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複雑・ファジー小説
- 突然の展開すぎ…?(;´∀`) ( No.161 )
- 日時: 2014/03/07 01:18
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bh4a8POv)
イズミ以外の全員が一斉に息をのんでいた。
「レーゼの娘……?!」
ざわめく兵士たち。
ウィンクはそれには気にも留めず、ひたすらイズミに話しかける。
「イズミちゃん、もうやめて。父さんはこんなこと望んでない」
「……でも、姉さん。殺される直前に父さんは俺たちを集めて言ってただろ。父さんは罠にハメられたんだって。…………そしてコイツにっ……、殺されたんだっ……」
「イズミちゃん……!」
姉の言葉には目もくれずに、イズミはヨハンの喉仏に更に剣を押し当てた。
ぷつりと喉元の薄い皮膚が破け、血の玉が浮かび上がってくる。
ヨハンは薄っすらと乾いた唇を開くと、ふっと目を閉じた。
「…………殺せ、イズミ。それでお前の気が晴れるのなら」
「っぐ…….! っ……ぁああああ!」
「やめてイズミっ————!」
イズミの絶叫とウィンクの悲鳴が室内に木霊す——と、そこへ、実験室にこもっていたノアルが駆け込んできた。
その手には、何故か紅く輝く水晶玉が握られている。
「イズミぃっ!」
ノアルが水晶玉を高く掲げると、水晶玉から光が放たれ、そこに大きな人影が投影されるがごとく現れた。
【レーゼの幻影】——それは、水晶玉にずっと込められていた【レーゼの魂の欠片】であった。
- 新たな謎…? ( No.162 )
- 日時: 2014/03/07 20:48
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bh4a8POv)
『イズミ、アリス、』
優しい男性の声が、対策室全域に響き渡る。
『復讐に手を染めるのではないよ。憎しみは新たな憎しみを産み出すだけだ。そしてこの男、ヨハンのように、後悔が残るだけだ。私はお前たちに後悔はして欲しくない。出来れば苦しい思いもさせたくなかった……。憎しみは希望の光になるようなものではない。憎しみが生み出すのは絶望の産物だ。それ以外の何モノでもない。人が死ぬのは運命。これを受け入れろ』
「父さん…………」
「なん……で…………父さんが……ここに……?」
キリやイズミたちがそのように身を硬直させている一方で、ウェルリア兵たちは、突然のレーゼの出現に戸惑いの色を示していた。
が、すぐにレーゼを捕らえようと兵士たちはそれぞれ発砲したり捕まえに行くも、それは幻影のため、姿形はまるで掴めない。
レーゼは兵士たちの横暴には構わずに、イズミとウィンクに話を続ける。
『……【アスカ王子】が【奴ら】に捕まってしまったのは残念だ……。こうなることは分かっていた——だから私は【私の魂の破片】をアスカ王子に刷り込ませて城に向かないように警告していたのだが……その想いよりもよっぽど強い想いがあって城に向かったようだな……』
キリの心臓が跳ねた。
「アスカが城に行きたくないって言ってたのは、レーゼさんの魂の破片のせい……だったんだ」
何故だか嬉しくなって、思わずギュッとスカートの裾を握りしめる。
「私のことが嫌になったから"ああなった"んじゃ、なかったんだ……」
「…………父さんは、ずっと俺たちのことを見てくれていたのか」
ひと呼吸おいて、イズミが震える声を抑えてそう質問した。
目の前の幻影は、微笑したかのようだった。
『水晶玉に残した私自身の魂の一部だけだがな。同じ血筋の者の手にこの水晶玉が触れた直後からこの力を解き放つように呪いをかけていたのだ。が、まさか水晶玉が割られるとは想定していなかった……』
「このノアルが水晶玉を修復したおかげでこうしてレーゼさんが表に出てこれたと言うわけだ」
「そうだったのか…………」
「フッフッフッ。驚いてるな、イズミ。しかしその方法は企業秘密だっ!」
「……だから俺が水晶玉に触りたくなったのは、ああ、全て父さんの望んでいたこと…………」
「——フンッ。それにしてもこんな大事な水晶玉を割るとは、どこのお馬鹿さんがやらかしたんだね?」
そうして、んー?とキリたちの顔を順番にのぞき込んでいくノアルであったが、そもそもの元凶であるキリは、次に発せられたレーゼの言葉で首を締められた気がした。
『【カノン】は——………………いや、そうか。今はその時ではないな』
——【カノン】……?
