複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【参照2000ありがとうございますっ!!】 ( No.253 )
- 日時: 2013/09/18 17:05
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
間が空いてしまい、真に申し訳ございません・・・
久しぶりに、更新致します!!
何度か大きな音がして、とにかく動いていることが分かる。どんな動きをしているかは想像もつかない。
そのうち勢い良くドアが開いて、中から那羅が飛び出してきた。
髪もぼさぼさで絡まっているし、服もサイズがあってなくてずり落ちそう。靴下は左右で色も長さも違うし、とりあえず、滅茶苦茶だった。いつもはまだマシなのだけど、きっとあれは狛が揃えていたんだろうな、とすぐに思いついた。
開きっぱなしのドアから部屋の中を覗けば、それこそ本当にカオスと呼ぶべきものが広がっている。
服は散らかり、ベッドの布団はずり落ちて、机の上は今にも落ちそうなパソコンと無数の紙で覆い尽くされている。服に隠れてあまりよくは分からないけど、服の下にはたくさんの本が放置されていることが分かった。那羅の部屋を歩くときは、とにかく注意しないといけないことが伺える。
那羅のほうへと目を向けると、今にも転びそうな勢いで廊下を歩いていた。私のほうなんて見向きもしない。
いつもの那羅からは全然想像できない機敏な動きに、少し呆気に取られる。
真の指示はちゃんと聞いた。私も準備しよう。部屋着のままで外に出るのはさすがに気が引ける。
自分の部屋に向かって中に入り、適当に動きやすい服に着替えた。
フードを被って鏡で確認する。
大丈夫、見えない。
特に何をするわけでもなく、たった5分ほどで用意を済ませて、1階に下りる。
「相変わらずマイペースだねぇ、那羅ちゃんもう行っちゃったよ?」
階段の脇で悠長に声を掛けてきたのは真だった。
余裕が有り余っている様子の真はどこか皮肉気で、何となくうざったい。
那羅に、先に行くように仕向けたのは真のくせに。
あんな言い方をしたら、那羅が先走って行ってしまうことくらい予想できたはず。
それなのにあえてその言い方を選らんだということは、つまりそういうこと。
全く、真は性格が悪い。
そう思って真を睨んでいると、にっこりと笑い返されて若干引いた。
那羅が1人で勝手に行ってしまったにも関わらず、真は全く焦っていない。自分で仕向けたのだから当たり前かもしれないけど、あんな小さな子を1人で外に送り出したのに罪悪感は感じないのだろうか。マイペースなのはどっちなんだろう。
随分と機嫌がいいらしく、真は鼻歌交じりに携帯を取り出して多少の操作をしたあと携帯を耳に近づける。その仕草からすぐに誰かに電話をかけたことが分かった。
コール音を聞いているんだろうな、と思っている時間は無駄に長く、30秒ほど経ってようやく真が「あれ、繋がらない」と呟いた。一体誰に電話をかけたんだろう。
また少し操作をして、多分次は別の誰かに電話をかけた。今度はすぐに出てくれたらしい。
「空悟くん?いや、あのね、那羅ちゃんが突然飛び出して行っちゃってさ。・・・うん。でさ、僕たち高嶺高校に寄らずにそのまま直で犯人とこ行くから。・・・うん、うん、そう。じゃ、よろしくね」
携帯を仕舞い、私のほうに振り返る。何事もなかったような素振りが、見ていて痛々しい。
「じゃ、行こっか」
今から遊びに行くかのように軽く、私を誘う。
抗う理由もないし、どうするわけでもないのだからそのままついていくけど、どことなく距離を取ってしまう。
アウトロウの外は相変わらず治安が悪い。ここなら確かに治安維持機関が必要だと思い込ませることも簡単だろう。
治安が悪いものの、真と居れば大抵の安全は保障される。
事実、たくさんの声をかけられるがそれは罵倒やからかいではなく、真への挨拶。または謝礼、謝罪の言葉。
私たちアウトロウの名前は、千歳区ではかなり有名だ。そのトップに君臨する高嶺真の名前を知らない人はそうそういない。
「そういえば、こうして梨緒ちゃんと一緒に歩くのも久しぶりだねー。この頃ずっと真夜くんといるからさ」
ひとしきり真への一足が絶えた頃、真が私に話しかけてくる。
・・・けど、私は答える事が出来ない。
今の言葉が嫌味だと、分かっているから。
「どう?真夜くんといるのは楽しい?」
「・・・うん」
「へぇ、そっか。それはよかった」
微笑を浮かべるけど、絶対心では思っていない。
真は、アウトロウのみんなより壁を作る。
いつも飄々としていて掴みどころがなくて、嫌な言い方をして周りから疑われるように仕向ける。
そうやって、他人を自分へと踏み込ませないようにしている。
1人で勝手に動いて、何でもすぐに解決させてしまう。
ずるい。
でも、真にそうさせてしまっているのは他でもない、
・・・私。
だから、真夜に大切にされていいのか分からない。
私は大切な人を傷つけた。今も尚、その人は傷つき続けている。
このままの状態のまま、誰かに大切にされるなんて
間違っている。
「あ、梨緒ちゃん」
突然名前を呼ばれ、少し顔をあげる。
真が私のほうへ振り返り、大人びた表情を私に向けている。
「アイスのバニラ、好きだったよね」
そう言いながら指差した先には、少し前に真夜も買ってくれたあのアイスがあった。
私が何か言う前に、真は歩き出してしまう。
今は、急がなくていいのかな。
思ってはみるものの、声は出ない。
真の登場に店員さんもビックリしている。真夜のときは怯えていたのに。服装も、そう変わらないのにな。
人の対応というものは、凄く曖昧で第三者には分かりかねる。
でもきっと、真夜もいい人だからすぐに人から好かれるようになるんだろう。
・・・けど、私は。
空を見上げた。
青い空が広がるわけでもなく、雨が降っているわけでもない。時間的には夕焼けが見えてもおかしくないのに、分厚い雲に覆われていて望みは叶わない。
灰色の雲。不安を掻き立てる象徴。
真が買ってくれたアイスは、真夜が買ってくれたときより冷たい気がした。
***
目が、開いた感覚が、あった。
けれど相変わらず真っ暗な闇が広がるだけだった。
もう何度目か分からないけれど、これだけ回数を重ねれば大抵の人は状況が読み込める。きっと僕は今、暗いところに閉じ込められているんだ。そのうちまた意識を失ってしまうだろうから、今のうちに分かることだけでも分かっておきたい。
まず何がどうなってこんな状況になったか。暗い闇のことはもういい。思い出さなくていい。それより前。こうなる前、僕は一体どこにいた?
・・・そうだ。学校にみんなで行って、犯人の手がかりを捜してたんだ。
それで、突然誰かが後ろから・・・。
少しずつ記憶が呼び戻されていく。
頭が回ることで半ば強制的に身体が感覚を取り戻していく。
そうして最初に気付いたのは手に伝わる誰かの存在だった。暖かいのか冷たいのかあまりよく分からないけど、確かにそこに誰かいる。
僕と同じくらいの大きさだけど、僕より少し柔らかい。直接的に女の子だと思った。
この場に居る女の子なんて、被害者の誰かだろうか。不思議に不安はなかった。
縛られている様子はないため、動こうと思えば動けるだろうけど身体が言うことを聞いてくれない。
この子は、動けるのだろうか。
気になって、口を開く。
「っ・・・あ、・・・の・・・」
口は開けるけど、喉が使えない。声がかすれ、言葉が繋がらなかった。散々喚いてしまったのだろうか。