複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【いつのまにか参照300!?めっちゃ嬉しいw】 ( No.38 )
- 日時: 2013/02/04 23:10
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
璃月は社井にしがみつく力を一層強め、社井もまた庇うようにして璃月の肩に手を置いた。
正直、同年代だと思うと少し複雑だが・・・今はそれ所ではない。
「何かあったんでしょうか」
「とにかく行ってみねぇと分かんねぇな」
多少の会話をしながら、俺と社井は走り出した。走りにくかったらしく、社井は途中で璃月を体から離し、その手を握っていた。
音がしたほうへ、ただ感覚だけで突っ走る。他人の家を走るのは少し気が引けたが、仕方が無い。
「まずいですね」
「どうした」
「この方向にある部屋は、もう高嶺さんの部屋しかないんです」
「はぁ!?それってまさか」
そうだ。今はその「高嶺さん」の部屋には梨緒と空悟がいるんだ。
確かにまずい。かなりまずい。あの音は絶対に何かが割れた音だ。誰も怪我していないといいが。
まぁ、俺にとっては知り合いは梨緒と空悟だけで、「高嶺さん」は知らないけれど。
「とにかく急ぎましょう」
足を速める社井に俺も続く。実際、俺はもう少し早く走れたが、道が分からないのだから仕方ない。
もう1回角を曲がると、正面に1枚のドアが現れた。さっき社井は、もうこの先にある部屋は高嶺さんの部屋しかないと言ったから、あれがきっと「高嶺さん」の部屋だ。
社井は後ろにいる俺を振り返ったあと、多少躊躇しながらドアを開ける。
ドアを開け、そこに広がっていた光景は、最悪のものだった。
椅子に座って溜息を吐いている見知らぬ男と、その男が座る机の傍にいる慌てた様子の空悟と、何故か割れている花瓶と、開かれた窓から舞い込んだ風に煽られるカーテン。
「高嶺さん、葉隠さん、大丈夫ですか!?一体、何があったんですっ!?」
慌てた様子で、社井は璃月の手を引きながら空悟に近寄る。
俺はどうしたらいいか分からず、とりあえず社井を追った。
「やぁ、狛くん。元気してたかい?心配かけて悪かったね、いや、ちょっと梨緒ちゃんと喧嘩しちゃってねぇ」
社井の問いかけに答えたのは、空悟ではなく椅子に座った男だった。
悠長な口調と朗らかな表情が特徴的の、青年だった。年は見た目だけで判断すると、20代前半ってところだろうか。とりあえず、俺よりは年上だ。
「篠原さんと喧嘩って・・・。え、あの篠原さんが?嘘・・・」
「いやぁ、僕も驚いたよ。彼女があんな感情的になるとはね。あーあ・・・この花瓶結構高かったんだけどな・・・」
「それで、篠原さんは?」
「梨緒ちゃんねぇ・・・その窓から出てっちゃったんだ」
「えぇ!?ここ2階ですよ!?」
「まぁ、いないみたいだから、怪我はしてないみたいだね」
社井とその青年の会話はかなり異常だったが、直訳するとこいつが梨緒と喧嘩して、梨緒が窓から失踪したということだ。
あの子にとったら2階から飛び降りるなんて普通だからね、と男は呟いているが、今の俺にとってはどうでもいい。
梨緒が、いなくなった。
それだけで、俺の行動理由は満たされた。
俺は、考えるより先に足が動き、部屋を後にしていた。
「おい、真夜!待て!!」
後ろから空悟の呼ぶ声がしたが、俺はそれくらいでは止まれない。
走っている最中に俺は、ただ梨緒のことだけを考えた。
自分の家に帰るのにも真逆の方向に歩いた奴だ。道を覚えているとは思えない。
俺のモノクロの世界に色を付け加えてくれた奴だ。
勝手にいなくなってんじゃねぇぞ。
社井との会話から、あの男が「高嶺さん」ということは分かった。
そいつと何を言い争ったのかは知らねぇが、あんな無感情無表情の奴が、花瓶を割るほど荒くなるなんて余程のことなんだろ?
いや、そうじゃない。別にそれはどうでもいい。
俺の、見える範囲にいてくれよ。
お前は、俺に色をつけてくれるんだろ?俺がキャンバスで、お前が筆なんだろ?
じゃあ、いなくなったら、
駄目だろうが。
***
「空悟くん、あれが梨緒ちゃんが言ってた矢吹真夜くんかい?」
「え?あ、はぁ、そうですけど。というか、すいません。俺も心配なんで、行ってきていいですか」
「うん、好きにしていいよ」
僕がそう言うと、呆然としていた空悟くんが、先ほど出て行った少年の後を追うようにして部屋を後にする。
「高嶺さん、篠原さんに何したんですか?」
「人聞き悪いなぁ。僕は何もしてないよ」
はっきり言えば、僕だって驚いている。あんなおとなしい子が、こんな風に怒るなんて思ってもみなかった。
「狛くん、悪いんだけどさ。みんなに、今日のご飯は少し遅くなるって、言っといてくれるかい?那羅ちゃんも、よろしくね」
「あ、はい、分かりした。行くよ、那羅ちゃん」
適当に狛くんと那羅ちゃんにお使いを頼み、部屋から出ていってもらう。
割れた花瓶から零れた水が、無造作に床を濡らしている。まだ咲いて間もない花が床でしおれていた。
全く。掃除するのは僕なのに。
僕は溜息をつきながら椅子に全体重をかける。
『矢吹真夜をアウトロウにして』
部屋に入ってきてすぐに梨緒ちゃんが口にした言葉を、僕は頭の中でリピートする。
『あの人は、私に必要だわ』
あんな無感情な子が他人を求めるなんて、本当に口が開く程驚いた。
空耳かと思った。
それと同時に、その矢吹真夜という子に興味が沸いた。
梨緒ちゃんとは知り合ってからもうそろそろ2年になるけれど、彼女のあんな姿は初めて見た。
つまり、矢吹真夜が梨緒ちゃんを変えたということだ。
あんな環境に見舞われて歪んでしまった彼女をも変えてしまうということは、彼は何か特別のものを持っているのだろう。
だったら、もしかしたら、彼は梨緒ちゃんだけではなく、他の子も変えてくれるのではないだろうか。
しかも、無感情の子が人を求める感情を抱くという変化は、いい変化である。
もしこの憶測が正しいのであれば、アウトロウには矢吹真夜が必要だ。
僕は少し考えたあと、PCを立ち上げて、携帯を取り出し電話をかける。
「もしもし・・・僕だ。あぁ、頼みがある」
矢吹真夜は、僕が求めていた人材なのかもしれない。
今は梨緒ちゃんのことも心配だが、とりあえず2人に任せておくことにしよう。
それに、梨緒ちゃんの失踪は、本当に矢吹真夜が篠原梨緒に必要かどうかを見極めるいい機会かもしれない。
「矢吹真夜、という少年について調べてくれ」
あの子は放浪癖があるくせに街の道を全く覚えていないぞ?
さぁ、見つけられるかな。
はい。よく分からない高嶺真登場ですw
真夜と梨緒のときのように説明したいと思うのですが、字数が足りない気がするので、再度レスを建て直します、はい。
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