複雑・ファジー小説

Re: 裏切りゲーム ( No.148 )
日時: 2014/05/02 20:02
名前: 咲楽月 ◆//UrPiQv9. (ID: bG4Eh4U7)
参照: お久しぶりです。今回は多分初・雪夜side!

『雪夜!』
 霧の向こうから懐かしい声がする。今はもう、顔も見なくなった親友の声。その霧の中から顔を出すようにして、少女は現れた。真っ黒で艶やかな、雪夜とお揃いのポニーテールが垂れ下がって揺れる。

 なあ、なんで笑ってるんだよ。お前はもう、

『ん? ああ、メイか。どうしたんだ?』

 ああ、そうか。

 昔の俺達だからか。



「……や、ゆきや、雪夜っ!」
 自分を呼ぶ声で目が覚めた。ゆっくりと目を開けたら、飛び込んで来たのは真っ赤な瞳。続いて、真っ白な部屋と、何人かの少年少女の姿。ゆっくりと起き上がると、真っ赤な瞳の持ち主は夏芽だったのだと気付いた。
 夏芽は雪夜が起き上がったのを確認すると、深く溜め息を吐いた。

「よかった。目、覚めたんだね。おーい、ハル〜 愛しのゆきちゃんがお目覚めだよ〜」
 言うが早いか。文字通り間も無くして、顔面が塞がれた。そのままぐらりと後方に傾いて、雪夜は春光に押し倒された。そして、首に抱きついてくる。

「ゆきちゃあああああああああん! 起きたのね、起きたのねっ! ああ、本当よかった。もしかして、ゆきちゃんが逝っちゃったのかと。だってさ、部屋の中心で倒れてるんだもんさあ。しかも、この真っ白な殺風景な部屋で。血こそ出てないものの、ゆきちゃんが毒殺されたのかと思ってさあ。部屋に入ったとき、慌てて鼻と口覆っちゃったよ。でも、本当よかったよ〜 これでゆきちゃんじゃない、とか止めてね? 本当にさあ」
 起きてまもなく、言葉を立て続けに並べられて頭が回転しない。ペラペラと止まらないとでも言うかのように、春光は話続けた。
 分かっているだろうか。今、彼女らは押し倒された格好なのだ。何も知らない輩からすれば、春光は所謂いわゆるレズビアン、変態にしか見えないだろう。

「レズだな。あれは」「え、今更!?」「春光って雪夜依存症なだけじゃないのか?」「うん、そうだよ」「即答!? ていうかそれマジ!? 誰でもウェルカムじゃないのか!?」「五月蝿い「お前一回黙れ」」「…」

 外野3人、夏芽・秋樹・影太の会話が聞こえるが、気にし(てはいけ)ない。雪夜はああ、もう、分かったから! と言って春光を押し退け、座り直した。

 雪夜の頭が回転し始めるには、それから丸々10分もかかった。