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「お人形、遊び、ヤル？」

……誰か、助けてくれ。
速水直哉中等部二年生、ヤバイ先輩に絡まれてる。

「ヤロうよ」


【人形】


『やろうよ』が『殺ろうよ』に聞こえるのは俺だけではないと心の底から願っている今日この頃。マジで誰か助けて。
その先輩は、古びた何をモチーフにしたのかよくわからない人形を片手に、俺に手を伸ばす。
えーっと、すごく怖い。

「あの、先輩。もうすぐ授業始まりますよ」
「出ないヨ。遊ぶ」

嗚呼、俺は平坦に生きていきたいのに……もう相手するの面倒くさい。

「い、いい加減にしてくださいよ。最悪高校上がれなくなりますからね」

俺はそれだけ言い残し、踵を返した。走って教室まで行こうとしたが、クイッと袖を引かれる。ああもう、泣きたい……。
先輩は相変わらず、俺を無表情で見つめる。

「……」
「……」
「……分かりましたよ」

ああ畜生。俺は何事にも関わらず、ただ坦々と生きていきたかったのに、何でこうなるんだ。
……まぁ、それも難しいのかもな。
とりあえず今は祈ろう。



(このお人形遊びが、今日だけで終わりますように)