複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【いつのまにか参照300!?めっちゃ嬉しいw】 ( No.43 )
日時: 2013/04/03 00:34
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

***

 雨が、冷たい。

 さっきの真夜も、こんな感覚だったのかしら。

 また降ってるなんて思わなかったから、傘なんて持ってきてない。

 私も、昔はよく、さっきの真夜みたいに道の途中で立ち止まって雨に濡れてた。

 穢れた私を洗い流してくれる雨が好きだった。雨の冷たさを感じることで、私はまだ生きていると思いたかった。

 でも、雨がくれるのはただの冷たさとべたつきしかなくて。洗い流して欲しいところは、全く流してくれなかった。

 結局、積み重なるだけだった。

 だからさっき真夜を見つけたとき、昔の私みたいで放っておけなかったんだ。

 雨は透明だから、色を洗い流してくれない。元の色は落ちない。私の汚れはもう一生消えない。

 でも、透明な雨は色を1回リセットしてくれる。透明なカバーを敷いて、再度色を重ねることを許してくれる。

 私もまだ、カバーを敷いただけで色はついていない。

 そんな私が、おこがましいことにあの子に色づけたいなんて思ってしまったの。

 昔の私と同じ顔をした真夜に。昔の私が一番してほしかったことを、してあげたかった。

 だから、手を差し出した。雨の冷たさを防いであげた。

 真夜が、私の手を握ってくれたとき、私は考えた。

 もし染まるのなら、この子と同じ色に染まりたい。

 あの時は、まだ真夜の名前を知らなかったけど、それでも、もしも昔の私の色を塗り替えるのなら、この子と同じ色がいいと思った。

 何色に染まるかはまだ決まっていないけど、それはこの子に決めてもらおうと思った。

 私にとってあの子は筆で、あの子にとって私は筆になりたかった。

 だから、一緒にいたかった。

 でも、許しくれなかった。

 真に許されないのなら、もう真夜はアウトロウにはいられない。

 なのに何故か、釈然としなかった。

 嫌だ。

 そう感じてならない。

 私は今までずっと、全部を受け入れてきた。悲しみも、苦しみも、全て。

 今回も、「こういうものなんだ」「仕方ない」と受け入れてしまえばいいのに。

 分かっているのに。分かっているはずなのに。

 何で、苛々するのだろう。

 真夜は、離したくない。真夜だけは、諦めたくない。

 そう思えてならなかった。

 人の弱みを平気で突いてくるのは、真の悪い癖だと思う。だけど、この苛々は、きっとそれだけが理由ではない。

 真夜と離れてしまうことが、何より嫌だった。

 あの子は、私のキャンパスで、筆だ。

 私が色をつける子で、私に色をつける子だ。

 勝手に、奪わないでよ。

 そこまで制限されるつもりなんてない。

 気付いたら、花瓶を割って、窓を開けて、飛び降りて、駆け出していた。

 雨が降っていた。雨は好きだった。

 今欲しいのは、雨じゃないけれど、好きなものは仕方が無い。

 私は、この雨を見たくて、ここらで一番高いところへ向かった。

 一番、階数が多い、廃ビルだった。

***

 俺は走っていた。

 今度はがむしゃらではなく、ちゃんと目的地に。

 空悟が教えてくれた高い場所、は案外ここから近いところにあった。しかも、高い場所なら道なんて知らなくても分かる。

 とりあえず俺は、そこに向かって一直線に走った。

 足の速さは空悟より俺のほうが上らしく、空悟は息を切らして俺の後を走っている。俺は息1つ乱していないため、持久力の有無は一目瞭然だった。

 少しペースを落とすか、と思って速度を下げると、突然のことに驚いた空悟がバランスを崩し通行人にぶつかる。

 ・・・まずいことになった。

「あ、ごめんなさ「痛ぇな、兄ちゃん」

 ここは、治安が悪い。なら、当然ここにいる人だってロクな奴じゃない。

「テメェ、アウトロウに住んでるガキじゃねぇか。ガキがこんな時間に何やってんだよ、あァ?」

 年齢的にはそんなに変わらねぇだろうが、と思ったが、俺と空悟の間には距離があったため、俺は連れだとは思われていないようだ。

 1人で囲まれている空悟は、いかにもこういうものに免疫がないらしく、「え、あ、えっと・・・」と口ごもっている。

 ああいう奴らにとって、そういうのは逆効果だということを知っている。

「なめてんのか、お前?ふざけてんじゃねぇぞ!!」

 怒鳴られて、空悟の肩がびくり、と震え、かたかたと震えだす。

 あぁ・・・こんなことしてる暇ないのに。

 それでも足が回れ右してしまうのは、・・・やっぱり俺はお人よしなんだろうな。

 何を今更言ってるんだって話か。そうだよな、名前も知らない女に、アイス奢ってやるくらいだからな。

 友達助けるなんて、別にどうってことでもねぇか。

 俺は、空悟を囲む奴らの中に割って入り、空悟を守るようにして前に立った。

「真夜・・・」

 すがるような声で名前を呼ばれても、俺は聞こえないフリをした。

 いや、聞こえてたとしても、恥ずかしかった。

「何だ、テメェは?こいつのダチか?」

「あぁ、そうだ」

「こいつの代わりに俺が殴られるってわけか。いい度胸してんじゃねぇかよ、褒めてやるよ!」

「テメェに褒められても嬉しくねぇんだよ」

 俺の一言で、不良たちは一気に機嫌が悪くなる。後ろで空悟が心配しているのが分かった。

 だが、俺は久しぶりの喧嘩に、高ぶっていた。

「俺らさ、テメェらの遊びに付き合ってられるほど、暇じゃねぇんだわ」

「んだと!?」

 殴りかかってきた奴を拳を軽く交わし、空悟に当たる前に背中にひじうちを食らわす。

「かはっ・・・」

 酸素を吐き出された奴は、咳き込みながら地面へと倒れこんだ。

 下がってろ、と空悟に告げてから、俺は残りの2人に突っ込んでいく。

 喧嘩の体の動きなんて、説明しようがないからあまり何も言わない。喧嘩というものは人間の本能の動きだ。危険を察知し回避して、その危険を排除するための攻撃を繰り出す。ただ、それだけの繰り返し。

 久々の感覚を呼び起こしながら、俺は半分楽しみながら3対1の喧嘩をしていた。












 明日明後日はちょっと用事があってPCが使えないので、更新が遅れます、すいません