複雑・ファジー小説

Re: 人魚姫の幸せ ( No.8 )
日時: 2013/03/15 15:59
名前: 雄蘭【ゆうらん】 (ID: DzlMUhcv)

【No,Seven】

何時もの様に、愛華はラフな洋服に着替え、コーヒーを入れる準備をした。
苦そうな香りが、鼻を刺激し、良い眠気覚ましになる様だ。
お湯を注いでいる時、ふと、愛華はリビングの立て掛けてある、写真立てを見てみた。
写真に写っているのは、若い頃の愛華と…——

「……未だ…」

愛華の表情が、哀しみへと変わって行く。

「…未だ………愛してる」

虚ろな眼差しで"愛してる"と、呟いた愛華は、はっとしてお湯が零れそうになっているカップに気付いた。
慌てて、お湯を注ぐのを止め、カップをリビングへと持って行った。

テーブルにカップを置き、頬杖を付きながら、瞼を閉じた。
愛華の楽しかった頃の思い出。
其れは、今と成っては、愛華を苦しめるものに過ぎない。
未だ湯気の立っているコーヒーを愛華は口に運んだ。

「…苦い」

何時も慣れている筈の味が、今日は違うと、愛華は感じていた。

【世界は広いのか、狭いのか】