複雑・ファジー小説
- Re: 貴方と恋すると決めました〜未熟な僕達の恋愛論〜 ( No.16 )
- 日時: 2013/03/29 13:29
- 名前: 戻木 (ID: AHLqKRWO)
- 参照: 混じります
烏丸千冬視点
「という訳で、挨拶は以上ですわ。各自、自分の希望する科目教室にて寮の番号を、くじ引きで決めること。男女が同室でも交換は認めませんので宜しくですわよ。それでは今年も青春を存分に桜花して下さいな」
満開の桜が咲き誇る始業式。今は体育ホールで学園長である年齢不詳の如月愛姫先生の挨拶が終わった所だった。
此処に入学して5年目の春、毎年毎年変わり映えしない。
そう、変わらない・・・。学園長の露出の高さも、学園長の話中なのに大口を開けてあくびをしている、私が所属している演劇部顧問の大亥川先生も。せめて口押さえようよ・・・
「ねぇねぇ、烏丸さん。今年は卒業できるかな?」
同期の友人だ。彼女も先ほどからあくびを繰り返していたっけ。
「うーん・・・今年も卒業は無理かもね。まぁ、別に卒業したいわけではないからいいですけど。」
「えー、頑張ろうよー。まぁ、お互いにいい恋愛しようね!じゃあね」
音楽を選んでいた友人に手を振り、私もくじ引きをするために教室へと向かった。
私が選んだのは国語だった。最初ここに入学したときはなんで恋愛を学ぶ学校なのに普通教科があるのだろう?と思ったが、国語といっても『相手を落とす言語力』や『相手に興味をもたれる会話術』などの恋愛がらみの授業もある。さすがは恋愛を学ぶ学校『聖ロブン学園』
『選択教科:国語』と書かれた教室に入り、目に入ってきたのは人だかり、そしてその中心にある桜色の可愛らしい小箱。此処に毎年、寮の番号が書いた紙が入っていて、同じ数字が出た人同士で一年間同室になるのだ。
「今年はまともな人間と一緒になりたいな・・・」
いや、そう言ってしまうと去年のルームメイトが変な人だということになってしまうが・・・単に入学一年目の男子生徒で、変に気を使われたり反応1つ1つが過剰だったりしただけだ。まぁ、確か彼は14歳だったはずだし年上との共同生活は結構緊張したのだろう。まさか終業式の日に告白されるとは思わなかったけど・・・
よし、と小さく意気込んでからくじを引く。紙には210と書かれていた。
「二階かぁ・・・去年も二階だったからあんまり変わり映えしないかな」
同室の人間にもよるんだろうけど・・・こればかりは運任せだ。荷物を抱え、教室を出て行こうとすると
「あ、千冬さん!ちょっといい?」
教室でくじ引きの様子をチェックしていた先生、国語の担当教師の雨峰桔梗先生だ。今日の髪留めは蒲公英か。
「桔梗ちゃ・・・雨峰先生、なんですか?」
危うく名前で呼ぶところだった・・・お姉ちゃんと話すときはそう呼んでいるのでついつい本人の前でも呼んでしまいそうになる。どうも先生には見えないから困る。
「あのね、桔梗ちゃんね・・・ちょっとお願いがあるんだけど?」
こうやってにこやかに意趣返ししてくるところが尚更先生という感じではない。
「今日、千夏さんまた倒れたじゃない?」
私の姉、烏丸千夏はすこし体が弱い。いつもは元気すぎて困るほどだが、時々軽い貧血で倒れたりする。原因は今でもわかってはいないが薬は毎日飲んでいる。今日も式の途中で倒れた。すぐに起き上がったが念のため保健室で休んでいる。
「最後まで残ったくじでもいいけど、どうせなら代わりに引いてあげてくれない?」
まぁ、お姉ちゃんは残り物に福を感じる人間ではないから最後のくじよりも私が引いたほうがいいかもしれない。
「わかりました、引いて本人に届けてきます。」
「うん。荷物は私が大亥川先生にでも運ばせておくから、くじお願いね」
自分で運ぶ気はないらしい。あのめんどくさがり屋の大亥川先生がただで運んでくれるとは思わないが・・・どうせまた麻雀で負かせたのだろう。
もう一度くじを引き、保健室に歩き出した。
千夏視点
「やばい・・・暇だ」
始業式で倒れた私だけど、一瞬フラッとしただけで別になんともない。いつものことだし。
「先生もくじ引きの担当でいないしなー」
そろそろくじ引きも始まっただろうし・・・引きに行ってこようかな
そう思いベッドを降り上靴を履く。そして、出て行こうとした時だった。
「お姉ちゃんいる?」
と、私とほぼ同じ容姿の愛すべき妹、千冬ちゃんが入ってきた。
「おお、愛しのmy sisterじゃない!会いたかったぞー」
飛びつき気味にギュッと抱きしめる。うん、柔らかい。
「イエス、マイシスターだよ。よかった、元気そうだね」
そう言いながら千冬ちゃんもギュゥゥッと私を抱きしめる。
「ぐっ!というかマジで締まってる!痛い痛い!千冬ちゃん、それ愛の抱擁じゃない鯖折!お姉ちゃんガチで落ちる!」
そういうと冗談だよと、パッと解放される。危うく冗談で済まない領域に突入しそうだったが・・・。おとなしい外見の割に力半端ないからなぁ
「桔梗ちゃんからくじ引き頼まれて引いてきたよ、はい。」
そういって一枚の紙を差し出してきた。
「お、ありがとう!えっと・・・518か。千冬ちゃんは?」
「私は210。お姉ちゃんと離れちゃったね」
ようするに去年みたいにベランダから下に降りればすぐに会いに行けるわけではないと・・・
「だからって5階から2階までベランダ伝いで来ちゃだめだからね?」
「え、あ、いやいや!そんな危ないことするわけないデスカ」
さすが双子の妹よ・・・完全にばれてる。
「そ、それよりさ・・・もう歩けるから一回部屋に行ってみない?ルームメイトも気になるしさ!」
「そうだね、行ってみようか。千夏ちゃんの荷物は大亥川先生が運んでくれるってさ」
「んじゃ、まずは210号室だね!レッツゴー!」
寮に入ると二階から演奏と・・・歌らしきものが聞こえてきた。
「誰か歌っているみたい、ってことは210号室の隣のステージだよね。」
「そうだね〜これは冷やかしに行くしかないっしょ!ほらほら、行くよ!」
こういうイベントが大好きな千夏は千冬の手をつかみ、階段に向かって走り出した
「ま、待って・・・荷物、落ちっ、る。」
半ば引きずられながら千冬も階段を上る。
※※※
書き忘れていましたが姉妹の見分け方は髪の毛の艶以外は目じりです。吊り上がり気味なのが千夏、タレ気味なのが千冬です。