複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.79 )
- 日時: 2013/04/04 00:19
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
<番外編PART2 那羅の風邪>
「那羅ちゃん、大丈夫ですか・・・?」
こまにぃが心配してくれた。
でも、ならは今声が出ない。
頭が痛い。体が熱い。ぼーっとする。
昨日の水遊びがだめだったのかな。こまにぃに止められたときに、素直にやめればよかった。
いわゆる風邪というものを引いたならは、お部屋のベッドに寝かされていてすぐ隣にはこまにぃが付き添ってくれてる。今日はみんなでおでかけのはずだったのに、ならのせいでこまにぃはお留守番係りになっちゃった。
こまにぃに謝ったら、優しく撫でて気にしないでくださいって言ってくれた。
すぐに分かることだけど、こまにぃは優しい。凄く優しい。怖いほど優しい。
綺麗な金色の髪に、みんなとは違う青い目。確か、こまにぃのお母さんが大層綺麗な外人だったらしくて、こまにぃはその容姿を遺伝子から受け継いでいた。
最初見たときは、女の子だと思った。ならは男の子が嫌いだったから、何の疑いもなく近づいていたけど、知ったときはちょっと戸惑った。
でも、もうその頃にはこまにぃのすべすべした白い肌が大好きになってて、今更離れることなんてできなかった。
こまにぃもそんなならのわがままを快く受け入れてくれて、今まで通り接してくれている。
今みたいによく迷惑かけてるけど、こまにぃはすぐにならのことを考えてくれる。
ならは、こまにぃのことが大好きだ。
今、ならの熱は38、7度らしくて、心配性のこまにぃは額のタオルを冷たくしてくれたり、汗を拭いてくれたりって、凄く気にかけてくれる。
もう午前の11時。朝の7時から看病してくれてるから、もう4時間になる。お薬がなくて買い物に行ってたときもあったし、ならが寝てるときもあったけど、こまにぃは本を読んだりして暇を潰しながらずっとならの傍にいてくれていた。
「何かあったら言ってくださいね」
そう言って微笑んでくれたこまにぃは、ならの絡まった髪をなでてくれた。
なでられるのは好き。特に相手がこまにぃならもっと好き。
昔、本当にならが小さい頃、こまにぃみたいな白くて細い手で誰かがならをなでてくれた。
誰だかはよく覚えていないけど、でも、その感触は覚えてる。ふわふわしてて、優しくて、・・・なのにどこか切なくて。
「・・・こまにぃ」
「はい、何ですか?」
呼んですぐに応えてくれたこまにぃのほうを見つめながら、ならは口を開いた。
「なにか、おはなしして」
喉の痛みであまり声は出なかったけど、こまにぃは聞き取れたみたい。
「お話、ですか?」
ならは前から、こまにぃのお話が好きだった。
面白いのも楽しいのも悲しいのも切ないのも全部、こまにぃがしてくれるお話は興味がある。
多分ならは人より本が好き。ひまさえあれば、ならは本を開いている。学校の図書室や町の図書館の本を全冊読破するのなんて、1週間ほど放置してくれればいくらでもできた。
本は世界だ。ならは本を読むことで、いろいろな世界を、いろいろな人の思考を、見ることができる。
その間は、本当の世界のことは忘れてられるから。
現実逃避と罵られても、構わない。そんなのもうとっくに分かってる。
でも、やめる気はないし、そもそもいけないことだとも思わない。
ならが興味を引いたのは、今までずっと本だった。けど、こまにぃの話は、ならの知らないものばっかりで、本と同じような感動があった。
だからこまにぃの話は好き。
聞いてて、落ち着く。
「うん。いまはねたくないの」
午前中はずっと寝てた。今から寝ちゃったら、夜に寝れなくなって夜中にこまにぃを起こす羽目になってしまう。
こういうときは、こまにぃのお話がいちばん。
「んー・・・そうですね・・・」
ならは前からこうやってこまにぃにお話をせがむから、こまにぃはいつも話題に探すのに必死だった。いっぱい本を読んでるならが知らないような話しを探すのは、難しいってこないだ言ってた気がする。
今アウトロウにはならとこまにぃと、あかりちゃんしかいない。しんとさかきさんはお仕事に行って、他のみんなはどこかに遊びに行っちゃった。
風邪を引いたならは当然お留守番で、こまにぃは付き添いとして残ってくれた。あかりちゃんは元々みんなと遊びに行く気がなかったらしい。あかりちゃんはならより浮いてる存在だって、こまにぃが小さく教えてくれた。
「那羅ちゃんは、スノードロップという花を知ってますか?」
「うん。しろいはなだよ」
国語辞典にも植物図鑑にも載ってる植物。ヒガンバナ科ガランサス属、別名は待雪草。自然の森とかに咲いてるから、実際に見たことはない。
白い色と雫の形の小さな可愛らしい花を咲かすのは2月〜3月の冬の終わり頃。桜より早く、冬の終わりを教えてくれる花だと認識している。
「じゃあ、スノードロップ伝説、は、知っていますか?」
「でんせつ?」
問い返したことによって、ならが知らないと判断したらしいこまにぃは話題が決まってほっとしたようだ。事実、ならは「スノードロップ伝説」を知らない。
「スノードロップにはいろいろ伝説があるんですけどね、その中でも僕が一番好きなのは“天地創造神話”です」
天地創造神話とは、人類・地球・生命及び宇宙の起源を説明した物語のこと。科学的調査、形而上学的思索、宗教的思念といったあらゆる出発点から始まっており、それぞれの考え方のばらつきはかなり大きい(Wikipedia参照)。
それが、スノードロップみたいな小さな花と、何の関係があるのかさっぱり分からない。
「昔、世界が生まれたばかりのとき、冷たい雪は神様に嫌われていて色をもらえなかったんです。それでも、透明だった雪は神様に『私にも色をください』と頼みました。神様はそんな雪に意地悪を言って『ならば色をたくさん持っている花に色を貰いなさい』と命じたのです。冷たい雪が周りから嫌われているのは一目瞭然だったんですけどね」
可哀相だと、思った。
昔の神様は何でそんなに意地悪だったんだろう。・・・今もかもしれないけれど。
「神様の予想通り、嫌われ者の雪に色を分けてくれる花はいませんでした。雪が諦めかけたそのとき、『私の白い色でいいのなら』と声をかけてきた花がいて、その花こそがスノードロップです。雪は色を貰えたことに喜び、スノードロップに寄り添うようになった。他の草花の上には降り積もる雪でも、スノードロップの上にだけは降り積もらないようになったんです」
ただ、スノードロップの花が小さくて雪が積もらないだけだと思っていたけれど、そんなロマンチックな話があったとは夢にも思わなかった。
「やさしいね」
心からそう思った。
周りから嫌われていた雪に手を差し伸べたスノードロップは一体どんな気持ちだったんだろう。やっと自分を認めてもらった雪は、どんな気持ちだったんだろう。
やっぱりこまにぃの話には一瞬で入れる。傍観者にしかなれない自分に腹がたつ。
更新遅れて申し訳ございませんでした!!
那羅の風邪は少し難しくて・・・ちょっと次回また遅れるかもです