複雑・ファジー小説
- Re: 【イメ画】ウェルリア王国物語-紅い遺志-【真実への序章編】 ( No.120 )
- 日時: 2013/12/25 23:16
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: SU4m4287)
「こい、イズミ! オレが相手だっ!」
「はいはい。分かりました」
「くっ……。おいイズミ、オレがAクラスだからって、舐めんなよ!」
「誰も舐めてませんけど」
「覚悟おおお!」
リークは叫ぶやいなや、手にしていた槍を振りかざしてイズミに突進していった。
「……あまり物騒なのもどうかと思いますが」
イズミはそう呟くと、突進してくるリークに向き直った。
キリとアスカはただはらはらしながらその場を見守るしかない。
「おい、いい加減観念しろ。イズミ!」
「それは無理なお願いですね。ここで降参したら、これまでの僕の苦労が無意味になってしまう」
「そんなこと知らん!」
「相変わらず話を聞いてくれませんね……」
ため息をつくイズミに、槍を突き上げるリーク。
瞬間、その手から槍が転がり落ちた。
イズミがリークの手を捻ったからだった。
カランカラン……
乾いた音を立てて、転がっていく。
「ぐっ……!」
「観念してください、リークくん」
笑顔でリークを見据えるイズミの手には、先程リークが落とした槍。
キリとアスカは歓声を上げて、思わず拍手していた。
「……おいイズミ。後ろががら空きだぜ!」
刹那、もう1人の門番が、そのような言葉を吐いてイズミに襲いかかった。
- Re: 【イメ画】ウェルリア王国物語-紅い遺志-【真実への序章編】 ( No.121 )
- 日時: 2014/03/07 12:43
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bh4a8POv)
即座に反応して振り返ろうとしたイズミであったが、それよりも先に、キリが反応した。
短剣を構えて門番の槍を受け止める。
「イズミさんっ、大丈夫?」
「キリさん……、すみません」
キリはにっこり笑顔を向けると、受け止めた槍を跳ね上げて、その切っ先を門番に鋭く向けた。
「ねえオジサン。ここを通してください」
「人に物を頼む態度か、それ」
思わずツッコミを入れるアスカ。
アスカの言葉に門番も必死にこくこくと頷いて同意する。
「……ねえ、お願いよう門番さん。私たちは今から、とっても大事なものを取り返しに行かなくちゃいけないの。ね、だから……」
申し訳なさそうに眉尻を下げ、しかしなおも短剣を相手に向けたまま頼み事をするキリ。
その背後で、リークがフンッと鼻を鳴らした。
「へっ。そういう不審者をここで追い返すのが、オレたち門番の仕事なんだよ!」
「もしもしリークくん、」
名前を呼ばれ、リークは声のした方れ思わず振り向いた——否、振り向くよりも早く、突如イズミに槍の柄で一撃されたのであった。
2,3歩よろめいて、そのまま頭を抱えてうずくまる。
頭上から、イズミの声が降ってきた。
「リークくん、後ろががら空きでしたね」
「くっ……そお……!」
悪態をついたリークの意識は徐々に薄れていくのであった。
——さあ、残り1人。
この門番を倒せば、無事に城内に侵入出来る——イズミがもう1人の門番の方を振り返ると、キリが未だに言葉で門番を説得していた。
「…………」
言い争っている2人に、無言で近づくイズミ。
そして、
「がっ……!」
イズミは無言で、門番の頭に槍の持ち手部分を振り下ろしていた。
ゴツンと鈍い音が響き、問答無用に門番はリークと同じくその場に卒倒した。
「ああああーっ! 酷いよイズミさんっ」
刹那、頬を大きく膨らませて抗議するキリ。
イズミは思わずビックリして目を瞬かせた。
「酷い、って、……何故ですか?」
「私はね、……無駄に人を傷つけたくはないんだよう」
「あのですねえ、キリさん。だからって、話が通じる相手だと思いますか」
「でもでもおー、もしかしたら聞いてくれるかも知れないじゃんっ!」
「全く……。君は相変わらずのお気楽思考なんですから……」
「ふえ?」
「なんでもありません」
イズミは槍を振り下ろして地面に置くと、伸びている門番2人を代わる代わる見つめた。
膨れっ面のキリの横で、アスカが口を開く。
「イズミ、こいつらをどうする気だよ」
「この人たちをそこの駐留所に縛って、僕たちはこのままお城に侵入しましょう」
「そうか。そうだよな!」
「まあ……門番と連絡が取れなくなったとなると城側は大混乱。……侵入がバレるのも、時間の問題でしょうが、ね」
「おーい何してんだよイズミっ、さっさと縛り上げるぞ!」
「アスカ、なんてこと言ってんのよお! 酷いようっ!」
「なんだよ! 縛って動けなくさせないと、オレらが侵入したことバレて、それこそオレの父親に縛り首にされんぞ! それでもいーのかよ」
「そっ……、それは嫌だけどおー……」
「ほら! そっち持って、運んで!」
「うー……」
そうして3人は、着実に城へと侵入したのであった。
この先に待ち受ける、嵐の中へ——。