複雑・ファジー小説

Re: 第二章・異世界勇者〔異世界武具屋〕 ( No.205 )
日時: 2013/05/29 20:02
名前: 通りすがりの俺 ◆rgQMiLLNLA (ID: HR/cSb0.)
参照: https//今日の二回更新、てすとをまぎらわせるため!


こんな荒廃したクルトンでは何が大事かといえば復興、壊れたがれきをどかし新しく家などを立てる。しかし、人はその作業を嫌がり国を離れていく、そのためガレキどかしは少しの食料が出るくらいで実質ボランティアのようなのものである。

「お~い、そっちはどうだー」

「ちと硬い、手伝ってくれ」

「魔法って便利~」

現在、雄哉たちはリック指導のもとギルドにたまっている依頼をこなしている。ギルドは地域に溶け込むため依頼を受けていたりもする。だがしかし冒険者たちはこのような報酬が低い仕事を受けたがらないものが多い。ランクが低いものならば受けなくては食べられない時もあるのだがその低いものの多くは襲撃によって連れ去られたり大怪我を負ったりとかなり数を減らしいている。
そして雄哉たちはランク10、つまりはランクが低いものでありそれを受けなくては一日の宿代すらないのだ。ダンジョンというところに攻め込むのもいいがこういうことも覚えるのだとリックは言う。

リックはランク5、熟練の冒険者といっても良いレベルらしい。ちなみに4はギルドの中の戦闘能力上位陣、3は今はひとりいるらしいが曰く格が違うとのことらしい。こうして数を重ねることによってランクが上がるのもあれば功績や緊急クエストの報酬としてランクが上がったりもするらしい、雄哉たちにとっては遠い話だ。
観鈴は魔法の練習として風の属性魔法でがれきをどかし修斗はラウロに教えてもらった身体強化魔法を試している。本来であればそこに行くにまでも時間がかかるらしいのだが勇者補正というやつである。その事実を考えると少し雄哉は申し訳なくなった。



なんとか家3件分のがれきをどかすことができてようやく依頼が終わった。リックはギルドに住んでいるので宿を必要としないがそれは宿より少しお金がかかるので始めた三人は宿を探すしかない。これもまた契約内容の一つである。宿を探しているとふとある店が目にとまった。なぜかといえばその店の周りだけ少し綺麗であったためである。こういうのはそこの近くで実力者が戦っていたということらしい。それはどうやら武具屋のようであった。なぜ分かるかといえば看板に丁寧に『武具屋』と出ていたためである。
扉にはおびただしいほどの南京錠がついており扉には少し何かを打ち付けたような跡が見られた、恐らく火事場泥棒かなにかのしわざであろう。だが扉を破ることはできなかったようだ。

「おお、雄哉殿どうなされましたか」

その声に振り返ると見回り中というたすきをかけたラウロがいた。
第一隊は戦争がなければ暇な部署と聞いていたが他の隊の人はがれき除去に借り出していて街の治安が不安なためらしい。

「いや、だいぶ錠前がついているなと」

「ああ、そのお店ですか」

「知っているの?」

ラウロの言葉に美鈴が問う、修斗は何か考え事をしているようだった。

「ガンジ、というこの国でも一番腕の良い鍛冶師が一人で切り盛りするいいお店でした。暇なときはよくお世話になりました、これ見てください」

そういってラウロは腰から一本のカトラスを取り出した、
その刀身は淡く光っている。

「ガンジ殿に剣が疲弊するたびに打ち直してもらったカトラスです、あの戦いの時に切れ味重視の剣だというのによくもってくれました」

そう言ってラウロは少しうつむいた、恐らく魔の国に襲われた時のことを思い出していたのだろう。しかしすぐにハッとし話を続けた。

「実はレティシアの中でもかなり有名な武具屋だったんですよ?本人はいつも自身を未熟だと謙遜していましたが」

「その人は?」

「...あの戦いで連れて行かれました。せめて彼だけでもいればあなた達の武器もいいものにできたのですが...たとえ既に出来ていたとしてこの状況では………」

そう言って4人はしばらく武具屋を見ていた。雄哉はラウロの話を聞いてガンジという人物について考えていた。




「いい度胸だなぁ?お前捕虜の身分で」

「………」

現在、あいも変わらず牢獄の中。目の前にはいつもいた兵士よりもだいぶ屈強な男がいた。見た目的にはオーガといってもいいだろう。オーガだって普通に暮らしているものはいる。コイツはその部類に入るのであろう。しかし、兵士と比べて大分装備が豪華だ。見た限りではゴールドシリーズに魔物の素材を組み合わせているように見られる。違う、あまりにも装備が違う。そう思っていると背中に担いである大鎚に目がいった、素材は恐らく魔鉄鋼、長さ、カスタムの仕方、そしてなによりあの持ち手についている印、その視線に気づいたのかオーガは愉快そうに大鎚を掲げた。

「お?分かったか、その通りこいつはてめぇから奪った武具だよ。本当にいい腕してんなぁお前、このオーガ族長が全力で使っても壊れねぇとはyよぉ!ハハハハ!」

少し、石を握る力が強くなったような気がした。
今はまだ駄目だ、時を待つんだ、そう言い聞かせて俺は今日も聞かぬふりを通しながら石を握った。