複雑・ファジー小説
- Re: 裏切りゲーム ( No.4 )
- 日時: 2014/05/12 22:07
- 名前: 咲楽月 ◆//UrPiQv9. (ID: bG4Eh4U7)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode
『——そしたらですね、なんとそいつが俺を裏切りやがって、俺の彼女にプロポーズしたんですよ!』
点けっ放しのテレビからそんな声が聞こえ、少女は目を覚ました。
「裏切り、かぁ……」
そんな事を呟いて、手に持っていたリモコンでテレビを消した。どうやら、テレビを点けたまま寝てしまったらしい。ぼんやりとしたままテレビの横の置時計に目を遣ると、時計は5時47分を差していた。体を起こすと腰に小さなハンカチが引っ掛かっていた。彼女はふっと微笑み、小さなハンカチを畳んで、立ち上がった。
彼女の家は古惚けた昔造りの一軒家である。周りに高層マンションや新型の家が立つ中、貧しい暮らしの彼女ら家族は家を建て替えたりすることはできない。
「ふにゃあ……。お姉ちゃん、おはよ〜……」
眠たそうな目を擦り、クマの人形を抱いた小さな少女が彼女の近くへと寄って来ていた。
「おはよう、舞。ハンカチ掛けてくれてありがとう。お隣さんからもらったご飯が有るから、着替えたら食べててね。お兄ちゃん達は…… まだ寝てた?」
「うん。玲兄ちゃんも遊依兄ちゃんも寝てたよ……」
「そっか、ありがとね。お姉ちゃん、お兄ちゃん達起こしたら学校行くからね」
そう言って少女、舞の頭を撫でた。舞は擽ったそうな顔をして、タンスの方へと走って行った。『お姉ちゃん』の彼女は「さあ仕事だ」とも言わんばかりに腕捲りをすると、隣の部屋へ入って行った。
隣の部屋は和室だ。畳の上な為、履いていたスリッパを脱ぎながら障子を開けた。開けると共にある臭いが鼻を擽った。
——汗の臭い。なんせ、この部屋は男二人の部屋なのだ。壁に掛けてある野球服、サッカー服、ボールやグローブが強烈な臭いを発していた。余りの臭いに思わず鼻を摘んだ。しかし、これは仕事。仕事なのだと自分に言い聞かせ、勇敢にも部屋の中へと進んで行く。10畳のその部屋の真ん中に、2枚の布団。そこから見えるのは綺麗な顔立ちの少年。2人は鏡に映っているかのように瓜2つで、左右対称のポーズで寝ているので真ん中に鏡が置いてあるかのようだ。そこに彼女はツカツカと歩み寄り、耳元で大きく
「お兄ちゃん! 起きてぇぇええ!!」
と言う。(叫ぶ)
案の定、耳を塞ぐ彼らの布団を一気に捲ると、あるモノが。
「お、お兄ちゃ…… 全裸で寝るなって何回言ったのよ! もう、それでも高2な訳!?」
顔を真っ赤にして叫んだあと、彼女は顔を両手で塞いだ。
「ん、ふぁあ……。あ、何だメイか。」
「朝っぱらから何騒いでんだ?」
キョトンと同じ顔つきで彼女、メイを見る彼ら、遊依と玲に肩を震わせて怒りながら、其の儘しゃがみ込み、エプロンの中に顔を埋めた。
「……お願いだから……」
「え?」
「お願いだから其の儘、其の姿の儘寝たりしないでよ! ……起こせなくなるじゃない」
「なんで駄目なんだよ」
「俺ら血の繋がった仲良し兄妹だろ?」
「きょうだいだったらなんでも良いの? そんな訳ないじゃない!」
「「良いだろ!」」
メイの肩の震えは大きくなっていく。今にも爆発するかに思えたその時、静かに声を漏らした。
「……とにかく、さっさと着替えてよ。それと、私の前で二度と裸にならないで!!」
咄嗟に顔を上げた彼女は、兄達から素早く目線を逸らして、エプロンを外し乍ら部屋を出て行った。
「あんなんじゃ、彼氏出来ないな。」
「ああ、まだメイに彼氏は作らせられねぇ。と言うか、彼奴に彼氏なんて作らせちゃいけねぇんだよ!」
「……シスコン」
「うっ煩ぇ! だ、だだ、黙れっ!」
そんな会話をされているとも知らず、メイは兄の制服を畳んでいた。
「メイーッ! 学校行くぞーっ!」
突然聞こえてきたテナーボイス。その声を聞いたメイは、瞬く間に顔を輝かせ、スクールバッグを持って外へ出た。
「お姉ちゃん、行ってらっしゃい」
「行って来ます!」
そう言って、外へ出ると、待っていたのは金髪の少年だった。