複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【いつのまにか参照200!ありがとですw】 ( No.33 )
- 日時: 2013/02/03 21:00
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
反射的に謝罪してしまった俺に、小さな頭は少し離れて俺の顔を見る。
女の子だった。目は珍しく青で、カラコンではないと見ただけで分かったので、ハーフかクォーターのどちらかなのだろう。
全体的に色素が薄く、体も細い。梨緒とは違う雰囲気の美少女だった。
「す、すいません、僕、ちょっと急いでて・・・って、あれ、どちら様ですか?」
・・・僕?
一人称に疑問を抱えながら、俺は今やっと常識人に会えた喜びを痛感する。
「えっと、矢吹真夜っす。梨緒と空悟の友達?みたいな感じ」
何故そこで、同姓であるはずの空悟ではなく梨緒の名前が最初に出たのかは分からない。もしかしたら一緒にいた時間が長かったからかもしれない。
「あ、篠原さんと葉隠さんのお友達でしたか。僕は社井狛って言います。お2人にはいつもお世話になっています」
やっと、普通に自己紹介してくれる人を見つけた。しかも挨拶まできちんとしていた。
薄いパーカーを羽織った社井は、愛想笑いを浮かべながら頭を下げてきた。少し人との付き合いが苦手なのか、ぎこちなさがあった。
絶対、俺みたいな奴とは関わらないようなタイプだった。おとなしくて、物静かで。クラスでは図書委員をやっていそうな奴だ。
「あのさ、初めて会ったばっかりで何なんだけど、今何時か聞いていい?あと、梨緒と空悟はどこにいるか分かるか?」
「今は大体8時過ぎくらいですよ。あと、篠原さんと葉隠さんは多分、高嶺さんのところにいると思います」
立て続けに質問してしまった俺に、社井は全然文句も言わず、答えてくれた。
「高嶺さん?」
「はい。アウトロウ・・・って分かるのかな。まぁ、このアウトロウっていうものの責任者・・・みたいな感じです。僕たちがここに住んでいられるのも、高嶺さんのおかげなんです。案内しましょうか?」
責任者、なんて丁度よかった。今日一晩だけでも泊めてもらえるように交渉してみよう。
俺の意図を察してくれたこいつにも感謝しないといけない。
そして俺は、さっきから胸に秘めていた疑問を口にする。
「お前さ、その・・・僕、って」
「あぁ・・・」
社井が少し困ったように顔をしかめる。複雑そうに視線を逸らしたあと、俺を真っ直ぐ見て申し訳なさそうにカミングアウト。
「よく間違えられるんですけど・・・僕は、正真正銘男なんです。ごめんなさい」
***
「ごめん、本当にごめん」
「いえ、もう慣れてるんで、そんなに気にしないでください」
まさか男を女と思うなんて・・・ショックだった。
俺に気を使って、大丈夫ですよ、と連呼してくれる社井と、階段を上って2階の廊下を歩いていた。
その「高嶺さん」の部屋は一番奥にあるそうで、少し長い距離を歩くことになった。そういう意味では、この建物はかなり広いのかもしれない。営業しているときは結構繁盛していたんではないだろうか。何故、潰れてしまったのかは知らないが、ここらの世界の事情は俺みたいなガキが知る由もない。
ちょくちょく個室らしきドアも見かける。かなりの数だ。
「それに、矢吹さんみたいに最初に聞いてきてくれる人はありがたいです」
「何で?」
「僕、女の子に間違えられて男の子に告白されること、何回かあるんですよね」
普通の顔で言う言葉じゃねぇだろ!と突っ込みたい気分だったが、本人からしてみれば、もう諦めていることなのかな、と自己解釈した。
でも、その告白した奴らにも同情する。好きな奴が男だったなんて笑えねぇ。
