PR
複雑・ファジー小説
- 第4章「追憶の日々.2」 ( No.12 )
- 日時: 2013/08/12 19:16
- 名前: 黒羽 (ID: mKkzEdnm)
並べられた墓石には、それぞれ歪ながらにも名前が刻まれている。そしてそこには、レイル=リフレイン、の名前もあった。
「こうやっているだけで、俺は忘れないで要られる。ミラにとっては、不必要かも知れないがな。」
夜風が通り過ぎた。栗と黒の髪が揺れ、表情を硬くした二人の姿を浮き彫りにする。呼吸を忘れたかのような無意識の空間、女はおもむろに口を開き
「レイルは、ここを出て行くの?」
普段と変わらない、感情の籠らない声で質問をした。しかし、男には其れがとても哀しそうに聞こえたのである。ただ、そう思いたかっただけかも知れない。
「そうしないと、俺が生きてきた意味が無くなるから…ごめんな」
気が付いたらそう返していた。彼女に対して、こんなに複雑な心境になったのは初めてな気がする。彼女が今、どんな顔をしているか見たいが、自然とそれは阻まれた。並べられた墓石から視線を外す事ができずただ眺めるばかりである。そして、暫しの間を開けて
「なら、私も行く」
そう口にした彼女は幹から飛び降り、ゆったりと着地した。返事を聞く必要が無かったのか、聞きたく無かったのか。それは定かでは無いが、止めるだけ無駄だろうて。苦笑いを零して男も梯子を降り始めた。お互いの思いはかくしてまたもすれ違い、時間を刻み始める。
PR
