複雑・ファジー小説

Re: 人魚姫の幸せ ( No.10 )
日時: 2013/03/15 16:02
名前: 雄蘭【ゆうらん】 (ID: DzlMUhcv)

【No,Nine】

何時もより苦めなコーヒーを飲み干し、愛華は、ソファーにどさり、と倒れ込んだ。
と、不意に、腕に掛けられたブレスレットに目が行く。
窓から差し込む朝日が、ブレスレットの宝石に反射し、キラキラと輝いている。
そんな愛華の宝物とも言えるブレスレット、其れをくれたのは、彼だった。

彼との記憶を思い出す度に、愛華の表情は微かに歪む。
其れも其の筈、愛華にとって、彼は大切過ぎた存在であり、最も愛おしい人間だからだ。

彼を愛する愛華。
彼が愛する愛華。

2人は確かに、繋がっていた。
赤い糸も、運命も、2人の味方の筈だった。

其れが狂ってしまったのは。

如何し様も無い愛華の、心の叫びを、誰もが知らなかった。
今でも許されない罪を、愛華は独りで抱え込んでしまったのだ。
涙さえ流せずにいる、可哀相で哀れな独りぼっち。

【誰にも言えずに、唯閉じ篭る】