複雑・ファジー小説
- Re: 裏切りゲーム ( No.73 )
- 日時: 2014/03/18 23:59
- 名前: 咲楽月 ◆//UrPiQv9. (ID: bG4Eh4U7)
拓のカードは順調に減っていった。残りは2枚。元々、そこまで乗り気では無かったが、死なないでおけるのは有難い。兄を1人にするのも悪いしな、と片隅に兄の顔を思い浮かべながら、篠からカードを引いた。
カードは、スペードの3。さっき引いた、クラブの3と対のカードである。つまり、残り1枚。そのたった1枚となったカードを吠兎に引かせたら———
自動的に、拓の勝利だ。
先程まで少年と共にカメラを回していたⅦは、吠兎がカードを引くやいなや、拓の方へと近づいてきた。顔に、あの笑みを貼り付けて。
「拓さん、おめでとう。1番乗りだねー」
棒読み。まるで、書いてある文を読んだだけのような。なんとも思っていないようだった。確かに、前回のゲームでのⅦは、人を紅く染めることが楽しい、とでも言うような、そう、とても生き生きしていた。
彼女は拓を染めることを楽しみにしていたのかもしれない。
「じゃあ、あと2人が決まるまで、あたしと一緒にカメラ回して貰おうか。と言うわけで、ナベガ、帰って」
「僕は永部ですって……」
Ⅶは拓を立ち上がらせると、振り返ってカメラを回していた少年、永部に手を振った。永部はもごもごと口の中で呟きながら、部屋を出ていった。
「あ、続き、どうぞどうぞ〜」
拓の手首を掴んで、部屋の隅に移動すると、手を挙げて合図した。
結縁は変わらず無表情だった。隣人が順調だったのに対し、自分は不調であった。何故、こんな差が出るのかと、自分に苛立ちを覚えた。メイがジョーカーを引いたのならば、その鉄壁の表情は緩んだかもしれない。しかし、メイが引く気配は無かった。周りのカードは減っていく。彼女のカードは1枚も減ることは無かった。そんな彼女に、段々と、焦りが見え始めた。
手が汗ばむ。着物だからか、何となく背中に汗をかいて気持ち悪い。そのため、集中力も落ちてきていた。あぁ、早く対のカードを見つけなければ———。
と、悪夢はやってきた。
吠兎のカードが無くなった。