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「なぁ蒔田！見てこれ！」

ハイテンションタイガーの二つ名を持つ彼が私に自信満々に見せてきたのは、なんとも悪趣味なぬいぐるみだった。


【センス＜君】


「それ、何？」
「犬のぬいぐるみだ。可愛いだろ？」

晴れ晴れとした笑顔だが、彼のそれはあまり可愛いとは言えない。悪趣味だ……いや違う。センスがない。
手芸部に所属する彼とは中等部二年の時から同じクラスだった。その時の彼のセンスは素晴らしかったけれど、高一の夏、突然彼のセンスは置き手紙もなしに家出。以来、帰ってきていないようだ。本人は家出された事にすら気付いていないけど。

「…とらやん」
「ん？」

ここはセンスないよって言うべきかな？それとも黙っとくべき？って、いつも悩むんだよね。

「何でもない」
「何だよー!?」

目の前のハイテンションは不機嫌そうに、相変わらずハイテンションで頬を膨らませた。
だって、言ったらとらやん、ショックでもうぬいぐるみ作らなくなっちゃいそうだもん。私は、ぬいぐるみを作るとらやん、好きだよ。



(センスはないけどね)