複雑・ファジー小説

第2章「遠くない未来.3」 ( No.6 )
日時: 2013/07/03 22:54
名前: 黒金 (ID: vLjWsTsT)

「........っ....?」
右肩の痛みと頭痛にさいなまれ眼を覚ませばそこは薄暗い牢屋だった、両手首にロープを巻かれ、イスに足を固定され拘束されている、暫し何が起こったのかと逡巡したがそれをする必要は無くなった。
「やっと眼が覚めたか」
聞き覚えのある男の声が聞えたのだ、短い赤髪を鳥の巣のようにボサボサに生やし何をしたらそのような形で固まるのか不思議なくらいツンツンしていた、体格はこちらよりやや大きめでだいたい170~180くらいであろうか。
「なぜこんな事をした?」
こちらが相手の様子を見ていれば相手から問いを投げかけてきた、なぜ、と問われれば答えは単純なのだが、そんな言葉を相手に告げようとは思えなかった、何を語ろうが変わる気がしなかったのである、ただただ、レイルは黙って若い男を睨むのである。恨めしい、憎い、そんな思いしか彼の脳裏には無かった、死を覚悟した時はこんな物なのだろうか、全ての事柄がどうでもよく思えてきてしまうのである、たった一つの事実を除いて、であるが。
「そうか、だんまりか...じゃあ質問を変える、あの集落で何があった?」
こちらの様子を見た男は少し待ち、言葉を繋げた、あの集落で何があったか、と。よもやこいつは何も知らないのか?確かに言動を踏まえれば納得してしまう所もあるが、本当に知らないのだろうか、ただ一つ言える事は、こちらも知らない、ということだろうて。
「知らない」
「じゃあ集落に並べて立ててあったお墓は何だ?随分と手入れが行き届いていたが、とても暫く放置してあったようには見えないし、何より、俺は集落が焼け落ちてる何て国から聞いてない」
「ッ....」
そこまで見に行ったのか、おそらくあの惨状も全て見た上での質問であろう、しかし、信用できない、全てを語るに足る人物なのか。ハッキリと頷ける程コイツ等に対する恨みつらみは浅くない、語る事は拒まれた。しかし、代わりに出る言葉は他になかった。
「お前に話す事は無い、殺せ」
ただそれだけだ、つのらせた恨みはそう簡単に晴らせる物ではなく、ただ逃げたのである、これまで生きる糧として恨んでいた相手にそんな奴が居るというのは認めたくなかった、しかし目の前の男は軽く笑い
「ここで死んでいいのか?」
と言葉を発した、無論、良い訳も無く小さく舌打ちをして視線を逸らした。死んで終われたならば、あの日一緒に死んでいたのだから。
「全て話せ」
こちらの様子を伺っていた男に言葉を続けられ、負けた気がした。なぜ殺そうとした相手をそこまで信じてやれる?お前にはお前の信じる何かがあるんじゃないのか、なぜ、恨まずにいられるんだ。
「.....数年前...」
そして男に、起こった事の全てを語り始めるのである。