複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.82 )
日時: 2013/04/04 00:24
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 こまにぃの話す物語の中に自分が入れたら、どんなにいいのに、といつも思う。

「はい、僕もそう思いますよ。でも、この話にはもう少し続きがあるんです」

 どこか寂しげな表情をするこまにぃに少しだけ違和感を覚えた。

 でも、お話の最中で口を挟むのはあまり好きじゃない。まだ話が終わってないんだとしたら、黙って聞くべきだ。

「もしもスノードロップが雪に声をかけなかったら、雪は悲しみのあまりこの世界から消え去っていたことでしょう。それは雪が嫌いな神様にとって、非常に都合のいいものでした。ですが、思わぬ邪魔が入り、それは覆されてしまった・・・。そこで神様は、また1つ試練を与えたのです。那羅ちゃん、スノードロップの開花時期はいつですか?」

「2がつから3がつ」

「つまり冬の終わり頃ですよね。冬の終わりになれば、当然雪は溶けてしまうでしょう。意味が分かりますか?」

 活動時間が丁度入れ替わる、ということは同じ時を過ごせないことを表す。

 雪は優しくしてくれたスノードロップに寄り添っていたいのに、それが許されない。

 神様はどうしてそんなに酷いことをするんだろう。

「・・・やっぱり、かなしいね」

 率直にそう思う。

 それ以外にどう思えばいいというのだ。こんなに悲しいこと他にない。

「ならちゃんはそう思いますか?」

「ちがうの?」

「違うとは言いませんよ。ただ、僕は2人とも満足してるんじゃないかなと思うだけです」

 満足?

 これの一体どこが?

 ならの気持ちを分かってくれたらしく、こまにぃは微笑みながら補助説明をしてくれた。

「雪と花はどう足掻いても共存できません。雪が降るときに花が咲けばすぐに枯れてしまうし、花が咲くときに雪が降ったらすぐに溶けてしまう。一緒にいることで、相手を傷つけてしまうことになるとしたら、優しい2人はどうするでしょうか。・・・多分、自ら身を引き、相手と同じ場にいることを避けるでしょう。どんなに自分が相手と共にいたくても、相手にとってそのことが都合の悪いものなら優しい2人ならすぐに互いを避けます。2人にとって、互いの相手の幸せが最優先なのです。違う場でも、相手が幸せなのだとしたら、2人は幸せを感じるでしょう」

 優しいこまにぃだからこそ分かる、他者の優しさ。

 理解できないわけじゃないけれど、会いたい人に会えないなんていう状況は嫌だ。たとえそれで、自分が傷つき相手を傷つけることになってしまっても、きっとならは会いに行く。

 そう考えてしまうのは、幼いのだろうか。

 自分が最優先なのは、いけないことだろうか。

 でも、昔、「あなたはそれでいいのよ」って、言ってくれた人がいたから。

 今の自分を変えるつもりはない。

「でも、そう思うと神様は別に酷いことはしていないようですよ」

「え?」

「だってそうでしょう?神様がどうしようが、結局雪と花は共存できません。それを気付かせてくれたのは他でもない神様です。もしもその命令がなかったら、雪と花は何も知らないまま互いに相手を傷つけてしまうことになります」

 言われてみればそうかもしれない。こまにぃの言うことは正しいのかもしれない。

 なのに釈然としないのは、やっぱりならが幼稚だからかな?

「意見は人それぞれですよ。これは僕個人としての主張ですし、那羅ちゃんに強制するつもりもありません。無理に合わせようとしなくて大丈夫ですよ」

「むー・・・」

 たった1歳しか違わないのに、こまにぃはならより随分大人だ。

 何だか眠くなってきた。ずっと難しいことを考えていたからかな。

「眠くなってしまいましたか?そうですね、丁度時間ですしお粥を作っておきますね。冷めた頃に起こしますので、それまで寝ていては?」

「ん・・・」

 すぐにならの変化に気付いてくれて、ありがたいと思う。

「こまにぃ・・・」

 ぼーっとしてきて、思考が停止し始める。本格的に体が眠る準備を始めたようだ。

 最後の最後にならが言うのは、相変わらずの我儘なのだけどきっとこまにぃなら受け入れてくれる。

 その自信がある。

「ならがねるまで・・・おてて、ぎゅってしててほしいの・・・」

 くす、とすぐに笑みを零して、その白い手でならの小さい手を握ってくれる。

 ・・・ほら、やっぱり。

 こまにぃはこんなに優しい。

「分かりました。那羅ちゃんが寝るまで、ずっとこうしていますね」

 ならの手を包み込んでくれたこまにぃの手は凄く暖かくて、ぽかぽかしてて、いとおしかった。

 男の人なのに、女の人より触れ合える。不思議な特別な存在。

 ずっとずっと、こまにぃの暖かさがだいすきなの。

 気付けばならは、夢へと旅立っていた。

 約束通り、こまにぃはずっとならの手を握ってくれてたことは、言うまでもない。


















今回は少し短めになってしまいましたね・・・

ってなわけで少しご報告です


えっと、番外編は一応4つ作成するつもりだったので、馬鹿なチェシャはあまりに時間がかかってしまうため、一時休止させることにしました。

あ、那羅の風邪はもう少し続きます。残りの空悟と灯の喧嘩と個人の部屋は、また次の機会にやってみたいと思ってます

とりあえず本編を進めさせてもらって、できれば参照が1000越えしたら再度試みたいと思います。


自分で言ったことを全うできず、本当に申し訳ございません


まとめて言うと、番外編は今回の那羅の風邪で終わりで、残りはまたの機会にやることにし、これからは本編を進めますよということです

ごめんなさい、応援よろしくです