複雑・ファジー小説
- Re: とある天才のイミ ( No.41 )
- 日時: 2013/03/16 13:47
- 名前: せぷてむ ◆9FXqrrTuEc (ID: Z6QTFmvl)
- 参照: 吠兎さん>更新してやんよ!
走り出したのはいいものの、近づけない。うるさい。臭い。臭い。化粧臭い、香水臭い、鼻が曲がりそうだった。堪えられずに集団から離れた。
「うぇ〜、気持ち悪いよ」
「ど、同感する……」
ワカナもかなり嫌そうな顔をしている。きついよね、あんな変な臭いばかりのところに居るなんて。
しかし、誠は何が何でも連れて帰らなくてはいけない。私の胃袋のために。誠の作るご飯は物凄く美味しいのだから。今更自分で作ってもへこむだけだ。
が、どうしようもない。気付いてもらうのが一番いい方法なんだろうけど、私は背が低いもので気付かれやしない。……お姉様方にはくたばっていただきたい。
「ワカナ、どうしようね」
「叫ぶか」
「あー、うん。ヤダ」
「お前声でかいじゃん!!」
「えーでも」
恥ずかしいから無理だ。にらまれたら嫌だし。うん、嫌だ。
ワカナは少し考えてから、自分の傘をたたみ始め、私の傘の中に入ってきた。意味が解らないがワカナは傘を上に上げた。
「こうすれば誠も気付くと思うよ。多分ね」
「それで気付くもんかね〜」
が、意外にも気付かれるものだった。誠が私達に近づいてきた。お姉様方を振り切って。凄い形相で見られた。随分と醜いお顔なお姉様方。そんなんじゃ、一生モテませんよ、——雌豚が。
「此処に居たんだな」
「あーうん。迎えに来てくれた?」
「ああ。傘が置いてあったからな。でもその心配は無かったようだ……」
心無しか、物凄く寂しそうに言っているような気がした。私は内心かなり焦ってしまった。
「むっ迎えに来てくれて嬉しいから!」
「うん。ナツミすっごく嬉しそうだったよ〜」
「”うれしい”?」
あ、そうか。彼には心が”無い”のだった。だから嬉しいと言う事が解らないのか。でも、私も嬉しいとは何なのかよく解らないからおあいこなのだろうか。
「……理解できないな」
「そう、だよね〜」
少しショックだったのか、上手く笑えない。でも、暗いなんて私のキャラじゃない。無理にでも笑わなくてはいけない。
「ねぇねぇ、帰ろうよ」
気を使ってくれたのか、それとも考えていないのか、どちらにせよワカナに感謝しないといけないと思った。
——しかし、楽に帰れないのが現状である。
「ちょっとぉ〜、勝手に話進めないでくれるぅ〜?」
「そうよ。餓鬼の癖に調子に乗ってんじゃないわよッ!!」
お姉様方——いや、馬鹿女達がお怒りだった。子供の私に殺意を飛ばすのだ。なんて大人気ない。だから、こういう群がる女は嫌いなんだ。
「なんなのよアンタ、妹? だったらさっさと帰ってよ!」
ちげーし。でも、これで反論するなんて馬鹿らしい。こういうときは自分が大人にならないといけない。
無視して帰ろうとしても通せんぼ。え、何コイツ等。そこまでして誠と親しい私が気に食わないのか。ていうか、誰か帰ってとか言ってたのに。ウザイな、しつこいな、消えてくれないかな。
「無視してんじゃないわよぉっ!!」
と、リーダー格の女の人がパシンと平手打ちしてきた。痛いな。でも、こんなんじゃ私、やり返さないよ。まあ、でも反論ぐらいはいいだろうね。
「帰れって言われたから帰ろうとしたまでですよ?」
「私はねぇ、無視された事が嫌なのよぉ!!」
「それで、手を出したと言うわけですか〜」
ついつい、いじりたくなって声のトーンが上がる。
「何よぉ……」
「大人気ないし、馬鹿じゃないですか」
この言葉が感に触ったのか鬼のように汚い形相に変わっていく。女って醜いものだと改めて思った。
「……いい加減にしないと
——消しますよ?」
今までに無いどす黒い声を出せば「ひぃ」っと声をあげ、逃げていく。随分と臆病者だこと。
「ナツミ、さっきのって……」
「んー、冗談」
「全然冗談に聞こえないんだけどッ!?」
「だって、自分の手が汚れるなんていやだもん」
「ですよねー」
「さ、帰ろうか」
「よくそんな事言えるね……さっき怖かったのに」
「ああ」
「だって、ウザかったから」
消えて欲しいとは思ったが。しかし、現役小学生にビビって逃げる高校生ってダサいと思う。そこまで私は怖かったのだろうか。
「私、死ぬかと思ったよ……怖すぎて」
「え? 死ぬところ見たかった」
「ひどいな」
「いつものことだよ……誠」