『——イズミ、アリス、お前たちはよく頑張った。ありがとうな、イズミ、アリス。あとはウェルリア王国の本当の歴史を暴いてくれ。【真の黒幕】はこの男ではない。——無念のうちに殺されたファーン家の者たちの為にも、真実を解き明かしてくれ』
——カ、ノン…………って……。
キリは思わず呟いていた。
——イズミも言っていた。
【カノン】。という、人物。
「今はその時ではない」ってレーゼさんは言ってたけど、……
——そもそも【カノン】って一体…………。
「…………けどっ……、父さん!」
イズミが歯をギリギリと噛みしめる。
「それでも俺はコイツが…………!」
ヨハンの頭を引っ掴み、更に剣を押し当て、その目を間近で睨むイズミ。
「俺……は…………」
- 真の黒幕は…? ( No.163 )
- 日時: 2014/03/07 21:33
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: bh4a8POv)
唇を噛みしめる。
——だが、すぐに頭を振った。
「……っ、やっぱり…………ダメだ。父さんの仇であっても、この人は僕を本当の子どものように可愛がってくれて…………本当に愛してくれた。そんな人を……殺すことなんて、……出来ない」
「イズミちゃん…………」
「イズミ……」
「先生、…………ごめんなさい。俺っ……」
そう言って目に涙を浮かべたイズミを、ヨハンは静かにそっと抱き寄せた。
「私は大丈夫だ、イズミ。……すまなかった」
「……先生、…………俺の方こそ、ごめんなさい……でも……でも、俺っ……!」
『それで良いんだよ、イズミ。この男は黒幕の思うように操られていただけなんだ。恨むのはそいつではない』
「じゃあ、どこにっ……?!父さんのいう【黒幕】はどこにいるのです?! っ……。父さんくらいの呪術師なら、分かるはずだ……っ」
ヨハンを突き放し、イズミは幻影に向かって叫ぶ。
「教えてくれよ。父さんっ。俺に、黒幕の正体を……。でないと、俺は……誰に報復すれば良いんだ…………」
『報復はもう良い。もう充分だよ。……ただ、お前たちに【黒幕】の正体だけは伝えて置かなければいけないな。そもそも【黒幕】は自身の目論見とその正体がバレたと思い込み、私をまんまと殺したのだよ。その男をたぶらかしてね。ソイツ……は、…………だ』
「……なに? 父さん。聞こえない」
『残念…………時間が来てしま……だ。水晶玉……の魂の破片が……残り少な……うだ』
「父さん……!」
『最期にこれだけ…言って……。奴は、……お前たち……の近くに…る』
突如、映像がブチンと切れたかのように幻影が消え去った。
水晶玉は元の透明な水晶玉に戻り——ちなみにこの水晶玉は、生前レーゼが使っていた占い用の水晶玉であった。
「俺たちの近くに………いる」
剣を力強く振り下ろす。
そして、イズミは周囲をキツく睨めつけていた。
——【黒幕】がこの近くにいる。
……ソイツ、は————。
「どこだっ! 出てこい!」
そう言って————刹那、キリに剣をかざし、瞬時に詰め寄る。
「——キリさん、あなたか」
「えっ……」
思わず半歩下がっていた。
——その、圧迫感に。
「イ、ズミ……さ、ん…………?」
「自分のことも家族のことも何も分からない——そのことが何よりの証拠だ。本当は記憶があるんだろう。……そんな都合の良いことがあるか。【10年前のあの日】から姿を変えて……お前はっ……!」
「し、知らない……です、……よ。私、何も……」
心拍数が跳ね上がる。
と————。
ふいに頭が痛くなった。
【割れそう】に痛い。
「本当に……私、じゃ…………」
頭がズキズキする。
なんで、こんな……?
