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複雑・ファジー小説
- Re: 人魚姫の幸せ ( No.11 )
- 日時: 2013/02/26 17:45
- 名前: 雄蘭【ゆうらん】 (ID: OWyP99te)
【The volume on extra】
…彼女は、泣きたかった。
ずっと、ずっと、表情ひとつ変えない彼女は、今迄、そう思っていた。
真っ直ぐで綺麗な瞳の中には、微かな憎しみ、そして、沢山の後悔が渦巻き、彼女を傷付けていた。
彼女を縛り続ける過去は、愛しささえも、消し去りそうで、足掻き続ける彼女を嘲笑うかの様でもある。
水分が枯れてしまった彼女に、希望は存在するのか。
(もう、居ないけど)
孤独に生きて行く運命が、彼女には耐え切れなかった。
もう、絶望を浴び過ぎた彼女は、感情も全て、失い掛けていた。
(信じられないよ…)
心の奥底で想い、そして、手を必死に手を伸ばす。
涙が零れそうな潤んだ瞳に、優しそうな少年の後姿が、ぼんやりと映り、まるで霧の様に、消えて行った。
未だ、信じられない現実に、目を背けたくなった彼女は、思わず彼に電話をしようと、携帯に手を伸ばした。
だが、途中で残酷な現実が彼女の手首を力強く握った。
幻覚の筈だが、彼女の手首には鋭い痛みが走った。
どれだけ、彼の存在が大切だったのか。
自分でも分からない位、彼が好きで好きで、大好き。
哀しみを通り過ぎた感情が、大きな波と成って彼女へと近付き、涙さえ、浚って行った。
【世界は、思ったより現実的なのね】
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