複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【いつのまにか参照400!?めっちゃ嬉しいw】 ( No.50 )
日時: 2013/02/13 23:58
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 空悟たちに声をかける奴らも、梨緒のことは認識しているらしく軽く会釈はするものの、それ以上の会話はしない。

 度々俺のことを尋ねられて、適当に自己紹介をする場面もあった。大抵、いい奴の周りにはいい奴が集まるわけで、俺ともすぐに仲良くなってくれた。

 俺も今まで不良じゃなかったとは言えない生活をしていたが、周りが全員不良という環境に陥ったことはない。だから、少し慣れない場にドキドキしていたのは事実。

 でも、ここなら上手くやっていけそうだ、と思えるのは、やはり友達の存在の有無か。

 そうこうしている間に、俺たち4人はアウトロウへと帰ってきた。

 ここにあること自体は全く違和感がないが、ここに高校生が住んでいると思うとかなり違和感がある、クラブ廃墟。

 どうせ、ここにも慣れていくんだろうな・・・と思いつつ、先頭を歩いていた理人がドアを開けて待ってくれたので、空悟以下3人はとりあえず遠慮がちに中に入る。

「ただいま」

 と、空悟が言って、

「俺らが最後かな?」

 と、理人が続く。

 ・・・まぁ、確かにあいつらにとってはここが家ということは当然なんだろうけど、今さっきここに住むことが決まった俺にとっては全く親近感がない。

 濡れてる服で入っていいのかな、と考えていたが、空悟がそのまま入っていったのを思い出し、少し躊躇いながらもそのまま玄関をあがる。

 梨緒を少し待ってから、案内のもと俺はリビングらしき部屋へと行かされた。1階の広間みたいなところだ。

 先ほどはなかった机と椅子が出してあり、そこには見知った顔が並んでいた。

「ちょっと。何であんたまでここにいるのよ」

 部屋に入った直前に睨んできたのは、確か杵島灯だ。

「矢吹さん、おかえりなさい」

 優しく挨拶してくれたのは、考えることもなく社井だろう。隣には璃月が俺のことを不安げに見つめていた。

「随分遅かったね。あぁ、理人くんと会ったのか」

 溜息をつきながら俺を手招きしたのは高嶺だ。

 そのあと、空悟と理人が自分の席らしい空いていた席に座る。

 机は長方形で大きさは充分だった。上には人数分に同じ食事が並んでいて、かなりおいしそうに見える。

 椅子は片側に4つずつ並んでいるのと、俺から一番近いところに置かれた椅子が1つ。ある意味どこかの合コンのようにも見える。人数は9人だ。

 向かって右側奥手から空席、理人、空悟、高嶺。左側奥手から杵島、璃月、社井、梨緒の順で並んでいる。

「真夜はここ」

 と、梨緒に指名されたのは、一番手前の椅子だ。つまり、理人の隣ではない空席に座れと。

 理由は明快だった。その席は、隣が梨緒と高嶺だ。要するに、梨緒は俺の隣を望んでくれたのだろう。

 そう思うと、嬉しかった。

 と、しているのも束の間、いきなり視界の隅からフォークが飛んできた。机の上に置いてあった金属のフォークだ。

 みんなが驚いて声をあげようと口を開けたのと同時に俺も気付き、手だけを動かして人差し指と中指の間に挟んで止める。

 俺の目の前で止められたフォークは真っ直ぐ俺の目を狙った軌道にあり、あと5cm遅かったら眼球を抉っていただろう。

 ぶっちゃけ、ちょっと怖かった。さっき空悟に絡んだ奴らと喧嘩してたおかげで、眠ってた反射神経と動体視力が起きていてよかった。

「真夜っ、大丈夫か!?」

「怪我は!?あたってないっ?」

 空悟、理人、社井が俺を心配そうに見てくれる。梨緒と璃月は何が起こったのか分かっていないらしく、ただあわあわしているだけだった。高嶺はヒュー、と口笛を鳴らしてひやかしている。とことんムカつく奴だ。

