複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【番外編START☆】 ( No.88 )
日時: 2013/03/20 21:52
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

「ちょっと優!狭いでしょ、もう少しあっち行ってよ!」

「無理言うなよ。この状況じゃ無理だろ、空は少し考えろ」

 蒸し暑い電車の中で、一際目立つ男女がいた。

 うるせぇな・・・と思いながら、俺は若干反射的に、その会話をする男女たちのほうへ視線を向けた。

 俺は今ドアの前まで追いやられている。まぁ、人に挟まれるよりはよかったので好都合だ。そしてその男女は俺がいるドアの向こう側だった。つまり、ドアに向かって右側にいるのが俺で、左側にいるのがその男女たちだ。ドアの近くだけあって、吊革がないためか、ここは人口密度が低い。だが、人の壁があることには変わりない。

 その男女は俺と同じ高嶺高校の制服を着ていた。だが、それより驚いたのは2人の顔だった。

 多分、双子が何かなのだろう。どことなく雰囲気は違うが、顔のパーツの節々は所々似ていた。一卵性・・・とまでは言わないが、二卵性だということは一目瞭然だった。それに、美男美女が揃うアウトロウのメンバーに劣らないくらい、整った顔立ちをしていた。

 ただ決定的に違うのがその雰囲気。

 ドア側にいるのが女で、人の壁側にいるのが男だ。まぁ、普通に考えて、男が女を人の圧力から庇っているんだろう。俺だって梨緒がこの場にいたらそうする。

 そんな状況にも関わらず、女は男に文句を言っていた。そして男はそれを適当に受け流している。

 女は活発で、男はクールな感じがした。明らかに対照的だ。

「というか、優。あんた電車乗ってから顔色悪いけど、体調が悪いの?」

「別に」

 確かに女が言う通り、男は顔が青ざめていた。電車か人に酔ったのだろうか。まぁ、仮にもあの人の壁から女を守っているんだ。あの華奢な体には結構辛いのかもしれな・・・・・・・・・・はぁ?

 と、そこで俺はつい声を上げそうになった。

 女を庇っている男の後ろ。そこには妙にやらしい顔をした男がいた。見たところ普通のサラリーマンの中年のおっさんだ。

 気になるのはそいつの手の矛先。その手は真っ直ぐ男の背中の下へ———・・・。

 意味が分からない。野朗を触って何が楽しいんだ。でも、これで彼が青ざめている理由が分かった。

「ねぇ大丈夫?」

 未だに心配し続けてる女に、男は平気、とかろうじて答えている。だが、彼らが俺と同じ高嶺高校が目的地なら、まだ4駅残っている。その間、ずっとあれに耐えるのは、苦難だろう。

 もし俺だったら絶対殴り飛ばすところだ。

 ・・・というか、あの体勢は、もしかしたら彼女を人波から避けるためではなく、こういった痴漢やらから守るためなんじゃ・・・?

 あの容姿だ。朝から盛った馬鹿共の最高なエサだろう。世の中にはいろんな人がいるのだから、同姓に手を出す輩がいないとは言えない。むしろ、あいつを女と思っていてもおかしくはない。

 学年はよく分からないが、学校が一緒だということは分かっている。

 こういう場合はどうすりゃいいんだ・・・?

