複雑・ファジー小説

Re: 人魚姫の幸せ ( No.5 )
日時: 2013/03/15 15:55
名前: 雄蘭【ゆうらん】 (ID: DzlMUhcv)

【No,Four】

バスタブで半身浴をしながら、愛華は先程の血塗れの状況を思い出していた。
其れは愛華にとって、恐怖、其の物だった。

「お願いだ…助けてくれ…っ」
「ごめんなさい、其れは無理ですね」
「お願い…します…っ!助け…」
「無理って言ってますよ、ね?」

次の瞬間、断末魔が夜空に響き渡り、途絶えた。

男が其処まで生きる事に執着する理由を、愛華は知っていた。
"家族"。其の存在が、男をあの様な行動に移したのだ。
愛華は不思議だった。
如何して、其処まで家族を愛しているのか。

何故か、胸が痛い程締め付けられ、愛華はバスタブに身を沈めた。
愛華は自分がこうして裏社会に生きているのか、忘れ掛けていた。

もっとも、愛華には男の想い続ける"家族"が、どれだけ大切か、どれだけ愛しい存在なのかを知らない。
其の所為で、同情すら出来ないのだった。

【どんな感じなのかさえ、知らないの】