複雑・ファジー小説

Re: オオカミと嘘吐き姫 ( No.8 )
日時: 2013/03/30 22:56
名前: 飛雨 ◆xEZFdUOczc (ID: OMznPSTJ)


 そして悲しい程に澄みきった青空を見上げる。
フューシャピンクの髪が風に揺られた。
スノーホワイトのパーカーのフードを深くかぶり、キャメルのティアードスカートをぎゅっと両手で掴む。
その大きなラセットの瞳からは、今にも雫が零れ落ちそうだった。
 駄目駄目、泣いちゃ。
口をきゅっと一文字に結び、涙を堪える。
 私って弱いなあ。
折角堪えた涙がまた出そうになった。
 
 「ミリア」
 ミリアよりも少し高い声がミリアを呼んだ。
 「……リリちゃん」
 濡羽色のロングヘアーの彼女は隣のブランコに座った。
 「ごめんね、心配で追いかけてきちゃった」
 そう肩をすくめてみせる彼女。
 追いかけてきちゃった。それは友達だから、だろうか。
 爆発寸前まで高まった感情を抑え、ミリアは咄嗟に笑顔をつくった。
 「心配かけて、ごめん」
 感情のあまり入っていない声で返す。
 「ううん。そんなこと全然良いの。ただ、ミリアが辛そうだったから。
 本当皆酷いよね。あんな酷いこと簡単に口に出して」
 「ん、大丈夫……」
 「私、力になるからね」
 彼女はにっこりと、少し控えめに笑った。
刹那、ミリアが噛み殺した感情がまた喉元まで込み上げて来て。
一瞬、ほんの一瞬顔を歪めるミリア。
 そして直ぐに感情の欠片も無い笑みを浮かべた。
 「お母さんが亡くなったっていうの、あれはただの噂だってば。あたしにお母さんはちゃんといるよ」
 その作り笑いを、嘘を吐いてしまった罪悪感を隠しながら愛らしい笑みに近づける。
 そして言葉を紡いだ直後、ミリアはそのことを悔やむのだ。
そんな嘘吐いたって、母は帰ってこないのに。
 「そうだったの!? 早く皆に誤解だって言わなくちゃ!」
 先程のぎこちない表情とは打って変わって彼女はいつもの表情を取り戻す。
それを見てミリアは少し複雑な気分になる。
 自分の腕を掴む手をそっと払い、ミリアは笑う。
 「ごめん、今日は休む。皆に怒鳴っちゃってごめん、って伝えておいて」
 そう残し、誰もいない家への道を歩き始めた。