「——イズミ」
声がした。
——刹那、ヨハンがイズミの腕を掴んでいた。
その力は40歳の平均握力を遥かに上回っていた。
「イズミ。よせ」
「先、生……」
「ひとまず落ち着け、イズミ」
ヨハンはゆっくりと落ち着き払った声でそう言い、真っ直ぐイズミの目を見据える。
「私はお前の味方だ。…………イズミ、……詳しく事情を説明してはもらえんだろうか」
「…………」
しばらく剣を握りしめたまま視線を床に落とし、黙りこくっていたイズミであったが、何事か決意したように唇を固く結ぶと、それを解いた。
「…………僕がウェルリア兵を逃げ出して研究員になったそもそもの目的は、【ウェルリア大革命の黒幕の正体】を突き止めるためです。世間一般では一方的にファーン家が悪人扱いされていましたが、実際のところ、私利私欲のために裏でファーン家を滅亡の道に導いたモノが別に存在する——以上が、呪術師レーゼの見解です」
「……どういうことだ」
驚愕の表情を浮かべて問うヨハンに、イズミは弱々しい笑みを向けた。
「所詮、近世まで伝わっている歴史というものは勝者側の都合の良いようにしか描かれてませんから——」
それを受けて、思わず言葉に詰まったヨハンであったが、それでも何か言おうと口を開き——。
「スミマセン、皆さん。沢山お騒がせ致しました。もう……大丈夫です。皆さんは、"アスカ王子救出"に尽力してください」
イズミは一方的にそう言うと、対策室を後にしようと歩を進めた——。
「待つのだっ!」
その眼前に、ユメノが仁王立ちで通せんぼの格好をとる。
「ユ……メノ、様…………?」
「どっ、……どういうことか…………、説明してもらおうかっ——なのだっ!」
「な、なにを、……ですか?」
苦笑いを浮かべるイズミに、キリも腰に手を当てて頬をふくらませる。
「そうだよイズミさん! ユメノちゃんの言うとおりっ!」
「あの……キリさんまで……」
たじろぐイズミに、キリは改めて視線を投げかける。
そして、気にしていた疑問を口にした。
- 4000突破記念企画開始〜! ( No.164 )
- 日時: 2014/03/26 01:03
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: zHs.Z2EP)
「っ…………イズミさんとウィンクさんは、いつから、その……お互いに【姉弟】だってわかってたの……? なんだか前々から知ってたような口ぶりだったけど……」
「全く……相変わらず変なところで鋭いですね、キリさんは」
イズミが透かすような表情でキリに返答する。
キリは、照れたような、恥ずかしそうな表情でイズミから一度視線を外すと、再度口を開いた。
「——ほら、前にイズミさんと私で野宿したことがあったでしょ? その時に私、確かイズミさんに『お姉さんに会いたくないの?』って聞いたの。そしたらイズミさん、『案外僕たちの近くにいたりしてね』って、こう言ったの。覚えてる? それってお姉さんの居場所を知っていないと出てこないセリフだよね。それってつまり——あの時、もうすでにイズミさんは、【ウィンクさんが自分のお姉さんだ】ってこと、知ってたってことだよね」
まるで名探偵のような口ぶりでイズミに自身の考えを呈す。
キリは、そうしてからイズミとウィンクをそれぞれ一瞥した。
イズミはそれを受けて小さく微笑むと、これまた小さく頷いた。
「そうですね。…………こんなところでなんですが、……お話しましょうか」
イズミの言葉に、ウィンクが静かに頷く。
「僕と姉さんが数十年ぶりに再会した、【あの日】のことを」
キリとユメノは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
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