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複雑・ファジー小説
- Re: 【参照400突破!】ウェルリア王国物語-眠れる紅い宝石- ( No.74 )
- 日時: 2013/10/12 17:44
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: Zxn9v51j)
「……あ……すまん。脅かしちゃった、か?」
リークが恐る恐るその手を離すと、フィアルがゆっくりと振り向いた。
その見知った顔に、フィアルは、ほう、と安堵のため息をつく。
「やあ……リーク」
「お前、……どこ行ってたんだよ、フィアル。朝っぱらから突然いなくなったりして。……オレ、心配、したんだからな」
「……ごめん」
「なに謝ってんだよ。オレが"らしくない"こと言ってんのに。ツッコミも無しかよ」
「あ、……うん。……そうだよね、ごめん」
——やはり何処かおかしい。
直感的に、リークはそう思った。
フィアルの反応が、いつもより格段に鈍いのだ。
リークはしばらく乾いた笑い声をたてて間を埋め、それから冗談混じりに、
「オレ、てっきりフィアルってば悪者にでも連れ去られたのかとか思ってたんだからな」
そうして横目でチラリとフィアルを見やったが、当の本人はその言葉に反応するどころか、俯いたまま、顔も上げようとしなかった。
言葉に詰まったリークは、腕を組んだまま眉を顰め、
「……まあ、無事だったんだから、それで良いんだけどな」
「……うん」
「ああっ! そういえばオレ、このあと正面玄関の門番なんだわ。フィアル、オレ、任務遂行してくるな!」
わざとらしいほどに明るく元気な声を張り上げ、片手を上げてその場を後にしたリークは、しかしなんとも言えない違和感を感じつつ、仕事場に向かうのであった。
一方で——。
その場に残されたフィアルは、冷めてしまった紅茶に口をつけ、ぼやく。
「このままだと……」
誰にも聞こえない、独り言で。
「……ボクは、どうすれば良い……?」
静かに。
その言葉は、呟かれるのだった。
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