複雑・ファジー小説
- Re: 【少年少女と】とある天才のイミ【アンドロイドの意味】 ( No.14 )
- 日時: 2013/02/17 19:23
- 名前: せぷてむ ◆9FXqrrTuEc (ID: Z6QTFmvl)
- 参照: ってっててー
10時半を過ぎた頃、私達はアンドロイド専門店にやって来た。小さな研究所のような造りでSF映画とかに出てきそうだ。
「はっ入るよ」
「おっおう」
無意識に緊張する。それはジュントも同じようで。なんだか少し安心した。ワカナとユーマは早く入りたいと言わんばかり目を輝かせている。何も知らない人が見たら変な子供だって思うだろうな。
ウィーンと扉が開いて足を踏み入れる。そうすると綺麗な和音で「いらっしゃいませ」と聞こえた。驚いて辺りを見回すとニコニコ笑ったアンドロイドがこちらを見ていた。世に言う「愛想笑い」だろう。気味が悪い。ジュントをチラッとみると少し血の気が引いている。きっと同じことを思っているのだろう。ワカナ達は……相変わらずだ。
「いらっしゃい、可愛らしいお客さんだね」
聞き覚えのある声だと思ったらその声の主は昨日ぶつかってしまった男の人だ。ここの従業員だったのか。
「あっ! この前のイケメンだ!」
「声がでかいぞ」
「黙れよ」
「静かになさい」
私達のやり取りをみて男の人はクスリと笑う。そのしぐさは優雅で、これを見た殆どの人は惚れるんじゃないのかと思う。
「やあ、また会ったね。ナツミちゃん」
「はっはい。昨日は本当に申し訳ありま……せん?」
なんで名前を知っているのだろうか。名乗った覚えはどこにも無い。それに昨日以外あったことも無い。何故だろう。私の考えていることを察したのか男の人は答えてくれた。
「君のお母さんから聞いたんだよ。『近いうちに娘がアンドロイドを買いに来るからそのときは宜しく』ってね」
そう言って営業スマイルなのか紳士的な笑みなのか分からないが笑う。凄く絵になる。
「……で、後ろに居るのはお友達かな?」
「はい。1人なのは嫌なので」
「ははは、そうか。しっかりした子だって聞いたけどやっぱり子供だね。可愛いなナツミちゃんは」
頭を撫でてくれる男の人。けして乱暴ではなく、優しく撫でてくれる。お母さんみたいだと思う。
「おい」
「ねえ」
ジュントとワカナの声がやけに低い。あれ、私何か悪い事したっけ。頭の中で考えるが全く心当たりが無い。
「俺らをおいて話を進めんなよ」
「羨ましい」
「またそれかよ」
*
「君たちって本当に面白いね。見ていて飽きないよ」
男の人——拓さん(ついさっき聞いた)は言った。よく言われるな友達に。みんな考える事は一緒なんだね。
笑った顔が一変、真剣な顔つきになった。そして、肩を掴むなり今度は営業スマイルで拓さんは言った。
「どんな子が欲しいんだい?」
少し怖かったな。いや、少しどころではなくかなり。
「えーと、性能がいいアンドロイドがいいです」
料理、洗濯、裁縫ができて、尚且つ頭脳もよくて運動能力が高いのがいい。できれば顔もいいやつが。かなり我が侭な気もするが、一緒に生活するんだ、欲張ったっていいじゃないか。
「他には?」
「……特には」
愛想笑いをしないのが欲しいなんていえるわけが無いよね。だって愛想笑いって基本プログラムらしい。
「ふーん、性能がいい子は居るんだけど少々問題があるんだよね」
「どんなですか?」
「右腕が少し問題ありでね……皆気味悪がって買わないいんだよ」
可哀想だな。私はそう思った。気味悪がられるなんて。
「それに——他と比べてあまり笑わない。可笑しいよね、ちゃんとプログラミングされてるのに」
まさかそんなアンドロイドが居るなんて思わなかった。その子はどんな子なんだろう。興味が沸いてきた。
「なんで笑わないのかって聞いたらさ、『笑う理由が無い』らしいんだ。まるで心を持っているかのようだよ」
よし、そのアンドロイドを買おう。絶対。
「そのアンドロイドを買います」
「え? いいのかい?」
「はい。その子がいいんです」
訴えると最初は困った顔をしていたけども、綺麗な藍色の目をスッと細めて笑った。
「わかったよ。着いておいで。お友達もね」
私達は拓さんに着いていった。