複雑・ファジー小説
- Re: とある天才のイミ ( No.10 )
- 日時: 2013/02/16 17:42
- 名前: せぷてむ ◆9FXqrrTuEc (ID: Z6QTFmvl)
- 参照: ???「俺の出番はいつですか?」せ「知らん」
ジュントが土下座してから1時間が経った。未だに顔を上げようとしない。寝てるのだろう。ユーマが突っつきワカナが馬乗りになっても動かない。死んではないのだろうと思う。とはいえ、ずっといじっている訳にはいかない。人間、食事をしないと生きていけないのだから夕飯の支度をしなくてはいけない。
……何を作ればいいのか。あいつ等の好みはあまり知らない。ワカナは辛うじて分かるが、馬鹿コンビは分からない。無難にオムライスにしておこう。私好きだし。きっと皆好きだろう。オムライス苦手な子あまり居ないし。嫌なら食べなければいい。
「ナツミ、ジュントが寝てしまった」
「土下座して寝るとか馬鹿なの?」
「うん。馬鹿じゃん」
そして1時間たって寝ていたという事実に気付くのもおかしい気もする。ジュントは規則正しい寝息をたてていた。そして改めてこいつの顔立ちの良さを実感する。黙っていればモテるのに。
「あ、夕飯作るの手伝うよ!」
「気持ちだけでいいです」
「変わりに俺が手伝おうか?」
「あ、お願いします」
「ちょちょちょちょ、なんで私は駄目なの!」
「どんくさいから」
見事にハモった私達。ユーマは手際がよく料理は上手だ。裁縫は壊滅的だが。ブーブー拗ねるワカナに向かってユーマか肩に手を置き言った。
「お前に料理は向かない。だがその分向いている事がある。それはな……ジュントの世話だ」
言われても嬉しく無いよそれ。でも、ユーマなりに慰めているのだろう。そう思うと自然に笑みが浮かんでくる。
「……うん。わかったよ」
ワカナもあまり納得はして無いが彼なりの気遣いを理解したのか何も言い返さなかった。そして、ソファの上にいつも置いてあるクッションをジュントの枕代わりにした。優しい子だな。
「ナツミって母親みたいだな」
「よく言われる」
そして私達はキッチンでオムライスを作り始めた。
ナツミとユーマ、二人並んで夕飯を作る姿を見て「羨ましいな」と私は呟いた。私はどんくさくてよく失敗する。だから料理とかはあまりさせて貰えない。ママにもやめとけって言われた。ナツミは家庭的だ。そして頭もいい。それに引き換え運動は壊滅的……とまではいかないができない。私も運動はできない。でも頭もよくないし家庭的じゃない。裁縫はできるけど。同じ学級委員だけど私は1学期落ちたからその流れで今やっている。ナツミに至っては先生から頼まれたらしい。もう、この時点で違いすぎる。本当、羨ましい。
「ナツミはいいなぁ」
誰にも聞こえない声で呟いた。きっと私の思いは誰にも届かないのだろう。そう思った。
「……お前もいいところあるんじゃねーの?」
「じゅっジュント!!」
「声でけーよ」
誰にも聞こえないように言ったはずなのに、ジュントに聞かれた事が恥ずかしい。ジュントは上体を起こし、頭をポリポリ掻いてから目を逸らした。
「自分では気付いてねーだろうけど、お前はナツミよりも凄い所あっからな」
そういうと照れ隠しなのかクッションを私の顔面にぶつけて来た。
いつもなら怒ってるけど、今回だけは特別に許してあげない事も無いかな。