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複雑・ファジー小説
- Re: 人魚姫の幸せ ( No.2 )
- 日時: 2013/03/15 15:51
- 名前: 雄蘭【ゆうらん】 (ID: DzlMUhcv)
【No,One】
其処に、彼女は立っていた。
四方には点々と紅い血が残っており、血に沿って歩くと、無残に殺された死体が幾つも転がっている。
一般人ならば倒れているだろう、酷い光景だ。
しかし、彼女は其れを見詰めていた。
真っ直ぐで揺ぎ無い信念と、今にも涙が溢れて来そうな哀しさが混ざり合っている瞳だった。
何かを捉えている其の瞳孔には、重圧感さえ感じる。
全体的に整った顔をしている彼女が、此の様な状況に成るのは職業上仕方が無かった。
そんな中、静けさに包まれている建物にサイレンの音が近付いてきた。
緊迫した状況に慣れているのか、彼女は真っ先にサイレンの音に気付き、裏道へと逃亡した。
夜道には誰一人存在しておらず、彼女は足音を立てない様に歩き始めた。
彼女の横顔は、何故か微かな苦痛に歪んでいた。
唇を噛み締め、小さく震えている其の姿。
まるで、怯える子供の様な姿にも見える。
彼女は自分を抱き締めるように強く身体を包み込んだ。
そして、また冷静な表情へと戻り、逃亡に専念するのだった。
【誰も分かってくれない此の気持ちを】
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