複雑・ファジー小説

Re: 人魚姫の幸せ ( No.13 )
日時: 2013/03/15 16:04
名前: 雄蘭【ゆうらん】 (ID: DzlMUhcv)

【No,Eleven】

「…で、如何して元気無いの?」

改まって、店主は冒頭の質問を再度愛華に投げ掛けた。
そんな店主を尻目に掛け、愛華は、アルコール濃度の高いウイスキーを、一口含んだ。

「だから、そんな事ありませんって」
「…彼の事でしょ?」

店主の一言に、愛華の動きが停止する。
小さく動揺を見せる愛華に、何時もとは違う真剣な眼差しを向ける店主。

「何、で、そう思うんですか?」
「今質問してるのは俺だよ」
「…———っ!」

口実を上手く避けられ、愛華の表情に陰りが見える。
綺麗な唇を強く噛み締める其の姿は、何時もの愛華では無い。
健気に生き行く女性だ。

心の中で、愛華は追憶していた。
あの日、自分が犯した許されない罪を。
あの日、自分が愛した人間を、失う辛さを。

誰にも言えない侭過ぎ去った時間。
其れは、自分にとって何だろうか。

今、此の瞬間。
愛華は、急に生きているのが嫌になった気がした。

アルコールの所為か、頭がくらくらする愛華。
だが、愛華には分かっていた。
此の眩みは、自分の行動が原因だと。

【秘密が漏れる時の絶望感は】