複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【番外編作成中w】 ( No.72 )
- 日時: 2013/04/03 22:06
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
<番外編PART1 真夜と梨緒のお買い物>
「ごめん、矢吹さん。那羅ちゃんの新しい本を買ってきてくれませんか?何でもいいので」
「悪い、真夜。シャンプー切らしちまったんだけど・・・な?」
「矢吹!タバコ買ってきてくれ!お前なら18に見えんだろ!」
「何?買い物行くの?なら、洗剤買ってきなさいよ。私、明日洗濯の当番なの」
・・・何故、こんなにも理不尽にお使いを頼まれなければならないのか俺には理解できない。
確かに今俺は暇で、みんなは何かと用事はある。だが、それがどうした。杵島に当たっては、当番の仕事を人に任せているようなもんではないのか。そもそも法律を犯しているのさえあるぞ。大人としてそれはいいのか?
アウトロウに来て、俺は1つ分かったことがある。多分俺は相当のお人よしだ。最初は嫌がっていたものの、お金を渡されるとつい外へ出てしまう。
自然と長く深い溜息が零れた。
「真夜」
と、その時、後ろから俺を呼び止める声があった。俺は何も言わずに振り向き、相手を確認する。
フードを被ったどこか大人っぽい美少女さん。そういえば、こいつは家の中以外ではいつもフードを被っているようだが、学校ではどうしているのだろうか。というか何故被っているのだろうか。まぁ、今は関係ないことだ。今度聞いてみることにしよう。
「私も行くわ」
無表情で小さく呟いた篠原梨緒は、玄関の階段を淡々と下りてくる。こうなったらこいつはもう言うことを聞かない。
「仕方ねぇ奴だな。離れんなよ?」
梨緒は極度の方向音痴だ。その上道を覚える努力をしない。目を離したらどこにいくか分からない。
でも、普段梨緒は自分から外へは出ない。俺が外出するのを追ってくるのも珍しいことだ。
「何で来たんだ?」
俺のとこまで歩いてきて立ち止まった梨緒に聞いてみる。身長の関係で俺を見上げるように見る梨緒に少なからず鼓動が早くなる。
「理人が、私が行ったら真夜が喜ぶって」
あいつ・・・女タラシめ。余計な真似しやがって。
理人は最初の印象通り、かなり女と仲がよかった。そのためか、妙なところで鋭いところがある。
大方間違ってもいないから反論もできないし・・・。
「・・・嫌だった?」
何も言わない俺を心配したらしく、梨緒が俺の顔を覗き込んでくる。
あー・・・もうどうすりゃいいんだよ、馬鹿。
「別に嫌じゃねぇよ」
発された声は予想以上に小さくて梨緒に聞こえたか分からない。でも、その答えを聞いている余裕もない。
「ほら、早く行くぞ」
「うん」
返事をしたということは、それなりに機嫌を直したということだ。つまり・・・。
・・・恥ずいな、全く。
羞恥心から逃れるように早く歩き出す俺に、梨緒はひょこひょことついてくる。
猫に懐かれるのってこんな気分なのかな・・・とか思いながら、俺は序所に梨緒の歩くペースに合わせながら、目的地を目指す。
本とシャンプーとタバコと洗剤だったはず。タバコはそこらの自販機で榊の使っているものを買えばいい。
ちなみに、シャンプーと洗剤については、アウトロウの全員共通のものなので、真の金で買うことになる。他の個人的なものについては、あとで本人たちに請求しよう。レシートを取っておかなくては。
すれ違っていく人は毎度のことながら治安の悪い奴らばかりだ。そこそこ街へ近づけば普通になるのだが、アウトロウの近くはどうも治安が悪い。
真が俺に大まかにアウトロウを説明したとき、この街はアウトロウのテリトリーだと言っていた。治安維持機関とか難しい言葉を言っていたが、俺にはまだピンとこない。
まだアウトロウに入って間もないことも理由だろうが、アウトロウはただ高校生がシェアしてるようにしか見えない。家事は全て当番制で、そこらの寮と何の違いもない。
一体どこが治安維持機関なのか、俺には見当もできない。梨緒は知っているのだろうか。聞いたところで答えてくれるだろうか。・・・いや、また変な比喩が返ってくるだけで、やっぱり俺には理解できないんだろう。
なら分かる日が来るまで待とうと思う。
だんだんネオン街を抜けて、商店街へと近づいてきた。比較的治安がいいところだ。
ここに来て変な奴に絡まれる心配は無くなるが、1つ問題が浮上する。
それは視線。
相変わらず俺は耳に無数のピアスをつけ、黒を基調とした軽い服装をしている。平和な奴らが嫌うタイプだ。そんな奴の隣にフードを被った女が歩いているとしたら、おかしすぎる。周りの視線が、少し痛い。
梨緒はそんなこと考えていないらしく、淡々と俺の隣を歩くのだが目立つことが好きじゃない俺は、どうしたらいいのか分からない。この様子だと、学校も不安が残るな。
俺らが目指しているのはどこにでもあるようなデパートだ。百貨店にいけば洗剤とシャンプーは置いてあるだろうし、当然本屋もあるだろう。タバコの自販機も外にあるかもしれない。
一気に済ませるのなら、それ以外にいい手段はない。
「真夜」
ふと小さな声で呼ばれ、俺は声の方向へ視線を向ける。
無表情で俺を見つける梨緒の顔があった。
「何?」
「ピアス、自分で開けたの?」
突然の質問だった。正直驚いたのも確かだ。
俺は右の耳に2つ、左の耳に3つの計5個のピアスを開けている。大小形それぞれのピアスは、全部銀で統一されていた。
初めてピアスを開けたのは、小学校6年生の頃だ。自分でも早いとは思う。でも過去には戻れないのだから最早仕方のないことだ。
当然、周りは俺を軽蔑したし、成績もよかったので教師たちには酷く心配された。でも、どれも当時の俺には響かなかった。
ピアスは1度つけると取れないタイプのものであり、もう俺のピアスは外すことができない。だから、風呂に入るときも寝るときも、これは外さない。
「・・・あぁ、そうだよ」
そうだ。このピアスは全て自分で開けた。自分で開けたんだ。今更後悔してもしょうがない。
「痛くなかった?」
「まぁ・・・開けるときは痛かったよ。開けてすぐの2日くらいも痛かったな」
自分の体に穴を開けるのだ。痛くないわけがないだろうに。
でも、こんな純粋な梨緒には、分からないのかもしれない。ピアスなんて無縁の話だっただろうし。
「じゃあ、何で開けたの?」
何故。
そう聞かれると答えられなかった。
確かにピアスに興味を開けていない人からしたら、ピアスを開けるという行為は不思議でたまらないのだろう。わざわざ痛いことを、何故自分からするのか。
大抵の人はお洒落で着用するのかもしれない。だが、そういう人は取り外し可能なタイプを使うはずだ。でなかったら意味がない。だとしたら俺は当てはまらない。俺は外せないのだから。
理由は分かってる。このピアスの意味も心当たりがある。
だけど、それは、安易に口に出していいことではない。
まだ言うべきではない。
「さぁ。・・・気分かな」
だからまだ言えない、言ってはならない。適当にはぐらかすべきだ。
「真夜も気まぐれなのね。一緒だわ」
俺の言ったことを疑うこともせずに信用してくれる梨緒に嘘をつく罪悪感を感じる。
番外編STARTです!w こんなんで大丈夫でしょうか・・・?