 ・・・面倒だ。放っとこう。変なことに巻き込まれても厄介だ。

 と思ったのに、気になってしまうのは、ここ2日で鍛えられたお人よし精神だろうか。

 彼が抵抗しないことをいいことに、中年の親父はどんどんヒートアップしていって・・・・・・。

 ・・・。


「おい、おっさん。何馬鹿やってんの?」


 きっと、あれだ。ドアの前で俺と彼らの間に人があまりいなかったから、割り込みやすかったせいだ。

 いつぞやか梨緒の手を取ったみたいに、俺は気付けば彼をやらしく触るおっさんの写真を撮っていた。

 まさか見つかってるとは思っていなかったでろうおっさんの驚いた表情と、いきなり痴漢が止まった彼の表情。そして、何が起こったのか全く分かってない彼女の表情。

「な、何を言っているんだい、君は。わたしは、何も・・・」

「見え透いた嘘言ってんじゃねぇよ。俺は今この携帯で証拠写真撮ったんだ。言い逃れなんかしてんじゃねぇよ」

 いきなり現れた俺に、彼女と彼は驚きを隠せないようだ。

「今すぐそいつに謝れ。もう一切手ぇ出すな」

「な、何だね君は・・・大人に向かってその口調「いいのか?」

 俺はおっさんの胸倉を掴んで力を込めた。

 見た目だけ見ると不良にしか見えない俺に、おっさんは完全に怖気づいていた。

「次の駅でこいつと一緒にこの写真を駅員に見せることだって出来るんだぞ。何ならここで大騒ぎしてやろうか。同じ会社の奴くらい乗ってるだろ」

「なっ・・・」

「残念だがこれは正当防衛だ。自分の立場を弁えるんだな」

 おっさんの目を捉えて睨む。

 ひるんだおっさんは、がたがた震えながら彼に謝った。

「ごめんなさい・・・もうしません」

 ありきたりな言葉で、多少いらっとしたがこの際いいだろう。

 野朗が野朗を触ってる写真なんか保存するまでもない。すぐさま削除を選択しOKを押した。

「優あんた痴漢されてたの?」

「・・・、あぁ」

「何でそういうことをさっさと言わないのよ、馬鹿ね」

「可哀相だと思って」

 あ?こいつは何を言っているんだ。

「空に知られたりなんかしたら、もうこいつ生きていけねぇだろ」

「当然よ。優に手を出したんだから。ねぇ、あなた。会社はどこな
の?」

 こいつらは一体何を話しているんだ・・・?

 女は男越しにおっさんと話していた。男が答えた会社名は、俺でも聞いたことがあるほど有名な会社だった。

「あら、丁度よかったわ。そんなあなたにいいこと教えてあげる」

 びっくりするくらい冷たい眼差しをした彼女は皮肉気に笑い、口を開いた。

「私たちのお父さん、姫路拓郎って言うんだけど・・・知ってるかしら」

 姫路グループ。

 それは不良高校生の俺でさえ知ってる、大手企業メーカーだった。

 数々の有名会社を排出し、俺らが使っている日常品の大半は、姫路グループが関わっていると聞く。

 姫路拓郎、というのはその姫路グループの現当主の名前だ。

 そんな人が父親だということは、彼らは姫路グループの御曹司ということになる。

 彼が発した「可哀相」という言葉の意味がよく分かった。

「あなたが手を出したのは、あなたと次元が違う人よ。身の程を思い知りなさい。あなたのことは、お父様によく話しておくわ」

 今度こそ、おっさんがその場に崩れ落ちた。何も知らない周りは突然しゃがみこんだ彼を、訝しげに見ている。

 あそこまでされると、確かに「可哀相」だ。

「あなた、あまり見たことのない顔だけど、高嶺高校の人?」

 俺の制服を見てそう判断したらしい女が、俺に声をかけてきた。
















新キャラ登場ですww

えっと、じゃあ、例の如くプロフィールをw



名前:姫路 空

読み方:ひめじ そら

性別:女

年齢:16

性格:自分の意志を真っ当する。誰の干渉も受けずただ自分だけで突き進む。そのためならどんな傍若無人な行為も平気でやる

容姿:綺麗な長い髪に、少し目つきが強い瞳。スラリとした細身の長身。独特の気品ある雰囲気を持っていて、どんな発言でも何故か許せてしまう。

サンプルボイス:本編参照☆

好きなもの:綺麗なもの、世界、自分

嫌いなもの:辻褄に合わないもの。自分の納得がいかないもの

事情:お楽しみにw

備考:大手企業メーカー、姫路グループのご令嬢。優の双子の妹。ずっと人探しをしている。


文字数制限メンドイ!足りないから次へGO!w