捕獲班、ってやつは他に誰がいるんだ?」
できるだけ、平静を装って。
普通に、・・・普通に。
「んー?まぁ、多分成り行きだと思うよー?ねー、空悟」
「あぁ。でも一応俺は確保しに行こうと思ってる」
そこでやっと声を出してくれた空悟は、いつもと何も変わってなかった。
逆に気になるものの、やっぱり聞くことはできない。
・・・もう、何も考えないようにしよう。
今は、事件のことだけに集中しよう。
「そうなの?じゃあ、俺はやっぱり被害者保護かなぁ・・・。女の子たちが心配だしね」
どうしてだろう。
「相変わらずだな」
「灯ちゃんは?どうする?」
「一番楽なのがいいから、どうせ外で待ってるわ」
「了解」
「こっちも相変わらずだな」
みんなの会話に、入って、いけない。
俺は空悟たちに見えないようなところで、手首の火傷の痕を強く握り締めた。
———・・・あの人も、こんな気持ちだったのかな。
あぁ、何も考えないようにしたはずなのに。
やっぱり俺は、どう頑張ったって、
臆病だ。
***
コンコン、とドアをノックした。
返事は当然返ってこなかった。でも、無闇に部屋の中に入るのは何となく気が引けた。
だから、数分の間そこに立っていた。
けど、そんなに何分も待ってられない。
さっき、真に真夜から電話が掛かってきた。
内容は、犯人が熊谷信之で間違いないというものだった。
犯人が分かれば住んでいる場所だってすぐに分かる。変に躊躇している暇はないし、すぐにでも家に行くべき。
だけど、私と那羅と真と切は今真夜たちと同じ場所にいない。一度合流する必要があった。
真はすぐに私に那羅を呼んで来いと言われた。
でも、ドアの外から呼んだくらいで、引き篭もり中の那羅が出てくるわけがない。
こういうことはいつも周りの人たちがやっていて、私はどうしたらいいのか分からない。
そう真に告げると、真はくすくす笑ってこう言った。
『相変わらず、世間知らずだよね』
はっきり言えば、イラっときた。
たまに真は、凄くムカつくことを言うときがある。
『いい?まずはドアをノックして。それでも那羅ちゃんが出てきたらこう言うんだ』
あまり声を張るのは得意ではないけれど、多少なら頑張れる。
それに、早く真夜に会いたい。
真が言った言葉を、そのまま口に出す。
「『狛の居場所が分かったんだけど、一緒に行かない?』」
瞬間、がたんと音がして、あまりの大きさに私の身体が強張った。