複雑・ファジー小説

Re: 裏切りゲーム ( No.123 )
日時: 2014/04/03 17:27
名前: 咲楽月 ◆//UrPiQv9. (ID: bG4Eh4U7)

 秋樹は家路を急いでいた。今日は友人、影太と遊ぶ約束をしていた。1ヶ月後には、期末テストも待っていたが、そんなことは彼には関係なかった。どうせ、2週間前のテスト期間にならないと誰も勉強なぞしないのだ。……ただ1人を除いては。
 家に着いて、着替えると、早速引き出しを漁り始めた。もう、中学生にもなって、と母には文句を吐かれたが仕方ない。いつもの事だ。お気に入りの黒いウエストポーチにゲームを入れて、後は……
 ごそごそと引き出しを漁っていると、奥の方でくしゃっと何かが潰れる音がした。潰れるようなものなんて、入れてないはずなのに。不思議に思って、それを出してみると、黒地に赤と白で書かれた、なんとも派手な広告が目に入った。確認程度にその広告をさらさらと読み飛ばしていき———
 と、目が止まる。何か良いものを見つけたようで、目が釘付けになっている。
 彼はチラシの皺を伸ばすと、綺麗に2つ折りにし、ウエストポーチに突っ込むと、影太の家へと駆け出した。



「……でさー、そのチラシなんだけどー、あ、これ」
「うわ、お前それ、マジで持ってきたんかよ……。どれどれ」
 影太の部屋。白壁に、至って普通の茶色いカレンダーが掛けられている。勉強机の上も綺麗に整頓されていて、教科書やらノートやらはしっかり本棚に納められていた。男子の部屋にしては殺風景だし、綺麗に片付いているな、と秋樹は思った。
 秋樹が差し出したチラシのタイトルは『君もゲームの一員にならないか!』というものだった。紅く血塗られたようなその模様が、何とも印象的だった。

「ふーん。で? 何で持ってきたんだよ」
「英孝……。お前アホだな。此処だよ此処!」
「その呼び方は止めろな」
 英孝と言うのは影太の渾名あだなだ。加納 影太、という彼の名前が、某お笑い芸人と似ているということから付いたのだ。

 秋樹が指した先には、注意書が添えてあり、そこだけ白抜きになっていた。
『参加するには、自分の他に2人連れて来なければならない』
『その2人の条件は、1人は自分と同性、
 もう1人は自分の異性であることが絶対である』

 しかし、彼は何処でこれを手に入れたのだろうか。学校で受け取ったのなら、影太も持っている筈なのだが、これは初めて見たと思う。まあ、別に参加する訳でもないからどうでも良いのだが。

「……ふーん。それで?」
 影太はそう言うと、顔を上げ———



 鈍く打撃音が響いた。