複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.86 )
- 日時: 2013/03/17 21:21
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
皆様にそう言っていただけてありがたいですww 返信送れて申し訳ございませんでした
ではでは、お言葉に甘えて本編再STARTですw
<JUNE>
俺がアウトロウに来てから2日が経った。初めて来た日が土曜日だったため、今日は月曜日だ。
思った通り、アウトロウでの生活は退屈しなかった。2日なんていう時間は俺にとっては永遠とも思える単位だったのに、この2日は本当にあっという間だった気がする。
アウトロウの奴らはみんな良い奴ばかりだ。ただ杵島灯というやつを除いては。初対面当日にフォークを投げつけられて、仲良くするというほうが無理に等しい。俺はそこまで善人じゃないのだ。
ともかく、俺は今鏡の前に立っている。
見慣れない、白い制服。無理矢理着崩しているとは言え、不良には似合わない代物だ。どんなに着崩しても気品溢れるのは何故だろう。無駄に多いピアスとも不釣合いだ、鏡を見れば一目瞭然に分かる。
だが、これが私立高嶺高等学校の制服らしいので仕方が無い。
前の学校は何の変哲もない市立高校だった。どこにでもあるような普通の学校。
容姿と態度が悪いせいか、俺は特定の奴としか親しくしなかった。別に俺は人が苦手とか、そういう要素は残念ながら持っていないのだが、周りが勝手に俺を避ける。まぁ、当然だ。俺に話しかけてくるような奴は、精々調子乗ってる喧嘩好きの馬鹿くらいだ。適当にあしらって終わるけど。
どうせこれからもそれが始まるんだと思うと、溜息が漏れる。避けられるのは、あまり好きではない。
ただ救いなのが、アウトロウの高嶺と榊以外の全員が高嶺高校の生徒だということ。
名前から分かったことだが、高嶺高校の理事は、高嶺真の伯父が携わっているらしい。じゃなかったら、こんな時期外れの転校生など無理だ。
一応の編入試験は受けたが、余裕で合格だった。私立ということもあり、なかなかに難しい問題ばかりだったため手こずってしまったが俺はこれでも今まで成績をトップ集団から外されたことはない。それなりの勉強は人よりできるらしい。友人にはロクに勉強してないのに何でそんなにできるのかとよく皮肉を言われていた。
俺は普段、黒い服しか着ないため、白を着るのは数年振りだ。相変わらず似合わねぇな、と思いつつ、制服がある学校に私服で行くような非行まではしない。まずこの格好で教師に指導を受けるだろうが、そんなの俺にとっては何の支障も来たさない。
現にもうこのピアスは特殊な器具を使わないと外れないわけだし、真面目な風潮のやつがピアスを何個もつけているほうが不可思議だ。
ただ、これのおかげでこれからの高校生活も友達はできないということだろう。私立に通うようなお坊ちゃまが喧嘩なんかに興味があるかは分からないが、まぁ、適当にやっておけば大丈夫だと思う。
改めて感じる学校、に俺はまた深い溜息を吐いた。
するとその時、ドアが突然バタンと開いた。男女共同生活のアウトロウでは、他者の部屋に入るときはノックが必須ということになっている。だが、今はそれらしき音は全くしなかった。こんなことをするのは、1人しか思い浮かばない。
視線を向けると予想通りの奴がそこに立っていた。
そして驚いた。
彼女はブレザーの下にフードつきのTシャツを着ていた。一応ワイシャツも着ているし、ブレザーもスカートも高嶺高校の制服だし、私服と混合してもいいという話は聞いていた。だが、ここまで公にやってよかったのか、と初めて知ったのだ。
相変わらずフードを被った美少女は、躊躇うことなく俺の部屋に入ってきた。
「おい、部屋に入るときはノックしろって何度言えば分かんだよ」
「そんなの知らないわ」
朝一番の会話がこんなだと、先が思い知らされる。
俺の部屋は物数も少ないし、色も多彩ではない。そのためどこか殺風景に感じるし、とりあえず綺麗にはしてあるから物足りない感もある。が、必需品は揃っているので不自由などはしていない。
フードから覗く焦げ茶色のさらさらな髪。俺を捕らえる真っ直ぐの瞳。雪みたいに白くきめ細かい肌。誰がどこからどう見ても美少女、と形容されるような異性に朝から目の前に立たれたとき、男はどうすればいいのだろう。
しばらく俺をじーっと見つめた彼女は、ふと顔をあげて
「制服、似合うね」
と褒めてくれた。
嬉しくないわけじゃない。むしろ結構喜んでいる。でも、無表情無感情で言われると、どこか釈然としない。
彼女こと篠原梨緒は、ひとしきり俺の制服姿を見たあとに裾を引っ張って部屋から出ることを促した。
「空悟が一緒に行こうって」
アウトロウのメンバーは無条件で高嶺高校へ入学させられる。1人を除いて全員高校生のため、平日はアウトロウには誰もいないことになるらしい。
まだあまり実感がないことだが、アウトロウはこの街の治安機関らしい。あらゆる問題を解決してきたらしいが、俺はつい2日前に入居したばかりなのだから知らなくて当然だ。
学校では風紀委員としての役割を持っているらしく、その権力は生徒会と競うほどだと空悟と理人が説明してくれた。ちなみに言っておくが、ここで積極的な性格をしているのはこの2人しかいない。
アウトロウのメンバーは半ば強制的に風紀委員に入れさせられるらしい。俺は今までの学校生活で委員会活動なんて経験は皆無なので結構不安だったが、問題が起きなければ何もすることないと言っていた。普通の私立高校でそんなに頻繁に問題が起きるわけないから、ひとまず安心した昨日の夜の出来事だった。
だけど、今高嶺高校には1つの問題が存在する。それは、生徒の失踪だ。
俺が初めてここに来たときに、社井が言っていた話だ。確か、渡辺香織という生徒だったはず。
高嶺に聞いた話によると、失踪者は渡辺香織という少女で2人目らしい。
学校側としても大問題なので、できるだけ公にはしていないが、それも時間の問題だと思う。そろそろ保護者が白を切らして捜索願を出す頃だ。
まぁ、何をしたらいいか分かっていない俺は、別にすることもないんだけど。
アウトロウのメンバーは高嶺と榊を除いて7人だ。7人がぞろぞろと登校するのかと思いきや、実はそうではなかったらしい。
杵島は気付けばいなくなっていたし、理人は可愛い女子たちに連れられて行ってしまった。社井と璃月は昨日のうちに一緒に行けませんと聞いている。残るは俺と梨緒と空悟だけだ。
梨緒はともかく、協調性のある積極的な空悟は、新しいメンバーの俺を何かと気にかけてくれる。
ちなみに、俺らは全員同い年の訳ではない。
俺と梨緒、そして理人と社井は高校2年生。ついでに、理人は既に誕生日を迎えていて17歳らしい。
あとは空悟が3年生。アウトロウの大人たちの次に年上といういことだ。てっきり同年齢だと思っていたから失礼なことをしてしまった。
そして残った杵島と璃月が1年生。大人っぽい杵島が15歳ということに驚いたが、小学生にしか見えない璃月がその杵島と同い年ということのほうが驚いた。
「あぁ、分かった」
とりあえず、俺はこいつらと一緒の高校に通う。着慣れない白の制服はやっぱりぎこちなかったが、何だか梨緒とおそろいの服みたいだったからちょっと恥ずかしかったりもする。・・・あ、これ内緒な。