複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.76 )
日時: 2013/03/03 12:41
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 でもそれを表に出したら水の泡だ。話題を切り替えるのが一番いいだろう。

 そう思った俺は、ポケットに突っ込んでいた左手を梨緒の頭の上に乗せた。

「そういうお前はどうなんだ?このフード。何でいつも被ってんの?」

 前から聞きたかったことだ。こんなところで役に立つとは思わなかったが。

「私のシェルターなの」

 またこいつは変な比喩表現を・・・。

 シェルターということは、フードによって守られているということだろう。・・・何から?

 でも、梨緒がそれしか言わないということは、それ以上は言いたくないということだ。俺がそうのように。

 俺のピアスと一緒で、何か理由があるのかもしれない。言いたくないというのなら言わせないほうがいい。

「でも、もうすぐ夏だぞ?暑くねぇのかよ」

「いい日陰になるわ」

「お前の肌の白さはそこか・・・」

 苦笑しつつ、そうやって俺は梨緒と会話を進めていく。相変わらず天真爛漫というか適当というか何を考えているのか分からない言動の梨緒に翻弄されながらも、楽しいのでいいかとか思ってしまう。

 そうこうしている間に、デパートにも到着した。

 休日ということもあって、多くの人が溢れている。この中に入るとしたら、恋人同士に見られるだろうか。どうでもいいことだが。

 この頃気付いたことだが、梨緒はどうやら人混みが苦手らしい。人が多いところでは、いつも俺の後ろに隠れて服の裾を掴む。何というかそういう子供っぽい仕草が多い梨緒に動揺しているなんて口が裂けても言えない。

 出入り口の脇にタバコの自販機を見つけた。これで1つはOKだ。でも、今買ってしまうとずっと持ち歩くことになってしまう。一応俺は16歳だし、面倒なことは避けるべきだ。タバコは最後に買おう。幸い、その自販機はタッチパネルで18歳以上に触れればいい仕組みになっていた。今時珍しいと思う。

 とりあえず、シャンプーと洗剤を買うために百貨店に向かう。

 ここらは俺がよく歩き回ってたところだし、場所は大体把握してい
る。俺は迷うことなく足を向けた。

 後ろで梨緒がちょろちょろと周りを見ているのが分かった。普段外に
出ない奴だ、いろんなものがあって珍しいのだろう。

「いらっしゃいませー」

 と、店員は客の見た目関係なく挨拶してくる。そういう無機質さはある意味で腹が立つ。

 とりあえず俺は百貨店でアウトロウで使われている種類のシャンプーと洗剤を見つけて、レジへと持っていった。

 お金を出して釣りを貰い、品物を受け取って店を出る。何で16にもなってお使いなんてしないといけないのか。

 店を出たとき、梨緒が俺の服の裾を2回引っ張った。

「どうした?」

「お手洗い行きたいわ」

「・・・いや、それ俺が駄目って言ったら行かねぇのか?」

「変態ね」

「行ってこいよ、そこにあるからっ!!」

 同学年の異性に向かって何の許可を取っているんだ、と俺は内心で突っ込むがどうせ梨緒には通用しない。

 丁度よく近くにあったし、梨緒も迷うことなく行けるだろう。いくら方向音痴でも、目と鼻の先にある目的地から離れることはしない。

 俺は思わぬ不意打ちに、溜息をつき少し離れたところにあった椅子に座った。大丈夫、梨緒が出てきたらこっちから行けばいいだけの話だ。

 ・・・と思っていたのに。

「・・・遅ぇ」

 かれこれ20分経ってしまった。いくら男子より女子のほうが遅いにしても、20分は長すぎる。

 何でだ?見た目並んでいるわけでもなさそうだったのに。中では並んでいたのか?いや、梨緒が入ってから出てきたのは小さい女の子と同い年くらいの姉妹だけだった。もっと多くいていいはずだ。

 さすがに20分以上経つと心配になってくる。何だ、俺が目を離した隙にどこかに行ってしまったのか?

 とりあえず、女子トイレに入るわけにも行かず、梨緒の携帯の番号にかけてみる。

プルルルル プルルルル かちゃっ

「もしもし、梨緒?お前何して「現在この電話は電池が切れているか、電波の届かないところにいるため————」

 ・・・。

 携帯の充電くらい自分でできないのか、あの女子高校生は!?

 嘘だろ・・・と思いながら、とりあえずトイレの中にいるのかだけ確かめたい。もし違うところにいるのなら、即刻探さないとやばい。もしかしたら俺が帰ったと思って外に出る可能性だってある。そしたら捜索範囲が街全体になってしまう。

 何で、たった4つの買い物でこんなに時間かけなきゃいけねぇんだよ・・・。

***

「・・・どうしたの?」

 困った。どうしよう。

 私は真夜に言われたとおり、トイレを早く済まして戻ろうとした。

 だけど、私の目の前では女の子が1人で泣いている。

 本当は人助けなんてする柄じゃないし、放っておきたかった。でも、トイレを出る道の真ん中にいられては、さすがに迷惑だ。

「おかあさんが、どこかに行っちゃったの・・・・」

 迷子か。多分5歳程度だろうから仕方が無い。

 とりあえず真夜と合流しないと・・・。

「じゃあ行こう」

「えっ!?」

 私は女の子の手を引いてトイレを出た。

 ・・・あれ。真夜がいない、どこにいるんだろう。

 あっちかな。

 直感で歩き始めた方向が、真夜がいない方向だとは、夢にも思わなかった。