複雑・ファジー小説

Re: 【参照200突破!】ウェルリア王国物語【加筆修正】 ( No.59 )
日時: 2013/08/18 20:55
名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: 7Hzptsk2)

■CHAPTER 27■ 喫茶店の老婆

カウンター越しに老婆を眺め、イズミは重たい口を開く。

「貴女、"呪術師"ですよね」

ゆっくりと。

老婆は伏せていた顔をあげた。
その表情から老婆の感情を読み取ることは出来なかった。目を見開いている。

老婆は、キリの姿をじっくりと観察し、それからイズミに目を向けた。
イズミの顔を一瞥した老婆の顔が、途端に歪んだ。

「……お主…………」
「はい? どうかされましたか?」

イズミがにっこり笑顔で首を傾ける。
老婆は眉根をぐっと引き寄せると、イズミの顔をもう一度じっくりと見つめた。

「知っておる……。ワシは知っておるぞ」

枯れ木のような手を伸ばし、老婆はイズミの頬に触れていた。
そして。目、鼻、唇へと、順に節くれだった指で、それらをなぞってゆく。
そのかん、イズミは嫌がる素振りをみせずに、黙って老婆の行いを受け入れていた。

隣りにいたキリは、流石にこの時ばかりは喫茶店の食事のメニューから目を外し、老婆の奇妙な動作にただただ目を見開いていた。

老婆の手がイズミの衣服の中に忍び込んだ。

その突然の老婆の破廉恥はれんちな行為に、我に返ったキリが慌てて老婆の手を払いのける。

「ちょちょちょっと何やってんの、おばあちゃん!!」
「いやア、若いって、良いサねえ」
「ボケてる?! おばあちゃん、ボケてるでしょっ!!」
「ヒッヒッヒ。いや、つい、手が。そう、勝手にナ」
「ふざけてるでしょ、おばあちゃんっ……!!」

イズミは襟元を整えて、困った様子でため息を漏らした。

老婆はしなびれた顔に不気味な笑みを張り付けると、苦笑しているイズミに向き直った。

「冗談はさておいて。お主、確かにそっくりじゃ」
「そっくり?」
「娘っ子、お前には言っとらん。ああ……その瞳…………まるであの方を目の前にしておるようじゃ」

怪しげな言葉を発する老婆の顔を、イズミは微笑みをたたえて、じっと見つめ返す。

「ああ、そっくりじゃ。呪術師レーゼ様にな」