「こまにぃ」
「那羅ちゃん。どうかしましたか?」
不意に一室のドアが開き、そこから現れた小さな少女が社井に話しかけた。
妙に小さい女の子は、色もサイズも揃っていない服装に身を包んでいた。しかも、社井と同様の色素の薄い髪はかなり細く、所々絡まっているのが分かる。
こんな小さな女の子も住んでんのか。140も満たない身長からして、平均的に考えるのなら小学校3年生くらいだ。
高校生だけだと思っていたのに、意外な年齢の奴も出てきたものだ。
少女は小説を両手で抱えるようにして持っており、不安そうに社井を見つめる彼女はかなり可愛らしかった。
梨緒とは違う、可愛らしい美少女。どちらかというと、雰囲気は社井に似てるだろう・・・って、社井は男だったな。
「そのひと、だぁれ・・・?」
すぐに彼女が示しているのが俺だとわかる。確かに、小学生からしたら、この格好は刺激が強くて怖いと受け取られても仕方がない。
社井は彼女がいるところまで行き、しゃがみこみながら彼女の頭の上に手を乗せた。
「この人は、矢吹真夜っていう僕のお友達ですよ。大丈夫、怖がらないでください」
優しい微笑みを浮かべながらの言葉は説得力がある。絶対に俺には真似できない技だ。少女は安心したらしく、部屋からとことこと出てきて社井に抱きつく。
「どこにいくの?」
「今から高嶺さんのところに行くんです。那羅ちゃんも来ますか?」
社井の問いかけに、少女はこくりと頷いた。そのまま社井は俺のところへ戻ってきたため、彼女は未だ社井にしがみついたままだ。
「えーっと・・・」
怖がられた身としてはどうしていいか分からず、ただ言葉に詰まるだけだった。
そんな俺を察してくれたのか、社井が手を打ってくれた。こいつが気配りができる奴だ。
「ほら、那羅ちゃん。ご挨拶は?」
「・・・わたし、りづき・・・なら・・・」
「瑠璃の璃に月って書いて、璃月。那覇の那に羅生門の羅で、那羅ちゃんです」
随分難しい漢字を書くようだ。珍しい名前に俺は少し驚いてしまった。
相変わらず社井の後ろに隠れて怯えていることに、多少の罪悪感を感じた俺は、出来る限り優しく笑って手を差し伸べた。
「矢吹真夜だ、よろしくな」
少し戸惑ったような素振りを見せながら、彼女は震えている小さな手の人差し指を俺の掌に一瞬だけ触れさせ、熱いものに触ってしまったときの反射反応のように、すぐに手を引っ込める。
今のは握手と言えるのだろうか・・・?
「すいません、少し、男の人が怖いそうで」
「え、だって、社井は・・・」
「僕は、あまり男の子に見えないから、と」
「・・・すまん」
「いいえ」
喜んでいいことなのか、悲しんでいいことなのか分からない理由だった。
「あぁ、あと勘違いしないために言っておきますが、那羅ちゃんは僕の1つ年下ですから」
・・・はい?
「待て、お前何歳だ?」
「16です」
「はぁ!?」
大きな声をあげると、びく、と璃月が反応して、悪ぃ、と反射的に謝った。
こんな小さな女の子が15歳だと?小学生だと思っていた。
俺はいろんな意味で、彼女が15歳に見えなかった。肉体的にも、精神的にも。
だが、世の中にはいろんなことを抱えた人がいるわけで。多分、彼女もその1人なのだろう。
だったら、その理由を聞くべきではない。
「よろしく」
悩んだ末に出てきた言葉に、璃月は小さく「こちらこそ」と返してくれた。
多分、今はそれだけで充分。
と、和やかな空気が流れているとき、
ガシャンっ!!
という物凄い音が響いた。
はい、社井狛くんと璃月那羅ちゃんの登場ですw
こんな感じでいいですかね・・・?不安です。
今回、なんか、「り」が多くて、「梨」と「璃」と「理」の使い分けが変換でミスりそうになって、ドキドキしてますww
ミスってたら言ってくれww