複雑・ファジー小説

Re: とある天才のイミ Cacophonous Divge ( No.75 )
日時: 2013/03/21 17:48
名前: せぷてむ ◆9FXqrrTuEc (ID: Z6QTFmvl)
参照: 宿題が少ないのっていいよね


「ま、す、たぁ……」
 アンドロイドが小さく声を上げた。それが、悲痛な叫びのようで胸が苦しくなる。まさか、捨てられたのだろうか。

「あな、た様に……必、要と、されなくても……さい、ごに守れて、幸せで、す」
 アンドロイドは屋上から主を守るために、落ちたのか。話の流れ的に”不用品”扱いされていたというのに。なんて健気なのだろう。機械だから、ではない。彼女の誠意は真なのだ。

「ねぇ、君。君は……まだ生きたい?」
 いつの間にか出てた言葉。直せるのなら直してあげたい。だって、彼女の誠意を見て見捨てられるわけがないじゃないか。
「あな、たは?」
「私は、ただの少女。アンドロイドを買った、ね」
「そう、ですか……私に、話かけて、心配してくださって、あり、がとう御座います。貴女のアンドロイドは、幸せですね」
 一字一句が悲痛の叫びに消えてならなくて胸が切なくなる。ちょっと前の私だったら関わりたくないから、逃げてた。

「質問に答えてよ」
「そう、でしたね……私は、悔いなのないので、す。でも、まだ生きていたい……です」
 アンドロイドは皆こうなのだろうか。誠を基にすると皆心が”在る”のだから、普通は怨むのではないだろうか。こき使っておいて捨てるなんて。怒らない方が不思議だ。




「へぇ〜、旧型アンドロイドね。私だったら簡単に直せちゃうな〜」
 どこかで聞いた事のあるような陽気な声。まさか……
「お、お母さん……」
 変人で有名な私のお母さん。確か研究員だったのだ。なんでこんな重要な事を娘に黙っていたのだろうか。お母さんだから仕方ないが。

「てか、この子が旧型? それに足外れてるのに」
「ふっふ〜ん。私が3時間ぐらい本気出せばチョチョイのチョイよ」
「貴女様は……!!」
「まさか!!」
 彼女と誠が驚きの声を上げる。そして周りの人もお母さんを見て「本物だ!」とか言っている。あ、そうかお母さん有名人だった。忘れてた。

「あら〜、翡翠<ヒスイ>ちゃんに誠くん。お久しぶり〜」
「え、ナオ様は……ナツミの!?」
「そんなのどうでもいいわ〜さっさと翡翠ちゃんを運んで」
「は、はい……」

 お母さんが様付けされている……だと。可笑しすぎて笑えるのだが、そんなのん気な事をしている場合じゃない。私達は翡翠の修理をするために私の家へと向かう。

「あ、信ちゃん。このキャリーバックお願いできるかしら? 重くって」
「ぜひぜひ。って重いわね……何が入っているの?」
「修理道具よ」
「タイミングバッチシね……」
 そんな会話をしながら母さんと信さんは進む。さりげなくお母さんをエスコートしている信さんが格好いいと思った。