複雑・ファジー小説
- Re: 【少年少女と】とある天才のイミ【アンドロイドの意味】 ( No.15 )
- 日時: 2013/02/19 17:17
- 名前: せぷてむ ◆9FXqrrTuEc (ID: Z6QTFmvl)
- 参照: ってっててー
この店は案外広い。アンドロイドがかなり置いてある。拓さんに着いて行く途中、他のアンドロイドは「私なんか如何ですか?」や「ぜひ、僕を買ってください」とか私達に媚びていた。嗚呼、吐き気がするなあ。
少し歩くと、そこには真っ赤な髪が特徴的で、凄く顔立ちの整った人——否、アンドロイドが居た。
”——、バイバイ”
”うん、また明日。——”
頭に少女と少年の声が響く。ひとつは紛れも無い”私”の声だった。もうひとつは——思い出せない。知っているはずなのに……。忘れてはいけないはず事のはずなのに。
「ナツミ?」
首を傾げて言うワカナの声にふと、我に帰る。「なんでもない」と笑えば「ならいいや」と笑い返してくれた。そして、私は目の前に居るアンドロイドを見つめる。そのアンドロイドも私を見ていたが、笑ってない。ヘラヘラ笑われるのも嫌だけどこれはこれで嫌だな。でも、うん。なんか違和感。なんだろう、すごく、懐かしい気がする……。
「ナツミちゃん、この子を買うのかい?」
「……貴方が、俺の主?」
アンドロイドは私をマジマジと見ている。やっぱり、変な感じがするな。でも、私はこのアンドロイドがいい。性能が良いらしいし、顔も凄くいいし、なにより、この変な感じの謎を解きたいしね。
「はい。このアンドロイドにします」
「そうかい。良かったな誠<セイ>」
「……」
相変わらず無表情で少し怖い。……大丈夫だよね。
お母さんから貰った(借りた?)カードで支払いを済ます。その間、ジュント達が誠に構っていたようだが、誠は無表情のままジュント達とじゃれあっていた。無表情って怖いね。
「ナツミちゃん」
「はい? なんでしょうか」
「誠をよろしくね」
「はい!」
拓さんっていい人だと思う。アンドロイドを物として扱う人が多いというのに、あんな優しい言葉をかけるなんて。もしも拓さんにアンドロイドが居たらそのアンドロイドは幸せなんじゃないのかと思う。
「ナツミー! コイツむひょーじょーでこえー!」
「ナツミも偶に無表情で怖いよね〜」
「別に怖くなんて無いぞ? ダセェ……」
「相変わらずね……」
「……」
私は気付けなかった。彼が、誠が今笑っていたことに——
「はあ」
ナツミちゃん達が帰った後にふと、ため息を吐く。正直言ってあの子には、あの子たちにはアンドロイドを買って欲しくなかった。アンドロイドは人間に忠実だ。それはもう恐ろしいぐらいに。ナツミちゃんは子供だから誠に酷い命令はしないだろう。
この世界はアンドロイドが登場してからより一層腐っていたのではないだろうか。自分の願いを聞き届けてくれる物が出来て、我が侭になってきているのではないだろうか。
俺は思うよ。いつか、そう遠くない未来に彼ら(アンドロイド)による複襲劇が起きるんじゃないかと——。
多くの人は笑うよ。そんな事は無い。アンドロイドに”心は無い”って。
——果たしてそうか?
それは俺達(人間)が勝手に決め付けたことでしか無いのだろう。心が在るという証拠も無ければ、心が無いという証拠も無い。俺達だって、心は何故在るのかさえも解らないのだから——
「難しいことを考えるのは止めよう」
そしたら、またお客さんがやって来た。いつもの営業スマイルで「いらっしゃいませ」と言う。これじゃあ、やっている事は彼らと同じだ。