 体の体勢からして、フォークを投げてきたのは杵島だ。何だ、殺す気か。恨まれてるのか、俺・・・。

「・・・ちっ」

 俺がフォークを止めたことを見て、杵島は小さく舌打ちした。

 何なんだ、こいつ・・・。

「危ねぇな、何だよ」

「別に。それより何であんたがここにいるの?家に帰って」

「おい、人によっては死ぬかもしれない行為をした奴の態度がそれか?」

「文句ある?別に私、あなたがいなくなっても困らな「いい加減にしろっ!」

 俺の代わりに声をあげたのは、空悟だ。

 怒鳴ると同時に机をばんっ!と勢いよく叩いたため、机の上にあったコップの中の水が零れそうになる。

「人に言っていいことの判断ができないのか?」

「知らないわ。だって関係ないもの」

「ふざけるなよ!真夜に謝れ!」

「そっちこそふざけないで。ここにいるべき人ではない人が混ざっているんだから、当然だわ」

「理由も聞かずにいきなりフォーク投げるなんて非常識だろっ!」

 2人は言い争いを始めてしまった。周りの奴らは、みんな呆れたように溜息を吐いていた。

 俺は別に、フォークを投げられたことに対しては何も感じていない。こういう奴なんだ、と思っただけ。

 こいつにどう思われようがどうでもいい。それこそ、俺には関係ない。だから、杵島が言っていることは、間違っていない。

 ちょっとした絡みのつもりだったのに、空悟の癪に触るようなことを杵島が言ってしまったらしい。

 食事はできているのに食べないのは、多分人が揃っていないからだろう。理人の隣の席は空いたままだ。

 相変わらず、2人の言い争いは未だ続いている。

 流石にその発端が俺なだけあって、ちょっとした罪悪感を感じてしまう。

「・・・悪ぃな。何か俺のせいで」

 俺はとりあえず、梨緒や社井に聞こえるような声で謝った。

「あぁ、別に気にすることではないですよ。いつものことですから」

 すぐに返事を返してくれた社井の言葉に俺は複雑な気分で納得する。

 こんな喧嘩がいつもって・・・おい、あんまいいことじゃねぇぞ。

 でも、俺には何も言えない。俺にとっては口喧嘩なんてまだいいほうだ。

 俺や、俺の周りにいた奴らは絶対言葉より先に体が動く。気が付いたら殴っている、そんな感覚だ。

 言っても信じないだろうが、俺は平和主義者で。できるだけ暴力沙汰は避けたつもりだったが、周りはそれを許してくれなかった。

 昼に外ほっつき歩いてれば、何でか路地裏に連れて行かれた。殴られそうになったから正当防衛として反撃した。そしたら次々に拳が飛んできた。

 そして俺は、こういうもんなんだ、と諦めた。

 出来る限り、変な時間帯に歩き回るのは避けたかったが、あの頃の俺にはそれは無理だ。ならば、受け入れるしかない。

 そうやって俺は、馬鹿な奴らの相手をしているうちに喧嘩を学んでいったんだ。

 平和主義者の俺にとって喧嘩は苦でしかなくて。

 何度、言葉だけで解決できたら、と望んだことか。

 だからある意味、これは俺が止めるようなものでもない。

 もうすぐ9時を迎えるというのに・・・みんな、腹は空かないんだろうか。まぁ、俺は全然平気だから、同じようなもんなんだろう。

 ふと、玄関のほうから音が聞こえた。ドアを開けて鍵を閉める音だ。

 誰が来たのだろう。いや、俺の知り合いのわけがないんだけど。

 リビングのドアが開く。

 そこに現れたのは、無駄に体がしっかりとしている男だった。

 得に上半身の筋肉が異常なほどに発達している。手入れなど皆無に見えるぼさぼさの髪は、全部後ろで1つに結んでいるようだ。

 年齢は40前後と行ったところか。どこかの熱血体育教師でもやっていそうだ。

「よぉ、おめぇら、何やってんだぁ?」

 昔ながらのクセのある口調に、俺は少し驚いてしまう。

























コメくださいな