複雑・ファジー小説
- Re: ~Salt Road~ ( No.4 )
- 日時: 2013/06/25 15:42
- 名前: 世移 ◆.fPW1cqTWQ (ID: JPHHUoHb)
- 参照: 作者は戦闘描写が大の苦手です
2話 塩商人と勇者
「」
「どうしたのさ。アイルちゃん」
塩商人さんが血まみれの姿でにこやかに言った。開いた口が塞がらないと同時に私は理解した、同期の中でもこんな旅をするのは私一人だと。
「そ、それドラゴンですよね?」
私は後ろの真っ赤な肉塊を指さす。
「おー!良く知ってるね!これまだ子供だけどさ」
「そ、それで?」
「うん。もっと大きくなるよ。今まで見たドラゴンでも相当小さいね」
塩商人さんの後ろに横たわっているのは5mはあろうかというドラゴン。だったものだ。
ドラゴンは魔王が現れる遙か太古の時代から『魔物の王』と呼ばれ恐れられていた種族だ。
子供だと言っても、王国騎士15人で討伐できるかどうかというところだろう。大人になればもう手が付けられない。過去の伝承ではドラゴン一匹で国一つがほろんだという話があるくらいだ。
しかし塩商人はそれをたかが量産品のロングブレード一本で首を切り落とした。
化物。私の頭の中にそんな言葉が浮かび上がる。
「もしかしてアイルちゃん僕の事怖い?」
「‼ い、いえ……」
「アイルちゃん。本心を言ってほしいなあ」
「……正直怖いです。ドラゴンを瞬殺とか……」
「ふふふふふ。こう見えても元勇者パーティだからね!」
ドヤ顔で塩商人さんが言う。私はそれに驚く。
「ゆ、勇者パーティ!? それってあの勇者アベル様の!?」
「そうさ、というより勇者なんてアベルしかいないじゃないか。というかアベル様なんて呼ばれているのか……」
「す、すごいです!!尊敬しますよ!」
勇者アベル 30年前に突如出現したといわれる魔王を10年前に打ち倒した存在。いわばこの世の救世主にして英雄。
そんな勇者パーティの一員。今では勇者パーティはほぼ全てが出身国に戻り、高い地位にいるという。普通の一般人ならまず会うことのできないぐらい偉い人だ。そんな私とは次元が違うと言ってもいい人が私の前にいる。それに私はただひたすらに感動した。
「塩商人さん!名前は」
「さあ、昔話はこれ位にして、ドラゴンの死体から色々はぎ取るよ」
商人さんは遮るようにそう言い、私に大きなサバイバルナイフを投げてよこす。私はずっしりと重いそれを何とか受け止めた。
「は、はぎ取る?」
「ドラゴンの肉は滋養強壮、鱗と牙は武具に。血は魔術触媒とかありとあらゆるものすべてに使える。要するにとてつもなく高値で売れるんだ」
「剥ぎ取り……」
さっきまで生きていて空気が震えるほどの鳴き声を上げ、火を吐いていたあれを解体する。私にできるのだろうか?そん不安が頭をよぎる。
「さあ!!やるぞー!!」
塩商人さんがロングブレイドを天に掲げていった。
そんな塩商人さんの様子を見て思った。もう良いや考えないでおこう……。と
そして私は考えるのを放棄した
解体し馬車につみ終わった後、私は思った。この人塩商人じゃなかったっけ?