複雑・ファジー小説

Re: 裏切りゲーム ( No.126 )
日時: 2014/04/04 20:38
名前: 咲楽月 ◆MawehM.pH2 (ID: bG4Eh4U7)
参照: 背後霊って怖いよねー。

「ねえねえ雪ちゃん、食べていい?」
「いや、俺に訊くなよ……。それ、夏芽が作っt「戴きまーす♪」ちょ…」
 さくっと軽い音がして、皿の上にクリームが落ちた。部屋の中には甘い香りが漂っていた。部屋の印象も甘く……はなく、水色で大体が揃えてあった。外からは綺麗な日差しが入り、部屋の中を照らしていた。

「うーん、おいしいね〜♪」
「いや、あの、本当にそれ俺が作った訳じゃn「さっすが夏姉! 本当に上手だねぇ〜」…」
 夏芽と呼ばれたその少女は、皿にたっぷり盛られた黒い塊を持ち上げて口に入れると苦笑いしてこう言った。塊から、ポロポロと欠片が落ちた。

「まあ、クッキー真っ黒にするような誰かさんと比べればねぇ……。おまけにラップ入ってるし。何処でラップ使ったのよ。クッキー作るのにさ」
「うぐっ……。分かってるよ……。だからこうして教えて貰いに来たんじゃないの……」
 少女、春光は顔をしかめると彼女が作ったであろうその"クッキー"基"黒い塊"を口に入れた。
 ———苦い。最初の感想はそれだった。そして、しっとりとしている訳でもなく、夏芽のクッキーのようでもなく、堅揚げ煎餅でも食べているようなその堅さ。それに纏まってもいないし、妙に平べったい。お世辞にも"おいしい"とは言えなかった。
 彼女は溜め息をつくと、もう1つのクッキーを食べ始めた。周りに砂糖が付いているので溢れないように皿を持って食べる。勿論、甘い。その甘さで、彼女はなんだか泣けそうになってきた。涙が滲んでくる。

「……はあ〜。夏姉も雪ちゃんもこういうの上手なのにな……。なんで僕は出来ないのかな……」
 俯いて、弱音を吐いてしまう。春光の悪い癖だった。夏芽たちは顔を見合わせると、春光に対してこう言った。

「なに、言ってんd「何言ってんの。ハルにだって得意なことはあるでしょう? それがあたしたちの場合はたまたま"料理"だったってだけだよ」…」
「うん……。そうだね、ごめん、夏姉。もうちょっと頑張ってみるよ。ごめんね」
 春光は夏芽に向かって微笑むと、夏芽と共に立ち上が———れなかった。背後霊、基少女、雪夜に服を掴まれたからだった。ねえ、と低い声で呟く。普通の人なら恐れるのだろうが、彼女たちには慣れっこだった。しかし、前髪が顔にかかっていて、春光の方から見ると本当に背後霊のようだった。

「あれ、雪ちゃん、居たの」
「雪夜、どうやって入ってきたんだよ」
「お前ら酷くねッ!? 春光は俺が作ったクッキー勝手に食べてるしッ!!」
「ゆきちゃん、なんで"っ"だけかたかななのー?」
「お前はなんで全部平仮名なんだよっ!」
「え、だってさー」
「ねえ?」「うん」
「つーか抑、此処俺ん家! 俺の家だから!」
「何騒いでるの。……でさあ、夏芽」
「ちょ、おい「うん。じゃ行こうか」無視すんなよおおおおお」
 2人はもう1度立ち上がると部屋から出ていった。

 ———と、チャイムが鳴る。雪夜は立ち上がると玄関の方へ歩いて行った。まさか、母が帰って来たのだろうか。今日は帰ってこないと言っていた筈なのだが……。そんなことを考えながら玄関を開けると、そこには秋樹と死体、基気絶した影太の姿があった。