複雑・ファジー小説

Re: はきだめと方舟 [短篇集] ( No.21 )
日時: 2015/11/21 19:05
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: NtGSvE4l)



 ▼しがない独り言


 僕らは悪い、悪い夢をみていたのだろう。
 何故って。

 それは、僕がこの世に存在するかしないか、言ってしまえば、君が生きているかそうじゃないか、そういうことなんだ。
 意味が分からないと思われるかもしれないが、これは正しい。
 どうしようもない位に意味のない言葉も、数を重ねれば意味があるように思えてくる。

 これは、どうしたって、事実であるのだよ。

 みかんとりんごが違うっていうのは、きっと分かるだろう。
 木の種類が違えば、皮の厚み、甘さやすっぱさ、さわり心地だって違う。


 僕と君はどうだろう。
 髪の長さ、爪の長さ、目の色、目の形、身長、体重。どれも違う。
 けれど、僕らの内側にあるものは、なんら遜色ない。
 
 真っ赤な血液が巡り、酸素を全身に供給し、僕らの体を生かす為だけに機能しているんだ。
 つまり、僕らは悲しくも、良くも悪くも、同一の物体であることに変わりは無い。

 考え方だなんて、そんなものは経験値と人生の質さ。
 僕より年上だろうが、馬鹿みたいなことをして人生棒に振ったり、過去にしがみつく奴だっているじゃないか。
 あの頃に戻りたいだの、あの時こうしていればだの、あいつが原因で、だなんて。
 滑稽にも程があるとは思わないかい?

 君は本当に「今このとき」生きているつもりかい?
 言っちゃえば、君の過去に縋る気持ちの全てはいらないんだよ。
 後悔したからなんだ? あやまちがなんだ?
 今の君を構成する何かに変質した瞬間、そんなものは必要ないだろう?

 それでも、まだ、縋り続けていたいなら、君は本当の大ばか者になってしまうだろうね。
 僕は全然構わないけれど、ただ、僕の前からはいなくなっておくれよ。

 ……親友だなんて、笑わせないでおくれ。
 そこにただ、僕と君しかいなかっただけさ。昔から、たった二人でしかいられなかっただけだ。
 都合の良い、暇つぶしだったろうよ。

 なにせ、僕は君の価値観を受け入れることなんて出来ないのだからね。



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 僕の世界を構築する全てに、君はいない。
 僕の世界を構築した全ての君を、僕は壊してしまいそうだ。

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 捻くれ者と愛されたがり。